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クレアとお母様とお茶会をした翌日の放課後、私は中庭でアドレアン様を探していた。今日は生徒会の仕事ではない。完全な私用だ。昨日までに書き溜めた手紙を渡したくて、アドレアン様を探していた。
中庭の奥に燃えるような赤い色を見つけて走り寄った。
「アドレアン様!」
駆け寄ってくる私の姿見とめたアドレアン様は、またかといった風情で体を起こした。
「今日は何の用だ?生徒会は今日じゃなかっただろ?」
「アドレアン様に手紙を書いてきました!」
「・・・またか。」
勢いよく手紙の束を差し出す。
「ほら。」
アドレアン様は私の手から手紙の束を受け取りつつ、懐から何かを出して手渡してきた。
「いつもありがとうございます。」
にっこり笑ってそう言ったのだが、アドレアン様はなぜだか呆れたような表情を見せた。そんなアドレアン様の様子はいつものことなので、私は無視してアドレアン様から手渡された手紙を見た。
今日も律儀に手紙を書いてきてくれたらしい。
「この手紙、いつも持ち歩いてるんですか?」
「お前がいつ来るかわからないだろ。」
ぶっきらぼうに言われて思わず笑みがこぼれた。
「ありがとうございます。」
私はもう一度改めてお礼を言った。アドレアン様が大好きだ。心の底からそう思った。
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家に帰ってアドレアン様からの手紙を開く。そこには相変わらずそっけないが流麗な文字でアドレアン様の日常がつらつらと書き連ねられていた。これを読んでいるだけでアドレアン様がどんな日常生活をおくっているのかがわかる。アドレアン様も私に合わせてか毎日のように手紙を書いてくれていて、離れていてもアドレアン様がそばにいるように感じられた。
私は幸せな気分のままレターセットを手に取った。まずはアドレアン様に手紙のお礼を書く。そこから今日の出来事を綴り始める。アドレアン様に手紙を書いていると時間があっという間に経ってしまう。
手紙を書き終えるのとほぼ同時に夕食の声がかかった。
「ところでルーチェ。学校の方はどうだい?慣れてきたかな?」
食事の席でお父様が聞いてきた。
「はい。お友達もできましたし、毎日楽しく過ごしていますわ。」
「そうか。ルーチェは楽しく過ごしているんだね。僕は寂しいよ。」
お兄様が急に悲壮な声を出す。
「どうしたんですの、お兄様?お声が悲しそうですわ。」
「だってルーチェはいつまでたっても僕と昼食を一緒にしてくれないじゃないか。
お友達だって昨日屋敷に来ていたはずなのに僕には紹介してくれなかったし。
僕は呼ばれるのを今か今かと待っていたんだよ?」
「それは・・・ごめんなさい。昨日は盛り上がってしまってお兄様に紹介するタイミングを逃してしまって。」
「そうなのよ、クリストフ。私が一緒になって盛り上がってしまったの。ルーチェちゃんを責めないであげて。」
「お母様・・・。わかりました。昨日のことは諦めます。
それで?ルーチェはいつになったら僕たちと一緒に昼食をとってくれるのかな?」
「それは・・・。今まではタイミングが悪くて。機会があればぜひ。」
「本当だね?楽しみに待っているからね。」
夕食の席でお兄様とそんな話をした後、お父様から手紙を渡された。レイナルド殿下からの手紙だ。なんだかいつもと厚みが違う。
首をかしげながらも、部屋に戻って手紙を開く。
レイナルド殿下からの手紙には今まではお互いの趣味の話などが書かれていたが、今回は珍しく学園のことが書いてあった。私はひそかにレイナルド殿下は学園生活が嫌いなのかと思っていたから、正直意外だった。
学園でのレイナルド殿下の生活が事細かに書かれている。学園の授業から食堂での好きなメニューに至るまで。今まで学園の話を一切しなかった人とは思えないほどだ。
普段よりだいぶ分厚いその手紙には生徒会の活動のことも書かれていた。去年一昨年の生徒会活動の内容から、今年の予定。生徒会活動で一緒に過ごせて嬉しいということ。そして・・・。
『生徒会ではアドレアンの補佐を引き受けてくれてありがとう。助かるよ。
でもいつも君に探してもらえて、君と多くの時間を一緒に過ごせるアドレアンには少なからず嫉妬してしまうな。
笑わないでくれ。
もし私がアドレアンのようにサボってばかりいたのなら、君は私を探しに来てくれただろうか。
そんなことばかり考えてしまうよ。』
最後に落とされた爆弾に私はつい赤面してしまった。最近のレイナルド殿下はいつもそうだ。ドキドキさせるような思わせぶりなことばかり言ってくる。心臓の鼓動がはやい。
手紙でさえこんなにドキドキさせられるのだ。2人きりで会ったりして大丈夫だろうか?
もう学園に上がるような年齢になったし、完全に2人きりということはないだろうが、たとえ使用人が部屋に控えていようと彼らは会話が聞こえないような部屋の隅にいる。それじゃあほとんど2人きりと変わらない。そんな状況で私の心臓はもつだろうか。
今週末に控えるレイナルド殿下とのお茶会を思って気が遠くなった。




