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レイナルド殿下からの手紙を受け取って数日。レイナルド殿下とのお茶会の日がやってきた。ちなみにレイナルド殿下からの手紙の返事はまだ書いていない。読んでいくと恥ずかしくなってしまって、何を書いたらいいのかわからないのだ。アドレアン様にあてた手紙ではそんなことはないのだが、ここ最近のレイナルド殿下からの手紙は返事に困ってしまうような甘い言葉が書かれていることがちょくちょくあって、私のひそかな悩みの種になっていたりする。
今日はそんなレイナルド殿下とのお茶会だ。昨日から緊張してしまってあまりよく眠れなかった。レイナルド殿下のことを考えたりすると、もやもやと同時に恥ずかしくなったりドキドキしたり、自分の気持ちがよくわからない。それに加えてレイナルド殿下からのあの手紙だ。お茶会で直接会うなんて考えてしまったら眠れるわけもない。今もずっと、どこかそわそわとしている。
私の緊張を知ってか知らずかレイナルド殿をお茶会に迎える準備は着々と進められている。侍女たちは朝からどこか上の空の私をお風呂に入れ、ほんのり薔薇の香りのする香油を全身に塗り込み、というか揉みこみ仕上げていく。見たことの無いローズピンクのワンピースを着せられ、レイナルド殿下から贈られた首飾りや耳飾りで飾り付けられる。おしろいを薄く塗った頬には紅をはたき、唇にほんのり朱をのせ、細く繊細に編み込んだ髪にはこれまたレイナルド殿下から贈られた髪飾りをつけられた。編み上げ方がうまいのか、ワンピースの色とのコントラストのせいなのか、髪飾りが私の銀の髪によく映える。
私は自分の着ているワンピースを見下ろしてみる。ベースの色は濃い目のローズピンクだが、袖口と裾は濃い青のグラデーションになっている。白い襟には金色のレースがついている。上品だが甘すぎないデザインに私はほうっと息を漏らした。
「お嬢様、よくお似合いですよ。」
侍女の一人が言ってくれる。
「ありがとう。このワンピースは初めて見るものだけれど、またお母様かお兄様が用意してくれたのかしら?」
「いえ、ご存じありませんでしたが?このワンピースはレイナルド殿下からお嬢様へと贈られたものですよ。」
「え!?」
「2週間前に届いたもので、ぜひ今回のお茶会にということでしたので、ご用意させていただきました。」
「嘘。聞いてないわ。」
「旦那様も奥様も届いたときに確認なさっていたので、お嬢様には伝え忘れてしまったのかもしれませんね。」
呆然とする私を置いて、では失礼しますと侍女たちはさがっていく。まさかレイナルド殿下からワンピースを贈られていたなんて。それも前回に続いて2度目だ。
レイナルド殿下からの贈り物だと思うと、そのワンピースを着ていることすら恥ずかしくなってくる。でも脱ぐわけにもいかないし。私が百面相しながら葛藤していると、いつの間に時間が経っていたのか使用人が呼びに来る。レイナルド殿下が到着したのだ。
今日は陽気もいいのでサンルームにお茶を用意してもらった。正面に座るレイナルド殿下を無駄に意識してしまう。今になって2人きりを意識してしまう室内ではなく庭にしてもらえばよかったと気づくが、後の祭りだ。
お茶を飲むふりをしながら、目の前に座るレイナルド殿下を観察する。手元を見る表情はどこか人を惹きつけるものがある。長い睫毛が顔に影を作っているのが妙になまめかしいし、完璧にととのった口元で紅茶を飲む姿は無駄にセクシーだ。金色の髪は日の光を浴びて輝き、それがさらにレイナルド殿下を神秘的に見せる。ティーカップを持つ指先まで優雅だった。
私はなぜか敗北感に襲われた。勝ち目がない気がする。レイナルド殿下を相手に何に勝とうとしているのかはわからないが。
「今日のワンピースも似合っているね。妖精でも逃げ出してしまうんじゃないかな?」
「ふふ。それじゃあまるでお兄様みたいですわ。
ありがとうございます。レイナルド殿下のおかげです。レイナルド殿下の贈り物はいつもセンスが良くて感動しますわ。」
「そういってもらえてよかったよ。これでもいつも選ぶときは悩むんだ。どれなら君に喜んでもらえるかってね。
だから君が喜んでくれるのを見るのが何よりの幸せだよ。」
レイナルド殿下はまた思わせぶりなことを言う。そんなことばかり言われていたら、そのうち完全に勘違いしてしまう。私は頬を赤らめながらレイナルド殿下を見た。レイナルド殿下は甘くとろけるような視線で優しい笑みを浮かべながら私を見ている。
私は陥落しそうになって話を逸らすことにした。
「そういえば、レイナルド殿下は学園がお好きでないものだと思っていました。」
「ん?どうしてかな。」
「レイナルド殿下が送ってくださったお手紙にはこれまで学園のことが一言も書かれていませんでしたもの。2年間一度たりともありませんでしたわ。
だから学園がお好きじゃないのではないかと。」
「たしかに、去年までは好きじゃなかったよ。でも今年からは好きになったんだ。今ではすっかり学園が大好きだよ。特に生徒会の会合なんかは毎日あってほしいくらいだ。」
「・・・?
生徒会長になれたことがよかったんですか?」
「ふふっ。そうじゃないよ。
でもそうだな、生徒会長になったからこそ君に頼りになる姿が見せられそうで、それに関しては素直に嬉しいかな。君に憧れてもらえるようにこれから頑張るよ。」
まぶしく笑うレイナルド殿下に負けそうになる自分を奮い立たせつつ、私ははぐらかすように話を変える。
「今回のお手紙でレイナルド殿下の学園生活がわかってきた気がします。
学園から帰っても公務があるんですよね。それなのに婚約者候補との交流は大変じゃないですか?」
私が言うとレイナルド殿下は表情を消した。
「君は僕との交流をやめたい?」




