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 レベッカに呼ばれてサンルームに入る。そこにはすでにクレアが待っていた。


「来てくれてありがとう、クレア。」


「こちらこそ、お招きいただきありがとう。」


「紹介するわね。今度から私たちの魔法の練習を見てくれるレベッカよ。」


「まぁ、こちらが。クレアです。よろしくお願いします」


 クレアが席を立って礼をする。


「ご紹介にあずかりましたレベッカです。こちらこそよろしくお願いいたします。」


 レベッカは深々とお辞儀をしてから退室していった。


「優しそうな人でよかったわ。厳しそうな人だったらッてちょっと心配していたの。」


「ふふ。大丈夫よ。後で料理長のオリバーにも紹介するわね。」


「お願いしまーす。」


 クレアが元気に言ったところで私達は席についた。テーブルの上には既に別の侍女が用意してくれていたティーセットが並んでいる。お母様もすぐに来るはずだ。


「お母様もクレアに会えるのを本当に楽しみにしていたから、今日あなたが来てくれてとても嬉しいわ。お母様もすぐに来ると思うから少しだけ待って頂戴ね。」


「私も宰相夫人にお会いできるのは楽しみだったの。今日もちゃんとおすすめ小説を持参してきたのよ?同じ趣味の仲間に会えるなんて滅多にあることじゃないから、語り倒さなくちゃ!」



 クレアのささやかな決意に笑い合っているとお母様がやってきた。





 お母様とクレアは娘の私がびっくりするほど意気投合した。今もお互い小説を片手に推しポイントを語り合っている。実に微笑ましい光景だ。私はクレアと昼休みの度に小説について語り合っているが、お母様は普段語り合う相手もいないのか妙に白熱していた。

 2人が盛り上がってる隙に私は好物のロストビーフとマッシュポテトのサンドウィッチを味わう。オリバーがこの屋敷に来てくれて一番うれしかったのは、このサンドウィッチがいつでも食べられるようになったことかもしれない。

 かじったサンドウィッチを紅茶で流し込む。クレアとお母様の会話が少し落ち着いてきたみたいだ。


「おばさまにもぜひ母に会っていただきたいです!」


「まあ、辺境伯夫人に?」


「はい。母もこういう小説が大好きで。

 でも辺境には小説もあまり入って来ないし、来るにしても発売からすごく時間がかかるし。

 だから私、今回学園に入るために王都に出てきて感動したんです。いっぱい種類があるし、発売日に手に入るんですから!」


「クレアちゃんは本当に大衆恋愛小説が好きなのね。わかるわ。

 私も以前は一般の貴族向けの恋愛小説を読んでいたの。でもあれってなんというか、ほらおとなしすぎるじゃない?貴族同士の恋愛としてはそれが正しいのだろうけれど、やっぱり物足りなかったのよね。

 結婚して家を出て、初めて自分で小説を選ぶようになって大衆恋愛小説に出会った時の私は、今のクレアちゃんと同じような感じだったわ。」


「そうだったんですね!わかりあえる相手に出会えて幸せです!」



 落ち着いたと思ったのは間違いだった。今度は2人抱き合って泣きだしている。私はおとなしくこっちでお菓子でも食べていよう。そう決めた。





 今日のお茶会は大成功だった。クレアとお母様はお互いのおすすめ小説を貸し合っていたくらいだ。2人の大号泣のお茶会の後、侍女を呼んで化粧を直してもらって、クレアを料理長のオリバーに紹介した。まずは簡単なサンドウィッチあたりから作り始めることになった。

 クレアを夕食に誘ったが、寮の門限があるという事でお父様やお兄様に紹介するのはまた改めてということになった。そういえばお兄様にクレアを紹介する約束をしていたのに紹介できてないな。これからしばらくクレアもうちの屋敷に通うことになるのだし、そのうち会えるか。お兄様には作った料理の味見もお願いしたいし。

 私は何でもかんでもアドレアン様にあげちゃえばいいと思っていたが、それを言ったらクレアとお母様からこっぴどく怒られた。せっかくの差し入れなんだからここぞというタイミングで会心の出来のものを渡すべきだそうだ。クレアがお母様に差し入れ計画をばらしてしまった時は肝を冷やしたが、お母様も案外ノリノリだった。それどころか、うまくいったときはアドレアン様と婚約できるよう取り計らうなんて変な約束までされてしまった。そんなつもりではなかったんだけれど、うまくいくってやっぱりそういうことなんだろうか。



 考えながら、再び日課へと戻っているアドレアン様宛の手紙を書き始める。


『今日は友達のクレアが家に遊びに来てお母様と3人でお茶会をしました。私達3人は同好の士というやつで趣味が同じなのですごく盛り上がりました。お母様とクレアなんて盛り上がりすぎて抱き合って泣いてたくらいです。だからお化粧がどろどろに崩れちゃって、お茶会の後侍女に直してもらうことになってました。

 私は違いますよ?私は2人が盛り上がってる間、1人でお茶を楽しんでましたから。

 今のタウンハウスの料理長はこの間まで領地にいた人なんです。それで私のお気に入りのサンドウィッチを作ってくれるんです。ローストビーフとマッシュポテトが入っていて。特別なんです。他の料理人に再現してもらったこともあるんですが、あのマッシュポテトの味が違うんですよね。だからこっちに来てくれてすごく嬉しいんです。

 アドレアン様は何か好きな食べ物ってありますか?』



 私はさりげなく、お母様から与えられたミッションを遂行した。差し入れる相手の好物を知る!好物を差し入れないにしても、味の好みの傾向を知ることができる。そこから徐々に攻めていこうという作戦だ。

 アドレアン様の好きな食べ物なんて考えたこともなかった。こうやって知っていけばアドレアン様のことを好きになってしまう日も訪れたりするのだろうか。考えると胸がくすぐったい気分だった。





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