第99話 幻影剣
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「そうですか。そんなことが・・・」
「うむ。そうなのじゃ」
「で、清十郎は結局彼女をどうしたんだい?」
「特に変わったことなどないぞ?手合わせをして終わりじゃ」
ウェインの言葉に清十郎はイリアの顔を見ながら心和やかに答える
現在、清十郎は夕食後に屋敷のリビングでイリアに膝枕をしてもらいながら今日あった出来事を話している。清十郎は自分の頭を優しくなでるイリアの顔をみながら目を細める
「まあ、あやつも心に迷いがあった故、それを断ち切ってやっただけじゃな」
「ふむ。それはさっきの幻影剣とかいうものかい?」
「うむ。もとの剣技は邪を払うものとして伝わっておったのをある時知ってな。それを儂なりに技に落とし込んだのが幻影剣とでもいうべき技じゃな」
清十郎は簡単そうに言うが技を編み出すこと自体相当難しいことは剣を扱っていたウェインはよくわかる
「うーん・・・そんなに凄い技なら見てみたかったね」
紅茶を口にしながらウェインは目を楽し気に細める
「そう、見栄えのある技ではない故、見ても楽しくないぞ?」
「でも、興味はそそられるね」
「ふむ。そのうち見れる機会もあるであろう」
ウェインに清十郎は答えるとイリアの手を優しく取り立ち上がる
「イリア殿、大変楽になった。いつも済まぬな」
「いいえ。私が好きでやっていることです。気になさらないでください」
イリアに清十郎は優しく笑いかけるとイリアの顔を優しくなでる
イリアも清十郎の顔を見つめ自分の顔を優しくなでる手に気持ち良さそうに目を細める
「こほん・・・清十郎にイリアこの間のように僕の目の前でキスするのだけはやめてくれるかな?」
「ウェ、ウェイン・・・」
「お兄様ったら・・・」
目を閉じ自らも恥ずかしそうにするウェインに清十郎とイリアは互いに目を合わせ笑いあう
ちなみにいつもはここで突っ込むはずのミーニャは現在カフェの開店準備に追われ実家からカフェに直接行き来をしているため屋敷にはいない
「さて、儂は少し疲れた故、眠るとしようかのう」
「うん。お疲れ様、ゆっくり休んでよ」
「清十郎様おやすみなさい」
「うむ。おやすみ」
イリアとウェインに挨拶をし清十郎は部屋を後にした
翌朝、いつもの鍛錬に向かうとビットとゴルドが庭を走っていた
二人は清十郎を見つけると元気よく挨拶をする
「師匠!おはよう!」
「おう!師匠おはよう!」
「うむ。二人ともおはよう」
挨拶をしたところでふと見慣れぬ人物がいることに清十郎は眉根を寄せる
「そなたらは・・・」
「清十郎様おはようございます」
「清十郎殿おはようございます」
庭に設置されたテーブルを挟むようにイリアとニルティーナが椅子に座りその後ろにライラが立っている
「あ、ああ、おはよう・・・」
戸惑う清十郎にイリアが声をかける
「清十郎様おはようございます。お二人は朝の稽古を見にいらしたのですよ」
「ふむ・・・」
「ふふ。清十郎様、ご迷惑はおかけするつもりはございませんので稽古をぜひ見させてくださいな」
「まあ、イリア殿が良いのであればそれで構わんよ」
清十郎はそう言うと自分の鍛錬に入る。いつものように体を伸ばし素振りに入るとビットとゴルドが走るのをやめ清十郎の横にならび素振りを始める
やがて素振りが終わると打ち込み稽古に入る。ビットとゴルドは徹底的に清十郎に打ち据えられ庭に大の字に転がったところで稽古が終わる
「姫君にとっては見ていてそんなに面白いものでもなかったのではないか?」
清十郎の問いかけにニルティーナが頬を膨らませる
「清十郎様、この前も言いましたがニルティーナとお呼びください!」
ぷんすか怒るニルティーナに清十郎は苦笑いをしながら頭を掻いた
「そ、そうであったな。ニルティーナ殿。これでよいか?」
「殿もいりませんが・・・まあいいでしょう」
胸を張り嬉しそうにするニルティーナに清十郎はほっと胸をなでおろす
「清十郎殿」
そこに後ろで立っていたライラが声をかけてくる
「なんじゃ?」
「この間の剣、もう一度見せてはもらえないか?」
ライラの頼みに清十郎は首を振る
「また気を失うことになる。やめておくことじゃ」
「それでも・・・どうかお願いする」
頭を下げるライラにイリア、ニルティーナも目を見開いて驚く
ライラの戦乙女の評判は世間で知られているし同時に融通が利かない人物としても名前が知られている。そのライラが清十郎に頭を下げているのだ
「ふむ・・・。ならばもう一度だけじゃぞ」
清十郎はそういうと庭の真ん中にライラと向き合う
今回は清十郎は木刀だ。対してライラもゴルドの木剣を借り相対する
清十郎は心に水鏡を作り感情のすべてをそこに沈める
ライラは清十郎の雰囲気が変わりゆっくりと上段に構えるのを見る
やがて静謐な空気が張り詰めたところで清十郎の姿が突然自分の姿に変わっていく
離れているはずの自分の姿をしたものがいつのまにか目の前でゆっくりと自分に向けて剣を振り下ろしてくる。受け止めようと腕を動かそうとするが動かすことが出来ない。やがて剣が振り下ろされ自分が真っ二つに切り裂かれるのを感じライラは気を失った
「ふぅ・・・」
軽く息を吐くと目の前で気を失って倒れているライラに清十郎は近づき頬を軽くたたく
「んぅ・・・」
やがて声を上げながらライラが目を覚ます
「気が付いたか?」
「ああ・・・」
「うむ。大事なさそうじゃな」
そう言うと清十郎はイリアの方へと向かう
「あれは私自身だったのか・・・」
どこか謎が解けたライラはすっきりした気分で主の元に向う
「なあ、ビット」
「なんだ」
「俺たち師匠に追いつけるか?」
「わからん。けど俺は追いついてやるよ」
「ふん。なら俺もお前より先に追いついてやるさ!」
清十郎とライラの手合わせを見たゴルドとビットは遠い先にいる清十郎の背中にいつか追いつき追い抜かしてやろうと決意を固めるのであった
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