第100話 ミスリル製片手剣
いつも読んでいただきありがとうございます
*また剣作りのシーンが入りますが詳しい方からみればなんだそれと思われるかもしれませんがそれはそれと割り切って読んでください。日数に関しては大体これくらいかなというイメージです
朝の鍛錬の後、清十郎は工房の試運転も兼ねキヨマルに来ていた
さっそくとばかりに炉に火を入れミスリルのインゴットを放り込む
キヨマルの開店が近づく中で清十郎が打った剣をそろそろ用意する必要があったからだ
どうせならと以前イグリットの店で買った残りのミスリルのインゴットで作ってみようと思ったのだ
「これはなかなか難しいな・・・」
絶妙な火加減が必要になり鞴でうまく調節する
もう少しと声が微かに聞こえるままに鞴を操り急激に温度を上げずじっくりと上げていく
不思議な金属だと思う。なぜ溶かす段階から火加減が必要なのか。考えても答えはでないがとりあえず聞こえる声のままに体を動かしていく。やがてもういいと声が聞こえたところで炉の出口を槌で叩き鋳型に流し込む
「さて問題はここからじゃな」
鋳型が冷えたところで壊し中からミスリルで作った一本の片手剣の原型を取り出した
今回は造込みを行わずそのまま叩く予定だ
火床に火を入れ火箸でミスリルの原型を掴んだ瞬間これではだめだと伝わってくる
「どういうことじゃ?」
以前、魔力を吸われたことを思い出し魔力を抑えて掴んでみるがそれでもだめだと伝わってくる
「むむむ・・・」
清十郎は悩む。だがミスリルの剣もあるとイグリットから以前聞いている
ならばできるはずと魔力を込めてもダメ、抑えてもダメ。どういうことかと首を傾げしばし思考にふける。もしやと思いいつもは絞っている魔力を開放しミスリルを見てみるとミスリルがまるで呼吸をするように周りの魔素を吸っては吐いているのが見えた
「・・・まるで生き物じゃな」
清十郎はミスリルを魔力で覆い魔素を吸い込まないようにしてからポーラの時のように魔力を吸い取るように操るとミスリルが蓄えていた魔力が自らの体に流れ込むのを感じる。不思議と流れ込んだ魔力はすぐ体に馴染みポーラの時のような異物感があるような感じはしない
「どういうことじゃ?」
魔力の反発を予想し身構えていた清十郎は首をかしげる。まあ、反発がないならいいかとその問題は後で考えることにした清十郎はミスリルに集中する
やがてミスリルから魔力がなくなるのを感じると出来ると伝わってくる。そのまま聞こえる声に従い槌を振るう。火床に入れては叩くを繰り返し最後に焼き入れを行う
それを今度は研ぎ石を使い丹念に研ぎ上げるとやがて清十郎の顔が映る鏡面のような銀色に輝きを放つ片手剣が姿を現した
「ふむ。これは美しいな・・・」
今回は試作品ともあって樋は入れていない
だが鏡面のような美しさを放つ刀身に線を入れるのをためらったというのもある
最後に茎に目釘穴を開け銘を彫る。その後、柄を作り上げると茎にあけた目釘穴に削り上げたミスリルの目釘で柄を固定しミスリルの片手剣が完成する
「ふむ。なかなかの出来栄えじゃな」
剣をかざしあらゆる覚悟から見て清十郎は満足する
と、その時、工房の扉が開き一人の女性が入ってくる
「清十郎様、出来上がりましたか?」
「おお。イリア殿、見てくだされ」
イリアにミスリルの片手剣を見せる
「ふふ。ほんと清十郎様は鍛冶のことになると楽しそうになされますね」
優しく微笑んだ後、イリアは目をすっと細める。清十郎はその瞬間背筋に寒気が走る
「でも、適度に休憩は取ってください。あれから3日は経っておりますよ。声をおかけしてもひたすら鍛冶に集中して少しも気づいてくださらないので困りましたわ」
頬を膨らませて拗ねるように怒るイリアに清十郎は頭を下げる
「それは済まなかった。鍛冶となるとつい夢中になってしまってな」
イリアはふぅとため息を吐くと優しく清十郎を見る
「仕方のないお人ですね。くれぐれもお体は大切にしてくださいね」
「うむ。気を付けるとしよう。ところで3日と申されたか?」
「ええ。3日です。学校の方へはミーニャに連絡に行かせましたので安心なさってください」
「なんと・・・」
よもや3日も経っているとは思わず清十郎は言葉をなくす
実際の体感時間で1日ぐらいのものだと感じていたからだ
「ううむ。ミスリルは存外手間がかかるものであるな・・・」
「さあ、清十郎様、せっかく浴室もありますので汗を流されてはどうですか?」
「うむ。そうするかのう」
と、その時イリアの背後から見慣れた栗毛の少女が顔をのぞかせる
「ふふふ。イリア様と一緒に入られますか?」
「「なっ!」」
思わず固まる二人。二人が口づけを交わしてからというものからかいがいがなくなってきたミーニャの発言は日に日に大胆になっている
「ご、ご一緒しますか?」
「い、いや・・・」
イリアが下を向きながらもじもじとしながら上目遣いで清十郎を見る
思わずその愛らしさに心が揺れ動かされ清十郎が頷きかけた
「ちょーっと!まったぁ!だめですよ!自分で言っておいてなんですが結婚前の子作り禁止ですからね!」
さすがに焦ったのかミーニャが止めに入りその声に清十郎ははっと正気に戻る
「・・・お主、日に日に言うことが大胆になるな。それに誰が子作りと言うたお主の頭は破廉恥でいっぱいか!」
「えっ!いや、あの・・・」
珍しく動揺し言葉に詰まるミーニャにイリアが優しく微笑みながらとどめを刺す
「ふふふ。ミーニャもはやく伴侶となる方を見つけないといけませんね」
「げふ!」
まさに倍返し。その場にミーニャは頽れるのだった
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