第101話 キヨマルオープン
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ついにカフェ&武器工房キヨマルがオープンした
朝から並んで待っていた人たちが一斉に店内になだれ込んだ
「いらっしゃいませー」
カラランとベルの音がなり一人、また一人と店に入ってくる
武器工房とは思えない明るく広い店内に客が驚きを持って席に座る
「ご注文はどうしますか?」
そこにホワイトブリムをかぶりフリルをあしらった黒のロングドレスにエプロン姿の女性店員が声をかける
「あ、ああ。紅茶と日替わりのケーキを頼めるか?」
「はい。紅茶と日替わりケーキですね。承りました」
注文を受けた女性店員は丁寧にお辞儀をするとカウンターに注文を伝えに行く
「おまたせしました」
しばらくすると目の前のテーブルの上に紅茶とケーキがそっと置かれ女性店員は丁寧にお辞儀をして立ち去っていった
店にいる女性従業員は全員衣装が統一され座って紅茶を飲んでいるとまるで自分が貴族にでもなったかのような気分になってくる
やがて客は優雅に紅茶と菓子を楽しむと席を立つ
そして帰りしなガラスケースに飾られた一本のミスリルの剣が目に留まりついつい足を止めて見入ってしまう。他の客も同じようでガラスケースの前では何人かの帰りの客がミスリルの剣の前で足が止まっていた
しばらく見入ったところで店員に声を掛けられ足早に店をあとにしようとしたときに小物が飾られたガラスケースが目に留まり飾られた商品の手ごろな価格に思わず手に取りミスリルの剣は無理でもこれならと財布の紐が緩くなる
「ありがとうございましたー!」
店員の元気な声をともに客は上機嫌で小物を手に店を去っていった
「ううむ・・・」
そんな光景を見てひとり奥から見つめ唸る清十郎にイリアが首をかしげる
「どうかしましたか?」
「いや・・・工房なのにカフェの客のみと思うてな」
「ふふ。それはそうですよ。清十郎様の剣はお値段がお値段ですから」
「そういうものかのう」
「そういうものですよ」
おかしそうに笑うイリアに清十郎は嘆息する
「ところでこれだけの店員をよく集めれたものじゃな」
「ええ。ミーニャが知り合いの子に声をかけて連れてきてくれたんです」
「そうか。それはミーニャ殿に感謝せねばならんな」
カフェで指揮を執る栗毛の少女に目を向け清十郎は優しく笑う
「ところであの娘らは教育が行き届いていて作法に疎い儂でも屋敷にいる侍女と変わらぬように思えるが・・・」
「それに関しては私が直接指導いたしました」
「ほう。イリア殿が直接とな?」
「はい。言葉遣いから紅茶の淹れ方まで貴族の屋敷で働いても問題ない水準まで仕上げました」
清十郎はその話を聞いてあのスパルタの日々を思い出し思わず身を震わせる
「そ、そうか。それは大変であったな」
「ええ。なにぶんなにも知れない子たちでしたので」
そう言うとイリアは優しく微笑む。その優しい微笑みの裏に壮絶な厳しさがあるのを清十郎は知っている
「さ、さて、カフェの方は問題なさそうだし儂はいつも通り学院の方へ出向くとするかのう」
「ええ。こちらは任せて清十郎様はお務めを果たしてくださいませ」
「イリア殿、よろしく頼む」
そう言い残し裏口から出ようと清十郎がイリアに背を向けた時そっとイリアがその背中に身を寄せる
「イ、イリア殿?」
「ふふ。清十郎様、このまま幸せな日々が続くといいですね」
「・・・うむ。そうじゃな」
清十郎は突然振り向きイリアを抱きとめると正面からイリアの顔を見つめる。潤んだイリアの瞳と目があう。しばらく見つめると清十郎は優しく微笑む
「清十郎様・・・」
イリアの顔を清十郎はそっとなでる
「儂がこうして幸せな日々を送ることができておるのはそなたのおかげじゃ」
「私も幸せな日々が送れているのは貴方のおかげですわ」
次第に二人の距離が近づきやがて互いの唇が重なる
イリアと清十郎が二人っきりと思い口づけを交わした時、店の方からはミーニャが恨めしそうに音をたてずにその光景を見つめていた
「店長あの二人っていつもあんな感じなんですか?」
ミーニャの後ろから顔をだした店員の一人がミーニャに声をかける
「ええ・・・よく覚えておきなさい。この店にいる限りはあの甘ったるい光景を毎日のように見せられるわよ」
「うげ。毎日ですか?」
「ええ。毎日よ・・・」
半ばあきらめたように言い放つミーニャにこれはある意味きつい職場にきてしまったかと後悔しはじめる店員であった
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