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第98話 ライラの葛藤

いつも読んでいただきありがとうございます

 前世でも剣で語り合うということは常にしてきた清十郎はライラの言葉に頷いた


「よかろう」


 その言葉にライラはうなずくと刃をつぶした剣を清十郎に投げ渡す

 清十郎は受け取った剣を数回振り感触を確かめると剣を構える

 本来、刀が良いがこの場合仕方がないかとあきらめた


「いくぞ!」


 清十郎が構え終わったところでライラが下段からの切り上げで仕掛けてくるとそれを正眼の構えから迎え撃つ。一合二合と斬り結ぶことでだんだんとライラの心が見えてくる


 なぜニルティーナの思いに答えてやらないのか


 イリアを見ずにニルティーナを見ろ!


 王の為に国の為にニルティーナの物になれ!


 なぜ私はこんなに無力なのか!


 なぜだなぜだなぜだ!


 一合一合にライラの思いが乗る剣が叩きつけられる

 すべてを受け流しすべての思いを受け止める

 主を思う気持ち、国を思う気持ち、自分の無力さを嘆く気持ちが入り混じった感情となり十分に伝わってくる


 一通り斬り結んだところで清十郎は距離を取ると上段に構え心に水の水鏡を作りすべての感情をそこに沈める


 静寂があたりに響く中、ゆっくりと清十郎が剣を振り下ろすとその瞬間、距離をおいて構えていたはずのライラがゆっくりと倒れる


「ライラ殿の思いしかと受け止めた。だが儂には儂の思いがある誰にも曲げらるわけにはいかんのじゃ」


 ライラを一瞥すると清十郎はそこにいると思われる人物たちに声をかける


「ロレンス殿、フェンス殿いるのであろう?」


「わかっていたか・・・」


「さすがですな」


 観客席の一番上段から厳めしい男と黒いローブに陰気な雰囲気を纏う男が現れると二人は観客席から降り清十郎の元にやってくる


「盗み見とはいい趣味ではないぞ」


「いや、これは校長に頼まれたこと。盗み見と言われればそれまでだがお前の剣をみてみたかったのが本音だな」


「ふむ。私も同意見ですな。ですが最後の剣はなんですか?私にもみえるほどゆっくり振り下ろされていましたね。それに離れた彼女が倒れた理由がわかりません」


 フェンスの言葉にロレンスもうなずく


「ふむ。あれは邪を払うことを目的とした剣技から派生しておる技じゃ幻影剣とでもいうのかのう」


「ほう・・・」


 ロレンスが興味が惹かれたようだが清十郎は厳しくロレンスを見る


「ロレンス殿、盗み見した罰じゃ。そなた、こやつの介抱を頼むぞ」


「フェンス殿も回復させることができよう?あとを頼む」


 そう言うと清十郎は練兵場を後にした


 残されたロレンスとフェンスは互いに顔を見合わせると苦笑いする


「怒られちまったな」


「あなたのせいですよ。私はたしかに立ち会うと言ったはずですが」


「まあ、そういうなって。ライラ卿からは二人でっていう願いだったからな。盗みしか方法がなかったから仕方がないだろう?」


「ふむ。たしかに」


「しかし、変わった剣だったな。あんなの見たことないぞ」


「ええ。まるで見えない糸を断ち切ったようにライラ殿が倒れましたからな」


「とりあえず、言われたことをやるとするか。フェンス殿まずは回復を頼む」


「そうですな。やることをやりましょう」


 それにしてもとフェンスは立ち去った清十郎の後を見るように出入口を見る


(私が回復魔法が使えることを知っている?どういうことだ?)


 フェンスは他の誰にも回復魔法が使えることを教えていない。いつもは魔素を抑え他人から光属性が使えないことを隠している。それなのに清十郎はそれを見破った。その点についてフェンスは思考に没頭する


「おいっ!」


「・・・!これは失礼をした思わず考え事をしてしまった」


「はぁ。いつもフェンス殿はそうだな。らしいといえばらしいが」


 苦笑いするロレンスを他所にさっそくとばかりにフェンスは回復魔法を使う。いずれ清十郎と魔法について是非話をしてみたいと思いながら



 その後、学院の医務室で目を覚ましたライラは見慣れない天井を見て自分があの後、気を失ったことに気づいた


「気づかれましたか?」


 貫禄のある声の方に顔を向けるとそこには生きた年を思わせる皺が目立つがしっかりとした姿勢で手を前で組んで立つキャスティがいた


「キャスティ校長・・・」


「満足なされましたか?」


 キャスティの一言にライラの瞳からは涙が零れ落ちる。それはあふれては落ちベッドのシーツに染みを作る


「そうですか・・・。あなたの心の呪縛をあの方は解き放ってくれましたか」


「え?」


「ライラ殿、気づいていませんでしたか?あなたはいつの間にか人の願いを叶えるためだけの操り人形のようになっていたのですよ」


 思わずといった言葉にライラははっとなる


「使命感も過ぎれば呪縛となる。そういうことです。あなたは知らず知らずのうちに自らを縛っていたのかもしれませんね」


 キャスティの一言一言が心に突き刺さる。今までならそんなものと一笑に付したものだがなぜか今は素直に聞く気になる。まるで心の鎖を解き放ったかのようだ


「・・・この気持ちはなんでしょうか」


 キャスティはライラの一言にうなずく


「人の言葉を聞けるようになればそれだけあなたが成長したということ。それにあなたは誰のものでもないあなたはあなたなのですよ今まで誰から何を言われていたのか知りません。ですが今、素直に思えることは一番あなたが叶えたいもののはずです」


 ライラは自分の手のひらの皮が厚くなった両手を見る

 それを見てキャスティが言葉を続ける


「今のあなたに見えるものはなんですか?」


「私の友人を・・・ニルティーナの助けになること・・・」


「ふむ。それは国に仕える者としてですか?」


「いいえ。私は私の意思でニルティーナを助けたい」


「いいですね。貴方は貴方としてきちんと考えることができる。背負ってきた重荷はすべて捨てきったようですね」


「キャスティ校長・・・」


「もう、貴方なら迷うことはないでしょう。ライラ=スワーレこれからも殿下をしっかりお助けなさい。今度は部下としてではなく一人の友人として」


「はい・・・」


 ライラは今までと違う見える景色に思いを新たにしたのであった


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