第97話 二ルティーナの思い
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職人が丹精込めて作った調度品が数々置かれた豪華に設えた領主の館の一室で若草色の髪の女性二ルティーナは窓際に立ちアボルグの街を見ながらため息を吐く
「殿下、お風邪を引いてしまいます。もうお休みになってくださいませ」
オレンジ色の髪をポニーテイルにした女性ライラに促されるも二ルティーナは答えずじっと窓の外を眺めたままだ。今は側付きの侍女は部屋の外に下がらせており部屋には二人だけしかいない
「・・・私、振られてしまいましたね」
「殿下・・・」
ライラはポツリとこぼす二ルティーナを見ながらかける声が見つからない
「叔父様やお父様にはどんな手を使ってでも王都に連れてこいと言われましたが私はそんなの嫌です」
「では、どうするのですか?」
「アボルグに滞在して時間をかけて清十郎様にお心を砕いていただきます」
「あの男はイリア嬢を愛しており入り込む隙間などない様に見えましたが」
「いいえ。清十郎様は情に厚い方と見受けました。きっと私をしっかりと見ていただければ縁を結べるはず・・・」
二ルティーナはそっと唇を触る。勢いとは言え初めての口づけをささげた清十郎を思うと心が温かくなる
「王女として今まで国の為にと考えて行動してきましたがここからは私一個人として行動したいと思います」
「殿下!」
「ライラ、貴方は私の味方ですか?それとも叔父様やお父様の味方ですか?」
二ルティーナのまっすぐ見る目にライラは困惑する
「わ、わたしは・・・」
「ごめんなさい。いじわるな言い方をしましたね。良いのです。貴方も私の親衛隊の隊を率いるものとして私の元にいますがあなたお父上のスワーレ侯爵は国に仕える者。ここで私の味方をしてしまってはあなたのお父上の立場が悪くなるわね・・・」
「殿下」
静かにライラは二ルティーナの側に歩み寄ると片膝を付き、左腕をそっと胸に添える
「父上は父上です。私は殿下に忠誠を誓っております。どうぞご安心ください。先ほどは突然の質問に戸惑いご不安にさせて申し訳ありません。もう二度と迷うことはありません。改めてこの命、殿下にお捧げ致します」
「ライラ・・・」
二ルティーナはそっとライラを抱きしめる
「殿下!?」
「私は清十郎様に嫌われるのが怖いのです」
耳元で語る二ルティーナの声音はいつもの覇気がなくか細く弱々しい
「社交会にでれば偽りの仮面をいつも身に着け愛想笑いで過ごしこのままただ国の為に嫁ぐ身かと思っていましたが本当の恋心を抱いてしまったのです。王女としていけないことだと思います。それでも私はこの心に正直になりたいと思うのです。だからライラ、どうか私を助けてください」
「殿下・・・いえ、二ルティーナ様。私、不詳ではありますが貴方をお助けしたいと思います」
ライラはいつもの覇気に満ち溢れた姿とはちがい今にも折れてしまいそうな弱った主の姿に心を決めると二ルティーナをしっかりと抱きしめかえす
「貴方の側には私がいます。どうか貴方の好きなようになさってくださいませ」
「ありがとう。ライラ・・・」
「ええ。貴方の恋が成就いたしますよう精一杯お助けいたします」
ライラはたとえ国を敵に回しても二ルティーナを守る決意を心に秘めるのであった
翌日の午後、いつものように学院に向かい工房の扉を開けようとしたところでヘレンから声がかかる
「清十郎先生、校長先生から授業を始める前に練兵場の方に向かってほしいと言付かっています」
「なに?」
「詳しいことはわかりません。とりあえず向かってほしいとのことです。生徒たちは私が見ておきますので授業の内容は昨日指示された彫金の加工の続きで構いませんか?」
「うむ。とりあえずそれをやらせておいてほしい」
「わかりました。では私は生徒たちを見ておきますので清十郎先生は練兵場の方へ向かってください」
「相分かった」
「では、失礼します」
ヘレンはそういうと工房の方に入っていった
清十郎は言われた通り練兵場に向かうと扉を開ける
するといつもは武術科の生徒たちが汗を流しているが今日は誰一人いない
首をかしげながら中央の広場に向かっていくと一人の人物が中央で待っていた
「そなたは・・・」
「お待ちしておりました清十郎殿」
プレートメイルに身を包みオレンジ色の髪をポニーテイルで纏めた女性ライラが中央に立っていた
「ここに呼び出したのは何用があってのことじゃ?」
「あなたと仕合うために」
「ふむ。理由を聞いてよいか?」
「あなたと剣で語り合いたいと言えばお分かりになりますか?」
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