第93話 招かれざる客
いつも読んでいただき有賀後藤ございます
その日の夕食後、ソファーでくつろいでいた清十郎に声をかけた
「清十郎様」
「ん?いかがいたしたロムア殿」
やや困ったような表情を浮かべるロムアに清十郎は首をかしげる
「明日、ウェイン様がお帰りになると本日、先触れが参りました」
「おお、そうか。ようやくウェインも帰ってくるか。長かったのう」
「え?お兄様が明日帰って見えるのですか?」
清十郎を膝枕をしていたイリアも反応する
最近、イリアが清十郎を膝枕をしているのはハーミット家では日常の一コマとなりつつある。食事を終えた清十郎がソファーで寛ぐと必ずイリアが隣に座り清十郎の頭を優しくなでると自らの膝の上に引き寄せるのだ。当初はからかっていたミーニャも最近ではこれが普通と割り切っている
「はい。ですが一つ困ったことが・・・」
珍しく言い淀むロムアに清十郎はイリアの離れがたい太腿の感触を名残惜し気居住まいを正すとロムアを見る
「ふむ。申してみなされ」
「ええ。ではお言葉に甘えまして。明日、お帰りになられる際に清十郎様には一緒に出迎えていただきたいのです」
「なんじゃそんなことか。それは当然であろう?」
「そうですね。ウェイン様だけなら問題ないのですが・・・」
「お兄さまの他に誰かおられるのですか?」
イリアが少し難しそうな顔をする
「おっしゃられる通りにございます。明日、ウェイン様とご一緒に二ルティーナ王女殿下が参られます」
「ええ!?」
慌てるイリアに清十郎がはて?と首をかしげる
「聞き覚えのあるような名前じゃな」
「このオーランド王国の第一王女殿下ですよ」
「おお!ワーラスにいたとかいう姫君じゃな?」
「・・・すっかり忘れておられましたね?」
隣のイリアが苦笑いをしつつ清十郎を見る
「ふむ。その姫君と儂の出迎えとどうつながるのじゃ?」
「そこでございます」
ロムアはちらりイリアを見る
「王女殿下が是非とも清十郎様にお会いしたいそうで」
そこでイリアの目がすっと細くなる
「ロムア、詳しく話しなさい」
「はっ」
イリアの隣でさも我関せずといった感じの清十郎をみながらロムアは話を続ける
「どうやらワーラス村で清十郎様にお助けいただいたことをいたく感謝されておられるご様子でして。王都につくなりウェイン様に清十郎様について事細かくお話をお聞きになられたそうです」
「それで?」
「はい。その後、国王様に清十郎様の剣をご献上なされたそうなのですが国王様がいたく剣をお気に召されまして是非とも清十郎様をお連れするように申されたのです」
「なに?儂はそんな面倒事嫌じゃぞ?」
清十郎の反応にロムアは苦笑いをする
「はい。ですのでウェイン様はそのお話は爵位もなく拝謁するには清十郎様が遠慮をなされたという旨をお伝えしではまた後日にとなったそうなのですが」
「ですが?」
イリアの目がさらに鋭さを増す
「その際、国王様が剣の礼にと清十郎様を騎士爵を贈られまして・・・」
「むっ。そんなものいらんぞ?」
「清十郎様、お話を最後まで聞きましょう」
「・・・そうじゃな。ロムア殿失礼した」
イリアに窘められ清十郎はロムアに軽く頭を下げる
「いえ。構いません。話を続けますが、騎士爵をさすがに断ることはウェイン様はもとよりレギウス様にもできず受け取らざるおえない状況だったそうです」
「ふむ。それはなぜじゃ?」
「おそらくは国王陛下はきっと清十郎様を王都に住まわせるご予定だったのかと思います」
「なに!?」
イリアの推測に清十郎は驚く
「イリア様のご明察の通りにございます。国王陛下は当初、清十郎様を王都に呼び寄せ歓待し、しばらく滞在させるご予定だったそうです」
「むぅ・・・」
唸る清十郎にロムアは話を続ける
「それをレギウス様が清十郎様がアボルグを大変気に入っておりアボルグに居を構えると言われていることをお伝えした上でもし居を別に構えるなら国を出るとまで言っているとお伝えなされたのです」
「・・・別段、儂は国を出るとまでは申しておらんが」
「きっとお兄様とレギウス様の策でございますよ」
「はい。その通りでございます。当然、宰相閣下と国王陛下はお怒りになられたそうですがその代わりに忠誠の証として例の剣を献上なさったことで事は収まったのですがその代わりにその忠誠に報いるためにお出しになられたのが騎士爵ということでございます」
「そういういきさつなのじゃな」
ここでようやく話しが見えてきた清十郎は腕を組む
「じゃが、それと姫君とどうつながるのじゃ?」
「そこでございます。ウェイン様とレギウス様は清十郎様が騎士爵に任ぜられることは予想されておられたそうなのですが二ルティーナ王女殿下と面識があるとまでは知らず・・・」
そこで清十郎にイリアの鋭い目が向けられる
「いつお知り合いに?」
「い、いや。儂も知らぬ・・・」
「二ルティーナ王女殿下によれば清十郎様に助けられてその際にハンカチもいただいたとか」
「ハンカチ・・・はて?」
「そうなのですか?」
イリアの表情がだんだんと凄みのある微笑みに変わっていく
「い、いや。本当に記憶がない!イリア殿、誤解なされるな」
そこでロムアの咳払いが響く
「こほん。それでですな。そういった流れで本来は別の爵位持ちの者が来て簡単な式典で終わる予定が二ルティーナ王女殿下がご来訪なされることで清十郎様には歓待していただかなくてはならなくなったのです」
ロムアは話は以上とばかりにそそくさとその場を離れていった
「な、なんと厄介な・・・」
「清十郎様?」
「い、いかがいたした?」
隣に座るイリアの顔が面前に迫る。しかしその顔が到底甘い雰囲気の物ではなく浮気をつかんだ妻が夫に迫る様相を呈している
「詳しくお話をお聞かせ願えますね?」
「はい・・・」
有無を言わさぬ圧力に清十郎は頷くしか道はなく深夜まで懇々とワーラス村での一件を話す羽目になったのであった
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