第92話 キヨマル
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清十郎はイリアとミーニャを連れて自分の工房の前に立っていた
今日は学校は休みの日で3人で工房に出向いたところだ
すでに看板が取り付けられ鉢植えが置かれたり樹木が植えられたりして店の外観が整えられてきている
「ほう・・・すっかり店らしくなったのう」
「ええ、もうすぐ開店できますよ」
店構えを見ながら感嘆の声をあげる清十郎に隣に立つイリアが相槌を打つ。だが清十郎はある一点をみつめ険しい表情を作る
「じゃが、あの名前だけはどうにも・・・」
「あら?いいじゃないですか」
清十郎が気になっているのは看板に書かれている言葉だ
”カフェ&武器工房キヨマル”
「ううむ・・・まさか清丸が名前になるとはのう」
「とてもかわいいと思いますよ」
そういいながら手を繋ぐ清十郎そっくりの清丸に笑顔を向けるとイリアの笑顔に清丸も笑顔で返す
「うふふ。本当そうやって3人そろっていると親子みたいですね」
ミーニャがその姿をみながら清十郎に声をかける
「うむ。まあ、清丸も儂の子供みたいなものじゃからな」
「清十郎様、違いますよ」
清十郎を見るイリアの真剣な表情にはて?と思う
「わかりませんか?私と清十郎様との子供ですよ!ねー清丸ちゃん」
力説するイリアに清十郎とミーニャはがっくりとうなだれた
「ま、まあ、イリア殿がそう思われるなら儂も本望じゃし別に構わんが・・・」
「ええ。今度は清丸ちゃんの弟も早く作ってあげないといけませんね」
「はっ?」
「あ・・・」
思わずといったイリアの言葉に清十郎は固まり、言ってしまった当の本人も固まる
「むふふ。お熱いことで結構でございますが!私の目が光ってるうちはご結婚前の子作りはさせませんからね!」
「「ミーニャ(殿)!」」
ミーニャは慌てる二人を他所に店の中に入っていった
清十郎が店の中に入ると大工がせわしくなく動き回りいたるところで作業をしていた
すでに最初の空間とちがい窓枠や床などがすべて張り替えられたり加工されたりしておりウッドデッキ調のカフェスペースが出来上がっていた
「これは・・・」
最初のころのイメージとかけ離れた空間に清十郎は言葉をなくす
「むふふ。どうですか?」
「ふふ。ミーニャと二人で一生懸命に考えてこういう形になったんですよ」
あたりを見回す清十郎にイリアとミーニャが声をかける
「・・・思っていたよりも随分、印象が変わるものじゃな」
「ええ。天井からすべて張り替えましたから」
イリアがそういいながら清十郎の手を取る
「イ、イリア殿?」
「こちらにいらしてください」
そう言ってイリアは清十郎の手を引っ張りカウンターのところに連れていく
カウンターの裏側には水回りの設備がすべて備わっておりここで紅茶や菓子などを用意するようだ
「ふむ。ここは水回りのようじゃが・・・」
「そうですね。それよりもこちらです」
カウンター横のスペースにカウンターと並ぶ大きさのガラスのショーケースが置かれていた
「これは?」
「ここに清十郎様のおつくりになられた剣を飾るのです」
「ふむ。たしかにこれならよく見えるのう」
「はい。それにこちらは特注で作ってもらった強化の術が掛けられた魔道具なんですよ」
「ほう・・・」
清十郎はガラスをこんこんと叩くと硬さを確かめる
「どうですか?」
イリアがおずおずと尋ねると清十郎は頷く
「うむ。硬さもあるし問題ないな」
清十郎が満足そうに頷くのを見てイリアはほっと胸をなでおろす。気に入るか心配だったのだろう
「窓際はせっかくの景観ですからカフェのスペースにと思いますが反対側は武器を飾ろうと思ったのです」
「カフェはすべてイリア殿とミーニャ殿に任せたしそれで構わんよ。ところで小物の類はどこに置けばよいかのう」
「それについては入口横のあの縦型のショーケースに飾ればいいかと思います」
そう言ってイリアが指をさすところには縦型のガラスのショーケースが置かれていた
「よくできておるな」
思わずこぼれた清十郎の本音だった。それを聞いたイリアとミーニャは嬉しそうに笑う
「ふふ。そういえば、清十郎様?」
「うん?いかがいたした?」
イリアがまじめな顔をして清十郎に声をかける
「ここの商売についてお兄さまから人材を送ると聞いておられますよね?」
「おお!そうであった」
「はい。それでその人材なのですが・・・」
「うむ。だれなのじゃ?」
イリアが自分を指さして笑う
「私ですよ」
「そうであったか」
「あら?驚かれないんですね」
ちょっと頬を膨らませて怒るイリアに清十郎は優しく笑いかける
「はは。なんとなくそんな気はしておったよ」
「・・・もう。清十郎様気づいてたならおっしゃってくださいませ」
清十郎は拗ねるイリアに苦笑いを浮かべながらどこか遠くを見つめるように店内を眺める
「そうか、イリア殿が助けてくださるならきっと良い店になるな」
「清十郎様・・・」
そっと清十郎に寄り添うイリア。それに清丸が二人を繋げるように互いの手を握る
その姿はどこからどう見ても子連れの仲のいい親子だ
「・・・私も彼氏がほしいなぁ」
それを見つめひとりごちるミーニャ。その後ミーニャがレイルに慰めるのはいつものことだった
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