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第70話 アンデッドの襲撃3

いつも読んでいただきありがとうございます!


 リッチの興味はすでにライラにはない

 配下のアンデッドを村へ進めさせもうすぐ到達すると思われた時、先頭のアンデッドたちが粉々になって宙を舞う


”む?何者だ?”


 アンデッドたちは瞬く間に吹き飛ばされ男がリッチの前に現れる


「ふぅ。疲れたのう。お主が大将か?」


 右手に変わった剣を持ち、手の込んで作られた皮の装備を身に着けやれやれといった感じで首を回している黒髪に黒目の男がいた


”貴様は我を恐れぬか”


「うむ。貴様が先ほどから何やら喋るたびに心がざわつくがただそれだけよ。修練の足らぬものにはきついかもしれぬがな」


 リッチはなんでもないように答える目の前の男に興味が湧いた


”面白い貴様に余に名乗る栄誉を与えてやろう。名前を名乗るがよい”


「ふむ。栄誉はいらぬが一応、名乗ってやろう。儂の名は清十郎よ」


”清十郎その名覚えたぞ。我の名も教えてやろう。我の名はファランポスだ。我の配下になった暁にはしっかりと働かせてやろう”


「貴様の配下になるつもりなぞ毛頭ないがファランポスしかとその名を憶えたぞ」


 清十郎は刀を自然体に持ち目の前のリッチをしっかりと見据える


”行くぞ、清十郎!”


「いつでもくるがよい」


 ファランポスの手から放たれる無詠唱の火球を合図に戦いの幕が切って落とされる


 飛んでくる何十もの自分を包んでも余りある火球を清丸片手にすべてを切り落としていく

 清十郎は目の前のファランポスが自分の思っていたよりも手ごわい相手だったことに心が躍る


「ふはは!お主、魔物にしておくには惜しいな!」


”それはこちらの言うことよ!まだまだこれからだ行くぞ!”


 その場に膝をつき理解の範疇を超えた大規模な戦いにライラは唖然とその様子を見つめていた

 先ほどのファランポスによってかけられた重圧はとっくに消え体力は回復しているが立ち上がる気力が湧いてこない


 ライラの目の前で起きている戦いは魔法一つで小さい村なら消し飛ぶ戦略級の大規模魔法が一人の男に向かって何十も飛び交いそれを片っ端から斬って消し去っているのだ

 通常の常識を持つライラがショックのあまりに唖然とするのは仕方がないことなのかもしれない


「もらった!」


 火球を消し去りファランポスの懐に入った清十郎は下から切り上げる

 凄まじい速さを持つ剣技は確かにファランポスを両断したかのように見えた


「む!」


 ファランポスの姿が揺れ陽炎のように消えていなくなる


”こちらだ!”


 清十郎の後ろから声が聞こえた時、清十郎は反射的に清丸を振り向きざまに水平に薙いで虚空を斬る

目の前で禍々しい紫の煙が霧散する


”それをも防ぐか。このままでは埒が明かんな”


 ファランポスは宝杖を地面に突き刺すとその身体から膨大な魔力を流し込む


「何をする気じゃ」


 清十郎が清丸を自然体で構え様子を窺っていると地面から巨大な手が出現し清十郎の足を掴む


「これは・・・」


”さすがの貴様も足を殺されればどうにもできまい!”


 ファランポスは宝杖を両手で全面に構えると魔力を溜め始める


「・・・あれはちとまずいな」


 清十郎の勘がうるさいほどに危険を訴えてくる。だが動こうにも足元を掴まれ身動きすることができない。清十郎は覚悟を決め正眼に構え息を整える


”ふっ!覚悟を決めたか!ならば行くぞ!”


 ファランポスが両手を天に上げる


「何をする気じゃ・・・」


直接、魔法をぶつけてくると思っていた清十郎は困惑したそれに対しファランポスは清十郎の裏をかいたことに我が意を得たりと肉なき顔でニヤリと笑った気がした


”われの呼ぶ声に応じておいでくださいませ。冥府の王よ!”


 溜めた魔力が天を貫き空間を切り裂くと切り裂いた空間から一つの目が覗き込む

 瞳の中の色とりどりの目玉が地上のありとあらゆるものを見るように動き見たものすべてに恐怖を与える。空間の裂け目に紫色の指を引っ掛けると破り広げようとする

 ライラはそれを見た瞬間、恐怖で縛られているはずの体が勝手に動き右手で持っていた剣の刃を自らの首にあてる。死ねば楽になると本能がひたすらに呼びかけ一種の快楽となりライラの理性を奪う


(ああ・・・死ねば楽になれる)


 恍惚とした表情を浮かべ安らぎの気持ちの中、刃を引く間際、大きな声が聞こえてくる


「たわけ者め!気をしっかり持たぬか!」


 その声で正気に戻ったライラは慌てて剣を手放す


「あれは世にだしてはならぬと儂の勘が言うておる。貴様の事は個人的には気に入ったが世の為、あれを儂は今から打倒す」


”かかか!冥府の王を打倒すというか!儂すらも倒せぬのにできるのか!”


「出来る出来ないではない!やるんじゃ!見ておれ!」


 清十郎は清丸に自分の考えを伝える。清丸は一瞬驚いたような感情を伝えてきたが頑張ると伝えてくる

 清十郎は清丸の答えに頷くと上段烏居に構える


(さて、魔法のあるこの世界、果たして儂の思うような事ができるかどうか・・・)


 僅かに逡巡するが考えるのが馬鹿らしいと清十郎は考えることをやめる

 集中し心の泉をかき混ぜ奔流させ体の隅々まで巡らせる


 そうこうしているうちにも空間の裂け目が広がり直接心に響く叫び声をあげながら冥府の王の顔が露わになる。いくつもある瞳に紫色の肌、異様に赤い唇が目立ち口を開き声を出すたびに心が逆撫でされる


 清十郎は魔力を清丸に注ぎ込む。もうこれ以上は無理というまで注ぎ込んだ魔力で清丸は凄まじい輝きを纏う


「いくぞ!」


 清十郎は空高くに覗き込む冥府の王に向かいそのすべてを断ち切るように上段烏居から振り下ろす

 その刹那、清丸から輝く光の奔流が放たれファランポスを巻き込み冥府の王の顔にぶつかると声にもならない声が響き周囲は光の白一色に染まった


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