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第69話 アンデッドの襲撃2

いつも読んでいただきありがとうございます!


 宿の建物が小刻みに小さく揺れる

 だいぶ前に小さな振動が伝わってからずっと続いている


 最初はアルム、ロビン、リノンも浮足だっていたが清十郎が目を閉じ微動だにしないのを見て落ち着いた。他の客も不安気な様子でざわついていたが女将がここぞとばかりに軽食を作り酒や果実水と一緒に振舞ったことでみんな落ち着いた


「戦況はどうだろうね・・・」


 リノンがポツリと呟く


「街の喧騒は聞こえないから大丈夫じゃないかな?」


「そうだよね。大丈夫だよね」


「いざとなりゃ、俺がお前を守ってやるよ」


 アルムの答えに小刻みに頷きながら両手で握る杖が小震えている

 それを見てロビンがリノンに守と言い放つ


「・・・うん。ロビンありがとう」


「いいってことよ」


 にこりとほほ笑むリノンにロビンが顔を若干赤くする


「はぁ。僕もそういう頼れる彼氏が欲しいな」


「ア、アルム、違うから!」


「そ、そうだぞ!違うからな!」


 その様子を寂し気に見つめポツリと零すアルムに慌てる二人

 微動だにしなかった清十郎がすっと目を開ける


「来たか・・・」


 清十郎がつぶやいた瞬間、大きな爆発音と共に宿が揺れる

 二度、三度と続いた後、魂に響くような声が聞こえてくる


”生ける者よ。もはやそなたらは終わりだ。ここまでの奮闘、褒めて遣わす

よって、我が手によってお主たちも我の支配下にはいるのだ”


 清十郎を除く食堂に居た者全員が震えだし顔を青ざめ己の身を掻き抱いている

 気丈な女将も例外でなくポリーをなんとか抱きしめその場にうずくまっていた


 清十郎は瞬時に魔力を全身に張り巡らせると宿の全員の心を落ち着かせるイメージし発動する。これくらいなら発動のキーワードを言うまでもない


 清十郎を中心に爽やかな風が流れると宿に居た全員が落ち着いていく


「ふむ。落ち着いたか?」


「い、今のはあんたが?」


「会話ができるなら上々、さて儂はいくでな」


 客の一人に聞かれ何でもないように答えると清十郎は椅子から立ち上がる


「僕たちも行くよ」


 アルムが追随して立ち上がろうとするが清十郎はそれを止める


「相当の輩が来ておる。無事済むか分からん以上ここで身を守っておった方がよい」


「いや、行くよ。戦えなくても何か手伝えることもあると思うから」


 アルムは決意を秘めて立ち上がるととロビンとリノンも黙って立ち上がる


「そなたら・・・。もう何も言うまい。ただし街の外にはでるな。おそらくこの間のオーガ以上の者が居る。良いな」


 オーガと聞き一瞬アルムがビクリとなるが前言を翻すことはない。その様子を見て清十郎は軽くうなずくと宿を出る。後ろにはアルム、ロビン、リノンが続く


 街の外にでると通りに人は出ておらず清十郎は全力で走って現場に向かう

 アルム、ロビン、リノンと一足ごとに距離が開いていく


 時折、しゃがみこんで呻いている人とすれ違うが今は一刻を争う

 無視して通り過ぎるとやがて城壁の傍にやってくると城壁が崩れ倒れる兵士たちを目の当たりにした


「これは・・・」


 城壁は決して薄くないそれが崩れ平原の向こうから迫ってくるアンデッドの大群が見えた


「はぁはぁ・・・清十郎君早いって」


 やがて清十郎に追いついたアルムたちがやってくる。ロビンとリノンは息を整えるのに必死で声が出ない


「アルム殿、ついてきてもらって正解だったかもしれん」


 清十郎は崩れた城壁から覗くアンデッドの大群を見て呟く


「え・・・?どういうこと?兵士の人たちは?」


 アルムも息が整うと周りを見る余裕ができたのか崩れた城壁と倒れる兵士たちの姿を見て声が出なくなる。それでも一部の兵士たちは生きているようだが全員しゃがみ込み荒い息を吐いている


「アルム殿!生きている者を優先に正気に戻せ!顔を一発や二発ひっぱたいてやればなんとか正気に戻るであろう!頼むぞ!」


「ちょっ!清十郎君!?」


 清十郎、そう言い残すと城壁の石の出っ張りを足場にして急いで駆け上がる

 言い残されたアルムは清十郎が焦る理由が分からなかったが上を見上げた時人影が剣を真上に振りかぶり何かを貫こうとしていた


 清十郎は城壁を駆け上ると貫こうとしていた人影を反射的に蹴り飛ばし横から蹴り飛ばされる形となった人影は城壁の外へ落ちていった


「なんとか間に合ったようじゃな・・・」


 足元には一人の女性が倒れていた。清十郎は女性が生きているのを確認すると皮ポケットから魔力回復薬を取り出すと女性の美しい顔に容赦なくぶっかける。飲むのが一番だがかけても肌から吸収すると聞いている。鼻に入って若干むせているがそこは容赦してもらおうと清十郎は思う


 周りからはなんてことをとか姫様おいたわしやとか聞こえるが気にしないでおこう


 清十郎は素早く清丸を抜くと虚空を水平に切りつける。金属と金属がぶつかる甲高い音が響く

 清十郎の目の前に全身黒ずくめで白い仮面を嵌め右手には禍々しい剣をもった人物が立つ


「お主、デュークじゃな?」


 清十郎が問うが無視して突っ込んでくる。清十郎は素早く前にでると清丸を使い受け流し相手の側面に回り込みもう一度、城壁外に蹴り飛ばす


「まったく。いきなりとびかかってくるとは礼儀がなっておらん」


 清十郎は嘆息しながら先ほどの剣を合わせた時に感じた禍々しい感じに眉を顰める

 清丸からも気持ちわるい!という気持ちが伝わってくる


「あまり、刃を合わせぬ方がいいかもしれんな!」


 再度、清十郎は虚空に向かい切るつけるが今度は下段から切り上げる

 今度は手応えを感じる。清十郎の前に黒マントと仮面がずれデュークの素顔が露わになる


「お主その姿はアンデッドか」


 そこには眼窩が落ちくぼみ骨と皮膚だけになって干からびた姿のデュークだったものが立っていた。清十郎の目にはデュークの体に魔力の流れはなく剣に禍々しい魔力が宿っているのが分かる


「剣に操られておったのか自ら剣に魅入られたのかは分からぬがこのままでは哀れ、一思いに楽にさせてやろう」


 剣が嗤った気がした。清十郎はその嗤いが醜悪な嗤いだと気配でわかる


「ふん・・・所詮、剣の分際で嘲笑うか。お主が侮る人の力を思い知れ」


 清十郎は上段鳥居に構えると心の泉を作る


「人の心は修羅の心、己を律することこそ人が人である所以。じゃが、律する心を廃したこの修羅の剣はお主のように人を嘲笑う者にはちょうど良い。しかと人の業の深さを思い知れ!」


 清十郎は一足でデュークであったものに上段烏居のまま飛び込むと裂帛の気合とともに心の泉を大爆発させ振り下ろす。その瞬間、清十郎の体から燃えさかる炎が噴き出しさながら業火の化身と化して斬りかかったように見えた


 デュークだったものは右手に持つ剣で迎え撃つが剣と刀がぶつかった瞬間、剣は真っ二つに両断されデュークの体と共にが青白く燃える


 魔剣は苦しみ喘ぐ人の顔に次々と形を変え段々と小さくなり最後は紫色の結晶を残し燃え尽きた

 清十郎は最後に残った紫色の結晶に清丸の切っ先を当てると力を少し込めて割る

 割られた結晶は砂のように粉々になり風に流され消えていった


「人の心は如何に業の深い物よ。末路に見せた数々の顔はあの剣に魅入られし者達の魂やったのかもしれぬな」


 清十郎が清丸を納刀した直後、背後から咳き込む音が聞こえた


「ゴホッゴホッ、私、なぜ濡れて・・・あなたは?」


 魔力の枯渇から回復したのか意識を取り戻し濡れた若草色の髪が張り付いた顔を手で拭いながら女性が起き上がる


「・・・濡れておる故、これで拭きなされ。儂はあちらに向かわねばならぬからな」


 清十郎は自分がやりましたとは言わず横目で女性の顔をチラリとみると胸ポケットからハンカチを取り出し女性に渡すと気まずげに街の外を睨みニルティーナをそのままに城壁から飛び降り立ち去った


「あの方は一体・・・」


 後からなぜ男が気まずげにハンカチを渡したのかニルティーナは知る


 自分の命を助けてくれた恩人であるということそしてポーションをぶっちゃけられ咳き込んで涙と鼻水で汚れた顔をさらしていたという事実を


 その時のニルティーナの心は推して図るべし


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