第68話 アンデッドの襲撃
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スケルトンやゾンビがあらゆる光に包まれ吹き飛んでいく
ワ―ラスの村の城壁から打ち込まれる魔法の数々が森からあふれ出るアンデットを狙い撃つように
吹き飛ばす
アンデッドは魔石を破壊しない限り動き続けるが無差別に打ち込まれる魔法で粉々に魔石は砕け吹き飛ばされたアンデットは二度と立ち上がることはなかった
幾度となく打ち込まれる魔法、吹き飛ばされるアンデット、その様子を城壁の上からオーランド王国第一王女ニルティーナ=オーランドは黄金に輝く瞳で見つめていた
「殿下、今のところアンデッドどもは村に近寄ることができません。このまま殲滅できるのではないでしょうか」
ニルティーナに凛々しい顔立ちにオレンジ色の髪をポニーテイルでまとめプレートアーマに身を包む女性ライラが声をかけるがニルティーナの顔は険しいままだ
「ライラ。兵たちの疲れはどうですか?」
「交代で休ませながら魔法を打たせていますので今のところそこまでの疲れはみられません」
「そうですか・・・」
ライラの言葉にニルティーナは初めてふうと息を吐く
その時、森の方から巨大な火球が飛んでくると城壁に着弾する。凄まじい轟音の中ニルティーナはその場に膝をつく
「な、何事ですか!」
「わ、わかりません!」
ニルティーナは思わず声をあげるが同じように膝をついたライラには状況を把握する暇がなく答えることはできない
二度、三度と城壁に衝撃が走る。兵が吹き飛び城壁の一部が破壊された時ニルティーナは森の奥から現れる一体のアンデッドを見つけた
「あれは・・・リッチ?」
ニルティーナの視線の先には肉を失った体に豪華な王冠をかぶり黒いマントが風にたなびき右手に宝杖を持っている
”生ける者よ。もはやそなたらは終わりだ。ここまでの奮闘、褒めて遣わす。よって、我が手によってお主たちも我の支配下にはいるのだ”
一言一言に心が震え恐ろしさが込みあがってくる
「く・・・喋るリッチか厄介な」
隣で息を荒くしながらライラが呟く
リッチは意思を持つものほど力が強いとされる過去には討伐難易度Sクラスに指定されたものもいる
ニルティーナは兵の方に目を向けると全員苦しそうに胸を掴み蹲って呻いているのが見えた
その間にもアンデッドの群れがワ―ラスに向けて進んでくる
「ライラ、あれを倒せますか?」
ニルティーナは膝を付きながらライラを見る
「はっ!必ずや奴を打ち取って見せます!」
ライラの決意を固めた顔をみながらニルティーナは頷く
「わかりました。私があそこまでの道のりを開けます。貴方はあれを倒しなさい」
「それでは殿下の護衛が・・・」
「私は大丈夫です。行きなさい。これは命令です」
「はっ!ご下命しかと承りました」
二ルティーナは微笑みながら頷くと詠唱を始めるとライラは城壁を下り腰から剣を抜きはなつ
”ほう・・・何をするか分からんが余にひれ伏さずあらがうその心は賞讃に値する”
やがてニルティーナの体が光の奔流に包まれ輝きを増し姿が見えなくなる村に近づくアンデッドが光に当てられると苦しみの声をあげるようにして浄化されていく
ニルティーナが目を開き両手で愛杖を前に突き出し叫ぶ
「マグナサンクトゥスルクス!」
その瞬間、ニルティーナの両手から光の奔流がアンデッドを飲み込みリッチをも巻き込み辺り一面太陽が落ちたような明るさが広がる。やがて光が治まり夜の帳が下りると森からあふれ出ていたアンデッドは全て消え去っていた
「あとは頼みましたよ。ライラ・・・」
ニルティーナはその言葉を最後に気を失う
「必ずや・・・」
ライラは胸に手を当てて城壁の上にいるニルティーナに決意を示す
”くくく。なかなかやりおるな。我に力を使わせるとは”
胸がざわつく心を落ち着かせライラは声を主に視線を向ける
「やはり貴様は残ったか」
”あれしきでは我は滅びぬ。さあ、続きを始めよう”
リッチは骨の指をこすり合わせるように弾く
その瞬間、リッチの背後からスケルトンやグールたちがうごめき湧き出してくる
「なっ・・・!?」
ライラの眼前では主が全力で放った魔法により滅びたと思ったアンデッドの大群が再び行く手を遮るがライラは止まるわけにはいかない。右手に構えた剣を天に捧げると全身を淡い光が包みライラの背後の虚空から何百もの光の剣が現れる
”ほう、戦乙女か”
「くらえ!」
ライラは右手の剣を前に突き出すと光の剣がアンデッドたちに向かって飛んでいき刺し貫いていく。刺し貫かれたアンデッドたちは瞬時に蒸発し姿を消す
リッチは宝杖を前に出すと目の前に闇の渦を出し襲い掛かってくる光の剣を防いでいる
光の剣でアンデッドが消滅しリッチの姿が見えるがすぐにアンデッドが押し寄せリッチへの道を閉ざしてくる。だがライラにとって道を塞ぐ間の僅かな時間で十分だった
「覚悟しろ!」
ライラはリッチの呟きともとれる言葉を無視し電光石火でリッチに走り寄ると目にもとまらぬ速さで斬りつけるが寸前でリッチの持つ宝杖が剣を防ぐ
”なかなかやりおるわ”
「ちっ!これくらいではやられてくれんか」
ライラの吐き捨てたような言葉にリッチの眼窩にともる暗い光が嘲笑うように揺れる
”・・・ふふ。楽しいのう。我を呼び出した者に感謝せねばならんな。戦とはこうでなくては面白くない。特別に余に名乗る栄誉をやろう”
「貴様に名乗るような言葉なぞないわ!」
ライラが吐き捨てて再度斬りかかったと次の瞬間、リッチの白い骨指がライラを指し示し下に向けた。凄まじい重圧がライラにのしかかり地面にたたき伏せられる
「ぐぅ!」
ライラは上からのしかかる重圧に指一本動かすことができない。だんだんと重さが強くなって行く気がする
”余の栄誉を無下にするか”
リッチの眼窩の暗い光が強くなった気がした。その瞳なき瞳はもの悲し気にそして怒っているようにも見えた。その目を見た瞬間、ライラは絶対に勝てないと思わされ心の戦意が挫かれる
”所詮、我を満足させるに至らぬか。小娘よ。そこで這いつくばって貴様の主と街が滅ぶ様を見るがよい。そして余の栄誉を無下にした報いを受け絶望の中で死んでいくがよい”
絶対ともいえる言葉と身動きの取れない自分の体にライラの心は折れた
「ニルティーナさま、申し訳ございません・・・」
ライラの凛々しい顔は悔し気に歪みその瞳から一粒の涙がこぼれ落ちた
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