第67話 王女様
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夜の街にカーンカーンと鐘の音が鳴り響く
豪勢とまではいかないがきれいに手入れがなされた部屋のベッドで眠っていた女性がその音で目を覚ます。同じくらいに扉がノックされ凛々しい顔立ちにオレンジ色の髪をポニーテイルでまとめプレートアーマに身を包む若い女性が入ってくる
「ライラ、何事ですか?」
「殿下、アンデッドの大群が村に迫っております」
殿下と呼ばれた女性、オーランド王国第一王女ニルティーナ=オーランドは黄金に輝く瞳を見開いて驚く
「どういうことですか?」
優し気な声音だがしっかりと通る声でライラと呼んだ女性に尋ねる
「西の森より1000体を超えるアンデッドがワ―ラスに向けて迫っております
スケルトンとグールなどの低級が主ですがレイスやリッチが混ざっているそうです
アボルグの冒険者ギルド所属のBランク冒険者よりもたらされた情報で本人が直接、その行軍を見てこちらに報告して参りました。 すでに目視できるまでに迫っておりましたので街に警鐘を鳴らさせました」
「そうですか。今から街の人たちの避難は難しそうですね」
「はい・・・。せめて殿下だけでもと思いましたが間に合いそうもありません。申し訳ありません」
目を失せるライラにニルティーナは首を振る
「ライラ、私だけで逃げるつもりはありません
私はこの国の第1王女です。ここで人々を見捨ててしまっては国中から後ろ指をさされてしまいます」
ニルティーナはベッドから下りて立ち上がるとすぐにそば付きの侍女が身支度を整え始める。腰まで伸ばした豊かな若草色の髪をポニーテイルに纏めさせ、いつものドレス姿ではなく身軽な上下ともに意匠を凝らしたジャケットにズボンの出で立ちだ
「親衛隊はすでに動かしていますか?」
「はっ。すでに城壁にて待機し迎え撃つ準備をしております。街の警備兵には住民の混乱を抑えるように動いてもらっています」
「さすがライラですね。では、私たちも向かいましょう」
「はっ!」
ニルティーナは宝玉を埋め込んだ愛杖を侍女より受け取ると足早に部屋より出ていく。ライラも止めることなくニルティーナの後に続く
ニルティーナがただのお姫さまではなく大魔術師のスキルを持つ魔法の使い手であることを彼女らは知っている。ただし表沙汰になっているスキルは実は賢者のスキルであるということはニルティーナ本人
と一部の者しか知らない事実だ
屋敷といっても過言ではない村長の宅より出るとニルティーナ達はアンデッドに対峙するために城壁に向かうのであった
宿の食堂の椅子に座りテーブルを囲む清十郎は目を閉じ街に鐘が鳴るのを聞いている
他の宿泊客の一部は外に出て行ってしまったが残りは食堂に集まり各集団でテーブルを囲んでいる
あの後、清十郎はロビンを叩き起こしアルムとリノンを呼びに行かせ宿の女将を呼んで事情を説明した。受付で対応してくれた女性が女将で間違いなかったようだ
女将は話を聞くとポリーに宿泊客に知らせに行かせたところでアルム達が下りてきたのでテーブルを囲み事情を説明した
続々と宿泊客が下りてくる中で清十郎はアルムを偵察に向かわせ今はその情報待ちだ
じっと待つ清十郎の元に宿の玄関が開かれアルムが息を切らせて入ってくる
アルムは清十郎たちが囲むテーブルの椅子に座ると大きく息を吐いた
「ふー。清十郎君に言われて村の様子を見てきたよ。一応城壁もあるからみんな落ち着いて家に閉じこもってるみたい。警備の人たちが見回っていて慌てている人には対応していたから混乱はほとんどしてないかな」
「村の外の状況はどうじゃ?」」
村の様子を伝えるアルムに清十郎は外の様子を聞く
「うん。王女様たちが来ていたおかげで親衛隊の人たちが城壁で迎え撃つ準備をしてるよ
ただ、近寄れる雰囲気じゃなかったから数までは分からないけど100から200くらいの人じゃないかな」
「ふむ」
「あと外の様子だけどこっそり城壁にのぼって見たけどもう目に見えるところまで来てるよ」
「そうか。アルム殿、手間をかけさせた。ありがとう」
「いいっていいって。役割だからね。それよりこれからどうするの?」
礼を言う清十郎にアルムは手を振りながらこれからの事を尋ねる
「切迫した状況ではないようじゃし暫くここで待機じゃな」
「え?助けに行かないのか?」
思わずと言った感じでロビンが清十郎に聞く
「それがいいと思うよ。第1王女様の親衛隊ってものすごく強いって話だし僕らが行っても邪魔になるだけだよ。それよりは万が一に備えて大人しくしていた方がいいと思う」
「アルム殿の言う通りだな。ロビン、前にも言うたであろう急いては事を」
「仕損じるだろ。わかってるよ」
ロビンが肩をすくめて清十郎の言葉を継いだ
「・・・儂って説教臭いか?」
「「「今更?」」」
清十郎が苦笑いしながら尋ねるとアルム、ロビン、リノンの声が重なる
その様子にがっくりとうなだれる清十郎であった
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