第62話 野営
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今、清十郎たちはアボルグを出発しアボルグとホーブスをつなぐ街道を南に荷馬車を借りてのんびりと目的地近くのワ―ラス村に向けて馬車を走らせている
御車台にはロビンと清十郎が荷台にはアルムとリノンが乗り手綱はロビンが握っている
冬に近づきだんだんと冷たさを帯びる風を感じながら清十郎は馬車に揺られながら眠り眼で流れる景色を楽しんでいた
「なあ、清十郎」
「ふぁ~・・・。どうしたんじゃ?ロビン」
あくびをしながら清十郎は答える
「俺たちこんなにのんびりしながらでいいのか?」
「なんじゃ、そんなことか。それなら先ほども言うたではないか
急いては事を仕損じる。儂の国の格言じゃ。共闘せんというなら先に行かせて余分な物を全部押し付けて最後に良いところを貰えばいいんじゃよ」
呵々と笑う清十郎にロビンは嘆息する
「そそ。清十郎君の言う通りだよ。焦りは禁物。僕らは僕らのペースで行こう」
「ロビン、わたしもそう思うよ。焦らず行こうよ。ね」
「うーん・・・。それは分かってるんだけどなぁ」
ロビンは正直焦っていた
それは自分たちが共闘しようと声をかける前に今回の参加者たちが我先にと出て行ってしまい一番最後に出発したのが自分たちだからだ
貸馬車もすでに良馬は出払ってしまい残された老馬を借りるのがやっとだった。それでも借りれただけよかったのかもしれないが
「どちらにせよ、この馬ではそんなに急がせても潰れてしまうからのう。のんびりいくしかあるまいて」
ロビンは、はぁーと溜息を吐くと後ろでアルムとリノンが女子会同然に盛り上がっているのを後ろ目でみながら馬を走らせるのであった
結局、今日中に目的地のワ―ラス村より一つ手前にある村にはたどり着けず街道の脇にあるちょっとした広がりを利用して野営を行うことになった
今、リノンとアルムが火をおこして馬車の番をしロビンと清十郎が獲物を取りに行っている
昼間に携帯食を食べた清十郎が眉間に皺を寄せて食事は大切だと言い張り夜は何かの肉を取りに行こうということになったのだ
「ねぇ、アルム・・・?」
「うん?どうしたの?」
焚火に当たりながらリノンがアルムに声をかける
夜になると気温も下がりかなり冷えるので薄手の毛布に身を包み焚火に手を当てている
「清十郎さんってどういう人なの?」
リノンに問われてアルムは腕を組むと小首を傾げて唸る
「うーん・・・。不思議な人?」
「ふふ、何それ」
「そうとしか言いようがないんだよね。精霊の宴の話は知らない?」
今度はリノンが首を傾げると首を振る
「そっかー。ロビンとリノンはアボルグには来たばかりなのかな?」
「うん。今回のDランク試験があるって聞いて王都から所属をこっちに移してきたんだ」
「えぇ!王都!?またなんで?」
リノンが王都からきたことでアルムは驚いた。王都のギルドであれば仕事にあぶれることはないはずだ
「私とロビンは王都の孤児院で育ったんだけどその頃からギルドの下働きをして日銭を稼いでてね。15歳の成人と同時にその時の実績が評価されてEランクになったんだ」
「あー。そういえばそんなシステムもあったね」
冒険者ギルドには孤児の救済制度として下働き制度がある。登録して魔物の解体の手伝いや書類整理など職員がやるほどではない仕事を下働きとして孤児に回しているのだ
ここでこなした仕事は評価され成人と同時に冒険者ギルドに登録するとその評価が反映されEランクからスタートできる制度だ
もちろんFランクの仕事がそれで減ることはない。Eランクから上がれない冒険者や好きでFランクの仕事をこなす人間もいるから仕事をするのに需要は事欠かない
アルムもその制度を利用し成人と同時にEランクからスタートして精霊の宴に入れてもらった
「でね。王都の受付の人に言われたんだ。経験を積むならアボルグが良いって
でも私たちがここに来てすぐにDランク試験があるのを知って受験資格に実績は関係ないからとりあえず受けてみようってロビンが言い出して・・・」
「はぁー・・・道理で」
アルムはリノンの言うことで納得した
会場での一件から情報の集め方行程の組み方に至るまですべてが物知らずで結局アルムが全ての下準備を行ったのだ。その間ロビンとリノンはおろおろするばかりで何も役に立っていなかった
清十郎はその間、ターニャからいろいろ聞いていたみたいなので情報はつかんでいるとアルムは思っている。それでも清十郎がロビンとリノンの面倒を見ると言っていたのでアルムとしては些事だ
「ま、リノンとこうして友達になれたから僕はいいかな」
アルムがけらけらと笑うとリノンは目を丸くした
「何それ。ふふ」
リノンは嬉しそうに笑う
「そういえばさっき精霊の宴がって言っていたけど何かあったの?」
「うん。つい最近のことなんだけどね。清十郎君がオー・・・」
「おーい!」
アルムが事の詳細をリノンに話そうとした時、ロビンの呼ぶ声が遠くから聞こえてくる
声の方を向くとなにか大きな物体の影が徐々に近づいてくる。思わず戦闘態勢に入るアルムに一足遅れてリノンも詠唱の準備に入る
「あ、ちがう、ちがう!大丈夫!」
ズシン、ズシンと音を立てて近づいてくる音とロビンの声が響く
どうやら火の灯でアルム達が戦闘態勢に入っているように気づいたようだ
アルムとリノンはお互いに顔を合わせると戦闘態勢を解く
しばらくするとロビンの姿が見えてくる
その横には小高い山のような大きな物体を担いで歩く清十郎の姿があった
ずずんっと大きな音を立てて清十郎は担いでいた物をアルムたちの目の前に置いた
「ふぅ。疲れたわい。ん?アルム殿にリノン殿どうしたんじゃ?」
置かれた物体を見て唖然としているアルムとリノンに清十郎は何でもないように声をかける
「こ、これって・・・」
アルムがようやく絞り出した声にロビンが食いつく
「そうだよ!清十郎の奴が獲物は大きくてうまそうな奴がいいとか言い出して走り出したから追いかけたらこいつを一撃で仕留めたんだよ!」
アルムの思考がだんだんと落ち着いてくる
「清十郎君・・・」
「ん?どうしたんじゃ?」
「やりすぎ!これ、アサルトボアだよね!」
「いや、こいつが何か知らんけど」
「知らんのかい!」
思わず突っ込むアルム
「・・・はぁ。もういいや。これがなにかロビンとリノンは知ってる?」
気を取り直してロビンとリノンに尋ねるが当然のごとく2人は首を振る
そうだよねとアルムが説明する
「これはアサルトボアと言って討伐難易度はパーティーだとDランク、単独だとCランクだよ」
「「ええ!?」」
アルムの話で今更に吃驚した声をあげる2人。清十郎は小首を傾げる
「Cランク?こやつ突撃してくるだけだったぞ?所詮イノシシであろう?
首をこうズバとやって血抜きもしたからきっとうまいぞ」
呵々と笑いながら首を手刀で斬る真似をする清十郎にアルムは額に手をやって首を振る
「清十郎くん・・・」
「なんじゃ?」
「こんなもの今から解体するの?」
「あっ・・・」
その夜、夜通しの解体作業が決定した瞬間だった
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