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第63話 村で一泊

いつも読んでいただきありがとうございます


 翌日の昼過ぎにワ―ラス村の手前にある村に着いた


「ようやくついたー!」


 馬車を村の入り口傍の広場に停めると御者台からロビンが喜んで飛び降りる


「アルム殿、リノン殿、村に着いたぞ。そろそろ起きるんじゃ」


 荷台で大量の凍ったアサルトボアの肉に埋もれるように寝ていたアルムとリノンに清十郎は声をかける。ちなみにボアの肉を凍らせたのはリノンだ。フリージングという魔法を使っていた


「ん~!!!清十郎君おはよう」


「ふわぁ~。おはようございます」


「うむ。おはようと言いたいところだがもう昼じゃ」


「え?そんなに寝てた?」


「うむ。ぐっすりとな。アルム殿もリノン殿も可愛い寝顔だったぞ」


 背伸びをするアルムとまだ眠いのか目をこするリノンに清十郎は笑いながらからかってやる。2人が顔は赤くしているのは気のせいではないだろ


「お前たらしだな・・・」


 ロビンがジト目で清十郎を見る


 昨日は徹夜でアサルトボアの肉を解体していたので清十郎を除く全員が疲れていたので清十郎が今日は儂が御者をやろうと罪悪感もあって買ってでたのだ


 一応、荷台で警戒を務めていた二人もまだ若い10代。睡魔に勝てずそのまま寝入ってしまっていたし御車台では清十郎の隣に座っていたロビンが船を漕いでいた


 その様子に若いなと微笑ましく思い眠っている3人を見守りながら馬車をすすめた。ちなみに清十郎は前世では徹夜で鍛冶仕事をすることなどザラだったので慣れている


 馬車を停めてしばらくすると荷台に乗せてある凍ったボアの肉を見つけた村人たちが集まってくる

 何事かと思っているとやがて一人の年配の男性が声をかけてくる


「お疲れのところ申し訳ありません。私はこの村の村長を務めているジラブという者です」


 ジラブが丁寧に腰を折る


「これはご丁寧に。儂は清十郎と申す。こちらは仲間のアルムにロビン、リノン」


 清十郎が挨拶を返しアルムたちを紹介するとそれぞれに挨拶をしていく

 ひとしきり挨拶が終わったところでジラブが大量の肉を見ながら清十郎に尋ねる


「ところでこの大量の肉はどうされたのですか?」


「うむ。昨夜、新鮮な肉を食べようと探していたところ巨大なイノシシを見つけてな。そいつを狩ってやったのよ。まあ、徹夜で解体作業に追われてしまったがな」


「清十郎君、イノシシじゃなくてアサルトボアだよ」


 隣でアルムが訂正の声をあげると村人たちから歓声があがる

 それをジラブが村人たちに手をあげて静かにさせるとジラブが口を開く


「そうですか。アサルトボアを・・・。清十郎様と申されましたな。この肉はどうされるのですか?見たところ食べきれる量ではないかと思いますが」


「ふむ。どうしようかはまだ決めておらぬ。さてどうするか・・・」


 清十郎が頤に手を当てて考え込む


「でしたらこの肉を儂らに売ってもらえませんか?もちろん、相応の謝礼はいたしますので」


「ふむ・・・」


 清十郎はアルム、ロビン、リノンの方を横目でちらりと視線を向けると全員頷いてお前に任せると言っている


「よかろう。一部は儂らが必要としておるがそれ以外の肉はすべてお主らに譲るとしよう」


 おお!と村人たちから歓声があがる。余程、肉が欲しかったようだ。ジラブも相好を崩している


「ところでなぜこれほどに肉を欲しておるのじゃ?」


 清十郎の問いにジラブは笑顔から困り顔になり答える


「実は王女殿下がアボルグに来られると先触れがきましてな。この村で一晩滞在されるというのです。ですが見ての通りこの村は特産品もなく大したもてなしができなくてどうしたものか悩んでいたのですよ」


「ああ。なるほど。饗応に使おうということじゃな」


「ええ、その通りです。アサルトボアの肉であれば王宮でも使われる高級品。もてなすにはちょうどいい食材なのです」


「ふむ。なら自分たちで狩ればよかったのではないか?」


 清十郎が腕を組み首を傾げる


「清十郎君・・・それ君だから言えるんだよ。普通の村の人たちじゃ無理だって」


 清十郎のその問いに隣にいたアルムから答えが返ってくる


「はい。情けない話ですがアルム殿の言う通りです。私どもではアサルトボアは狩れません。奴らは非常に力が強く儂らもたびたび畑を荒らされては泣き寝入りする始末です

 あまりに被害が多いときは冒険者ギルドに依頼を出すのですが今回は急な話でしたのでどうしたものかと悩んでおりましてな」


「そういうものかの。とりあえず、先ほども申したが肉はそなたらに儂らが食べる分以外はすべて譲る故、安心いたせ」


「はい。本当にありがとうございます」


 ジラブは再びお辞儀をすると村人に指示し肉を下ろしていく


「やったね。清十郎君!これで荷台も軽くなるね!」


「うむ・・・そうじゃな」


 自らの失態をつつかれたような気分になった清十郎は苦笑いだ


「ところであなた方はどこに向かわれているのですか?」


「うん。この付近でゴブリンが集落を作ってるって話があってその依頼の途中だよ」


「おお、昨日きた冒険者たちが話していた内容ですな」


「ジラブさんは何か知ってるの?」


「ええ、ただ、この村はなにもありませんから冒険者たちはそこの広場で野営をして過ごしておりましてな。あまりの声でうるさくて聞こえてしまったのですよ」


「それは・・・申し訳ないのう」


 清十郎が思わずと言った感じで謝る


「いえ。あなた方が謝る必要はありません」


 ジラブは笑いながら首を振る


「ところでこの後はワ―ラスまで向かわれますか?」


「ふむ。特には決まっておらぬが・・・」


「それでしたら今晩はこの村にお泊り下され。見ればお連れの方々はみなお疲れのご様子。ワ―ラスまでまだ距離がありますし今から出立しますと野営せねばなりませんからな」


 ジラブはアルムたちの様子を見てにこやかに泊まることを勧める

 清十郎は後ろを振り返り仲間の様子を見ると確かにみんな疲れた顔をしている。その様子を見てジラブの言うことに従うことを決める


「そうか、それなら今夜はゆっくりさせていただこうかのう」


「おお。それでは是非、儂の家でお泊りくだされ。粗末な家ではございますが雨露をしのぐぐらいはできますでな」


 ジラブは嬉しそうな顔で家に泊まれと言う。後ろを見ればアルム、ロビン、リノンはコクコクと頷いている。どうやら疲れからジラブに言われなくても泊まるつもりだったらしい


「なら、ご厄介になるかのう。ジラブ殿よろしくお願い致す」


 清十郎の礼儀正しい様をみてジラブは優し気に微笑んで頷いた


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