第43話 スパルタ教育
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屋敷に戻った清十郎たちはウェインの帰宅を待って執務室で机を挟んで向かい合わせで座っている状態だ。ウェインは机に突っ伏すように膝に肘をつけて頭を抱えている
清十郎から聞かされた一連の話を聞きウェインが容量オーバーを起こした状態だ
やがてその疲れ切った顔をしたウェインが口を開く
「ほんと君っていつもとんでもないことをしでかすよね。僕、殺す気?」
半ば、本気ともとれるウェインの言葉に清十郎は申し訳なさで言葉がない
「はぁ・・・。これは困ったねー」
そう言いながらウェインは目線を清十郎の隣に座る青髪の女性に目を向ける。ポーラは美味しそうに紅茶を飲みながらいいお茶ねーと言っている
なぜポーラがいるかというとあの後、事情を説明しするために私もついていくと言い出したのだ。理由を尋ねればポーラが魔鉱石病が治り若返ったことが知られれば必ず査察官がやってくるらしい。その時になってからでは領主ともめることは間違いないということだ
「ポーラ殿、確認するが清十郎の言っていることは全部ほんとかい?」
ウェインが聞くとそこでポーラはそのおっとりとした顔をウェインに向ける
「ええ。そうよ。清十郎さんが言ってる通り魔鉱石病が治って若返ったのよ。それにマリカ様との話も本当。ウェインさんもそこで座ってる子をみたでしょ?」
と視線をイリアの膝の上に座っている清十郎そっくりな子供に向ける
「やっぱり本当かー・・・。ポーラ殿、ひとつお尋ねしたいのだが魔鉱石病は治るのかい?」
「無理ね」
「うん。よかった。僕の常識はあっているようだ。なら、なぜ清十郎はできたのだろうか?」
ポーラはうーんとしばらく唸る
「おそらくだけど清十郎さんに全属性の適正と魔力量があったからじゃないからしら?
清十郎さんほどの魔力量を誇る人は知らないし全属性ともなると数えるほどしかいないんじゃないかしら。両方兼ね備える人は私の知る限りではいないわね」
腕を組み再びウェインは考え込む。しばらくして考えがまとまったのか口を開く
「なら、清十郎、君は明日から午前中はイリアとミーニャによってこの世界の常識を午後からはポーラ殿による魔法講義をみっちりこなしてもらうからね。それからポーラ殿にはこの屋敷で泊まり込みで清十郎に教えてやってほしいのですがいいですか?」
「ええ。私は構わないわよ」
ポーラはにこやかに了承するとウェインは頷く
「というわけだから清十郎、君に自由な時間はないからね。そのつもりで」
ウェインのあまりに無体な話に清十郎は慌てる
「ウェ、ウェイン、それはあんまりじゃ!」
「あんまりじゃないよ!あんまりなのは僕の方!これから領主に話を通して隠す算段をしないといけないしそれでも絶対なにかしらは漏れるからそれの対策もしないといけない
もう睡眠不足で僕、倒れるよ?死んじゃうよ?いいの?
清十郎はそんな僕を笑いながら自分の好きなことをするような友達甲斐のないやつなの?」
半ば叫ぶように緑の髪を掻きむしり目を血走らせながら絶叫するウェインにいつもの冷静さはない清十郎はもう何も言えなくなった
それとは反対に妹のイリアは清丸ちゃんお菓子食べる?とものすごい笑顔でお菓子を清丸に食べさせている
清十郎は横目であ奴お菓子をたべるんじゃと思いながらウェインに返す言葉が見つからずただただ頭を下げるだけだった
その日の夜から早速ポーラの魔法講義が始まった
当然、ペンダント作りができるわけもない。寝るまで付きっ切りでポーラに手取り足取り教えて貰いながらなぜか寝る時に清十郎のベッドに入ってこようとするポーラを強制的に部屋から追い出したり朝は朝で朝食後からイリアとミーニャによるスパルタ教育が待っていた
文字の修練からこの世界の生活の様式、はては各国の国王や子息、主要な人物など事細かに叩きこまれていった。
これまでのようにダンスと食事マナーについてはポーラが身に着けていた為、順調に行うことができたがイリアがこれでもかと頬を膨らませ不機嫌オーラを纏いすさまじい緊張感の中で行われた為、ポーラの立派な柔らかい物を堪能する暇などまったくなく清十郎の精神は削られていった
1週間のスパルタ教育のおかげで清十郎は簡単な文字の読み書きやこの世界の生活様式、はては政治情勢まで身に着けることができた
魔法についてもポーラの教え方がいいのか魔力の細かい扱い方から基礎まで一通りできるようになった
ポーラ曰く魔術学院の初等科くらいならやって行けるかしらーだそうだ。まだまだ研鑽は必要だがもう死にかけるようなことはないらしい
その日のよるウェインの執務室に呼び出された清十郎は机を挟んでウェインと清十郎、世話役はロムアというメンバーで話をしている
「さて、清十郎、この1週間よくがんばったね」
その細い目は真っ赤に染まり目の下のくまがひどくはっきりとわかるような状態になったウェインは口を開く
「お主、大丈夫か?すごい顔つきになっておるし頬がこけておるぞ?」
心配する清十郎にウェインはカラカラと笑う
「あはは。誰のせいだと思う?だれのせいだと」
「す、すまぬ・・・」
「いや、いいんだよ。とりあえず僕の方もひと段落できたからね
それで清十郎、イリアからもポーラ殿からもとりあえず及第点をもらえたから君はこれから自由に過ごしてもらって構わないよ」
「ま、まことか」
嬉しそうな清十郎にウェインは頷くと話を続ける
「ああ。ただ明日は領主の館に向かうから一緒についてきてほしい」
「それは?」
「レギウスが君に例の報奨金の件もあるし誘拐未遂を防いだ礼を言いたいから直接、会いたいと言い出してね」
「ふむ・・・」
「もちろん、君に起きた一連のことは彼には伝えてあるからその事もあるけどね」
そこでウェインはロムアが淹れてくれた紅茶を口にする
「ああ、わかった。明日、お主について行けばいいな?」
「うん。明日一緒に行くからよろしくね。正直嫌がられてもこれは断りようのない事だから引き受けてくれてよかったよ」
ウェインはそこで初めて朗らかに笑い紅茶を飲み干した
(まぁ、お主のその顔を見れば儂のために骨を相当折っておるのはわかるしな)
清十郎はウェインの疲れ切った顔で笑う顔を見ながら感謝をするのだった
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