第44話 迷い猫
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月明りの下、アボルグの街の空に舞ういくつかの影と剣戟の音
男は姿勢よく立ちトレードマークのカイゼル髭を触りながら残り一人を鋭い目でみる
すでに10人ほど屠り敵は残り1人
「何者かと聞いても答えては・・・くれませんね!」
問いかけようとした瞬間、目にもとまらぬ速さでマント付きフードで隠された体が飛び込んでくると男の死角から伸びる白く輝く光、それを仰け反るようにして避けると反射的に蹴り飛ばす
短く呻く声をあげながら相手は転がり飛ばされていく
男は相手が転がり止まらない間に追いつくように飛び込んでいくと黒い服の裾から取り出した隠しナイフで相手の首元めがけて切りつける。あまりの速さに線にしかみえない斬撃を相手は紙一重で避けかろうじて首を斬られずに済んだが顔を隠していたマントが斬られ素顔が月明りの元、露わになる
「これは・・・お嬢さんでしたか。意外ですね」
男は再びカイゼル髭を姿勢よく立った状態で撫でると相手をよくよく観察する
薄茶の短めの髪に同じ色の瞳可愛い顔つきをした少女だ。その顔は悔し気に歪んでいる
「まさか、殺戮者がいるとは思わなかった・・・」
「ほう。私をご存じで?
昔のことですからすっかりその名を知る者はいないと思っていましたが・・・」
その瞬間、少女が逃げようと踵を返すのを男は見逃さなかった。一瞬、早く少女よりも動くとその細い首めがけてナイフを振るう
首筋に嫌な予感を感じた少女はなんとか体を捻り避けたが避けきれず脇腹に熱さを感じるが反射的に蹴り飛ばす
「ぐ・・・やりますな!」
男は瞬時に危険を感じ両手をクロスして蹴りを防ぐが蹴りの威力が凄まじく足元に線を作りながら後ろに飛ばされる。その隙に少女は街の闇に姿を消した
「これは、ウェイン様に叱られてしまいますね」
逃してしまった失態をクラシックフェードスタイルの白髪の髪を撫でつけながら嘆息するロムアだった
夜、屋敷の離れの中、清十郎は魔鉱石の塊を横に置きあらかた仕上がったペンダントを前に清十郎は腕を組み最後の仕上げの構想を練っていた
その脇には道具やチェーンをが揃って置いてある。これは昼間、屋敷の者に頼みイグリットの店で頼んでいた道具を取りに行ってもらったものだ
ペンダント上部にバチカンを作り鎖を通せるようにしあとは魔鉱石の取り付けを残すだけだ
清十郎は構想を練り終わるとカッと目を開き鏨を魔鉱石に宛がい一部を削り出した
削り出した魔鉱石をコンコンと優しく削って形を整えていく
やがて均一に多角模様となった魔鉱石をいろいろな角度から見て反射に問題ないことを確認すると最後にペンダントの一番下に魔鉱石をとめていく。細かく鏨を使い周りのミスリルを裏打ちしながら爪を作りそこに魔鉱石を掴むように爪で固定する
やがて作業を終わりバチカンにチェーンを通すと清十郎は息を吐いた
「終わった・・・完成じゃ」
チェーンを手に取り上に掲げて完成したものを眺めてみる
アーモンド形に形を整えたミスリルに施された梅の木から枝が伸びそこから咲く梅の花の数々を透かし彫りであしらいその下部には一粒の埋め込まれた青緑色の魔鉱石が揺らす度に光を反射して美しく輝く
見た瞬間、魔鉱石の煌めきに目を奪われるがその上に透かし彫りで彫られた精緻な梅の花
華美な魔鉱石を引き立てるようにひっそりと咲く梅の花だが控え目な美しさが目に留まり魔鉱石と徐々に引き立て役が入れ替わり最後は梅の花が際立つように作られた一品だ
清十郎は魔力を流し魔力の流れを確認するのも忘れない
(ふむ。ミスリルと反発せず上手くいっておるな)
さらに魔力を込めるとペンダント全体から深い霧のような輝きをもった白色をベースに淡い青緑色が混ざる光の奔流が流れ出す。清十郎は試しに詠唱せずに魔法をイメージし発動を意識する。すると清十郎を中心に球状の膜が出来上がった
(予定通り魔法との相性ばっちりじゃな)
この1週間でポーラからは魔法に詠唱は本当は必要ないのよ~と教わっていた
大切なのはイメージと発動。特にこのペンダントはイリアを守るためのもので今張っている膜もマジックバリアという魔法だ。あらゆる害意のある攻撃、人、物から守ってくれる。いわゆる護身用の魔法だ
「ふふふ!細工物とは言え儂はこの世界に来て初めて物が作れたんじゃー!」
最後は大声でガッツポーズを繰り出した時、玄関の方からドンッと物音がしたのに気づいた
(ふむ。気配は1つ弱っておるか・・・。猫でも縋ってきたか)
そんなことを思いながら扉を開けると目の前に少女が倒れこんできた
薄茶の髪が汗で額に張り付き顔が蒼白になっている。脇腹から流れる血をみた瞬間、清十郎はまずいと感じる
「これは、いかん!」
清十郎は怪我に手を当てると魔力を流し込んでいく。傷口をふさぐイメージをしっかりとし言葉を
紡ぐ
「ヒール」
清十郎が唱えると淡い水色の光とともに少女の傷口が塞がる
だが顔色が戻らず、歯からカチカチと音がなりだし全身が震えだす
「これは・・・血を失いすぎたか。儂の手には負えんな」
清十郎は少女を抱きかかえると奥の部屋のベッドに寝かせる
「さて、ポーラ殿を呼びに行くか。迷い猫よ、しばしの我慢じゃ。死ぬなよ」
清十郎は呟くように少女に語り掛けるとポーラを呼びに行った
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