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第39話 ポーラを救え

読んでいただきありがとうございます!

 下層区へ行く馬車の中、アンガスとイリアとミーニャは清十郎が抱く刀に注目していた


「光ってるな・・・」


「光っていますね」


「光ってます」


 先ほど馬車に乗り込んだ時、清十郎の抱く神々しく輝く刀に気づきみんなの注目を集めている


(これお主もう少し光を抑えぬか)


 清十郎が語り掛けるように心で思うと刀から不服の感情が伝わってきたがやがて不承不承といった感じで光が次第に収まり元の黒い打刀拵に戻った


「光が治まったな・・・」


「治まりましたね」


「治まってしまいました」


 呆気にとられるように3人はその出来事を見る。元の打刀拵に戻ったところで3人の視線が清十郎に集まる


「どういうことだ?」


 3人の意思を代表しアンガスが答える


「気のせいではないか?」


「「「そんなわけあるか!((ありません!))」」」


「あんなにピカピカ光り輝いてれば誰だってわかるわ!」


 アンガスの突っ込みにうんうんとイリアとミーニャも頷く


「とりあえずポーラ殿に、これについては尋ねるからしばし待ってくれ」


 清十郎は困惑気味に答えると刀に視線を向ける


(そなたのせいじゃぞ)


「あ、また光りました」


 不服と言わんばかりにピカピカと光る相棒に清十郎は嘆息するしかなかった




 そうこうしているうちに馬車は下層区についたらしく揺れが止まる


「イリア様、目的地につきました」


「ご苦労様、ダムル」


「もったいないお言葉です。では私は屋敷の方へ戻っております。お帰りの際はお知らせください」


 御者が扉を開けイリアが降り際に労いの言葉をかけるとダムルは丁寧にお辞儀し御者台に乗り込み馬車を走らせ去っていった


 4人が下りると目の前にはみなれた教会があった。マリカの胸像が4人を見下ろしている


 貴族家の馬車が止まったことで物珍しさから周囲の人々から視線を集めたがアンガスを見つけると人々はなんだアンガスかと散っていった。その様子をみて清十郎は笑う


「ははは。お主、人気がないのう」


「ちがう!みんな知った顔だからだろ!それよりも中にはいるぞ」


 そういうとアンガスはさっさと教会の中に入っていった。清十郎とイリアとミーニャの3人は軽く笑いあうとアンガスの後に続いた


 教会の中に入ると清十郎は違和感を覚えた。それはアンガスも同じようで部屋の真ん中に立って周りの様子をうかがっている


「あれ?おかしいな。子ども達がいねぇな、一人ぐらい居てもおかしくないんだが」


 アンガスが頭を掻きながら首を傾げる

 部屋の机の上には書きかけの紙の束や木のおもちゃなどが散乱しており椅子はしまわれずそのままの状態だ。今まで何かをやっていた痕跡がある


「ふむ、何も片付けてはおらぬな」


清十郎も不思議に思う。このような状態になっていれば、レリやシーラあたりが怒りそうなものだ。その時、奥の廊下から前髪の一部を左の耳の横で髪留めで纏めた少女がやってくる


「お、レリ、みんなはどこに行った?」


「兄さん!」


 レリはアンガスを見つけると小走りで走ってくると勢いそのままに抱き着きいきなり泣き出した。突然のことでわけがわからずアンガスはうろたえる


「ど、どうしたレリ?なにがあった?」


「ポーラ様が、ポーラ様が・・・」


 アンガスに抱き着きながら号泣するレリにアンガスの顔色が変わる

レリを引き離すと奥へ一目散に走っていく。清十郎もその場で泣き崩れるレリをイリアとミーニャに任せるとアンガスを追う


(まさか・・・)


 奥の廊下に入り、部屋が見えてくると部屋の前では子供たちが部屋を覗くようにしながらみんな泣いている。子供たちをかき分け部屋の中に入る

 薬草の匂いが漂う簡素な部屋の中、端のベッドを見下ろし茫然とするアンガスに抱き着きながらシーラが肩を震わせて泣いていた


(遅かったか・・・)


 清十郎はベッドで横たわるポーラの姿を見て思う。ポーラの顔はすでに青緑色と化し呼吸の様子がない。後から追って部屋に入ってきたイリアとミーニャもその光景を目の当たりにして言葉がない


「シーラ何があった」


「・・・」


「シーラ!」


 声をかけても反応しないシーラに苛立ち気にアンガスが問う。ようやく顔をあげたシーラは泣き腫らした目をアンガスにむけて小さな声で答える


「一昨日、あなたたちが帰った後、容態が急変してどんどん浸食がはじまったの」


「なんで知らせなかった!」


「ポーラ様が大丈夫だからとそう言われて・・・」


「今朝まで言葉をかわせていたんだけど、さっき様子を見に伺ったらもう顔にまで・・・」


そこでシーラはその場に座りこんで泣き始めた


「くそ!」


 アンガスは拳を強く握りこみすぎて掌に爪が食い込んで血が垂れてくる。悲しみを通り越し怒りに満ち満ちた顔が悪鬼のような形相を作る


(話を聞く限りついさっきか。マリカ様は儂ならなんとかできると申されておった。ならできるかもしれぬ)


 清十郎はそう考える黙って青緑の鉱石と化したポーラの傍らに椅子を引き寄せ座ると掛布をめくりその胸に手を置く


「清十郎、何をする気か知らんがやめろ」


「・・・」


「おい!もう婆さんは死んだんだ!」


 アンガスが怒りと悲しみでないまぜになった表情で清十郎の肩を掴む

 清十郎は肩を掴むアンガスの手を払うともう一度ポーラの胸に手を置いた。振り払われたアンガスは思わず清十郎に掴みかからんとしたところでミーニャとイリアが止めにはいる


「アンガス様!清十郎様になにか考えがあるようです!好きにさせてあげましょう!」


イリアとミーニャが必死に間に入りとめたことでアンガスが動きを止める


「・・・清十郎、婆さんを冒涜することだけは許さんからな」


 そういうとアンガスはその場で清十郎を睨みつける。清十郎は軽くうなずくと集中し始める

 目を閉じ心を落ち着かせ集中すると体に心の泉を巡らせるようにし魔素が見える状態にする。やがて体中を力がめぐる感覚を覚えると静かに目を開けた


(ふむ・・・これは)


 清十郎の目にはあれほど力強く立ち昇っていた青く濃い魔素が今はなく、ただ青緑の身体を横たえる

ポーラの姿があった


(マリカ様あなたを信じるぞ)


 清十郎は決意を固めると目を閉じ胸に置いた手からポーラの身体に自らの魔力を優しくそっと浸透させていくと冷えた鉄を打つようなはじかれる感覚がする

 徐々に徐々に熱を加え鉄を熱くするように意識して魔力を注ぎ込んでいくとやがて清十郎の手を介して

ポーラの状態が見えてくる


 魔力の流れが淀みすでにいたるところで固まっている状態だ。それを溶かすように魔力をゆっくりと慎重に注ぎ込んでいく


 緩やかだが鉄が溶けていくように固まった魔力が柔らかくなり溶けていく感触を得る。一番強く大きく固まっていた心臓あたりから全身へ巡らせるように体の隅々まで魔力を溶かしきると今度は魔力をゆっくりと動かしていく


 清十郎はやがてポーラの魔力が巡り始めるのを感じると違和感があるのに気づいた

 体の各所になぜだか魔力の淀みをつくるように渦を巻くところがある。さながら川の流れが滞り濁る場所を作るようだ

 このまま勢いよく魔力を回せば一時的にはよくなるだろうが根本的な解決にはならない。ポーラの淀みを作っている箇所を丹念に均一に魔力が流れるように整形していく


 徐々に疲れがたまってきているのを感じるが今やめるわけにはいかない


 丁寧に丁寧に数百にも及ぶ大小様々な渦を作る箇所を整形していく。やがて体の隅々まで魔力が行き届き増水した後の引き水の時のようなきれいな魔力の流れになった


 だが、勢いが強すぎる


 このままでは魔力が壁を突き破り飛び出してくるような感覚をおぼえた清十郎は余分な水を外に出すように促して自らの手を介しポーラの魔力を吸い出していく。異物を口の中に押し込まれるような感覚を受けながらも清十郎は魔力の吸い出しを続けていく


 やがてポーラの身体の魔力が一定量、静かに流れるのを感じると今度は自分の体の中から溶かした鉄を炉から取り出すように吸い出した魔力を外に放出しようとした時このままでは大変なことになると直感がささやいた


 外にはイリア達がいる。危険な目にあわせたくない清十郎は直感に従いそのまま放出するのではなく水減らしを意識しながら外に放出した魔力を一気に冷やして固めるようにする

 やがて外でなにやらゴロンと大きな音がしたが気にしないようにして最後にポーラと自らの手の間でつながっている魔力のラインを切って作業を終える


 作業を終えた瞬間、なにやらアンガス達が騒いでいたが清十郎は疲れのあまりにそれに反応することなくそのまま意識を失った


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