第36話 優しい日々
いつも読んでいただきありがとうございます!
今回は砂糖、吐き出し回です
真っ暗な意識の中、懐かしいようなとても優しい香りがしてくる。頭を優しく撫でると自分の手を愛おしそうに握ってくる。自分もその手を握り返す
(ああ、なんていい夢だ・・・)
清十郎は物心つく前に亡くなった母を思い出していた
握られた手を自分の方に引き寄せると抵抗なく清十郎に倒れてくる感覚がする。とても柔らかい優しい感覚が清十郎を包み込む
あまりの気持ちよさにそのまま抱き寄せて強く抱きしめる。すると柔らかい香りがより強く感じられまるで甘美な夢だ
(いつまでも覚めねばいいのう・・・)
とても柔らかい優しい感覚が清十郎を包み込む
(ああ、いい匂いだ)
さらに味わおうと自分の上にのっているそれを下にひっくり返し自分が上になる。より柔らかな感触が清十郎に甘美な刺激を与えてくれる
なぜだが抱きしめた何かが激しく動きまるで逃げようとしている気がする。清十郎は夢の中で母親と勘違いし逃げていく母親を逃がさまいと手足を絡める
(母上お逃げにならないでください!)
清十郎は必死に心の中で叫び逃げようとする夢の中の母親を逃がさまいと強く掻き抱く
「・・・・・さま!」
なにやら聞こえてくるがとても心地よく放したくない
「ははうえ・・・」
「・・・・ろうさま!」
やがて頭に衝撃が走り意識が浮上し目を覚ます
「清十郎様!やりすぎです!イリア様が・・・!」
最初に目に入ったのは見慣れたミーニャの姿だった
「ははうえ、そこに猫娘がいます」
寝ぼけ眼の清十郎は夢のままに口が滑る
「だーれが!猫娘ですか!寝ぼけてないではやくおきてください!」
もう一発スパーンと気持ちいい音とともに衝撃が頭に走り清十郎は完全に覚醒する
「ん?あれ?ミーニャ殿か?いかがいたした?」
「いかがいたしたじゃないですよ!した、した!」
ミーニャが顔を真っ赤にして指で下をさす
「下がいかがいたした・・した・・・」
清十郎が下をみると衣服をはだけ絹のような白く滑らかな肌が肩口まで露わになり胸元だけがかろうじて隠れている状態で黄金に輝くさらりとした髪が白いベッドのシーツの上で広がり顔から首まで真っ赤にしたイリアがいた
イリアは清十郎が手を握り抱きしめ胸に清十郎が顔をうずめていて逃げられないよう組み敷いている状態だ
「イ、イリア殿!?」
「せ、清十郎様・・・は、離してくださいませ・・・」
衣服がはだけ潤んだ瞳で清十郎に抱きしめられた状態で訴えるイリア
清十郎の中でなにかが切れる音がする
「イリア殿・・・」
その瞬間スパーン!と部屋中に響く音がする
「こらー!清十郎様しっかりしてくださいませ!それはまだ早い!」
ミーニャに頭をはたかれ慌てて跳び起きる清十郎
まだ頭がふらつきそのまま後ろに倒れベッドから転げ落ちる
「清十郎様!?」
慌ててミーニャ駆け寄るミーニャによって抱き起された清十郎が見た物はベッドの端に座り衣服と髪を真っ赤な顔で整えるイリアの姿だった
清十郎が目を覚ました時、すでに陽が傾き夕方になっており今日はそのままベッドで休むことになった。扉がノックされイリアとミーニャが夕食を運んでくる
「お加減はいかがですか?」
「うむ、まあまあじゃな」
イリアと清十郎はそれきり黙ってしまう。お互いに顔が赤いところを見ると先ほどの一件を引きずっているようだ。そんな二人の姿にミーニャが嘆息する
「2人ともお子様でないんですから・・・
ささ、イリア様もぼーっとせずに清十郎様に食べさせてあげてくださいませ」
「えっ?ミーニャが食べさせてくれるのではないの?」
ミーニャがイリアのその言葉に腰に手を当てて溜息を吐く
「イリア様・・・清十郎様の顔をご覧ください」
ミーニャに促されイリアが清十郎の顔を見るとハイライトがかかりなぜか影が薄くなっていた
「きゃあ!清十郎さましっかりしてくださいませ!」
「い、いいんじゃ。イリア殿、儂なぞほっといてくだされ・・・」
清十郎がかなり弱り切っている珍しい姿にイリアの母性が刺激される
「わ、わかりました!ふ、不肖ではございますが、わたくしがんばりますわ!」
顔を真っ赤にしてイリアがふんすっと胸を張る。そんなイリアを見てミーニャは溜息を吐くと料理を手渡す
深皿に入ったスープだ。まだ熱さが残り湯気が立っている。それを一口すくいイリアはふーふーっと冷ます
「あ、あーん」
イリアは自らの口をあけながら清十郎にあーんを促す
「あ、あーん・・・」
一口、含むと清十郎は顔を赤くしながらも嬉しそうに飲み込む
「ぷぷっ。ふたりとも初々しいですねー」
傍ではミーニャが笑っている
「「なっ」」
清十郎とイリアは二人同時に固まる
「あちらをご覧ください」
ミーニャは扉の方に向けて指をさす
するとそこからウェイン、アンガス、ロムア、ビットが顔をだし覗いていた
「おにいさまたち~~~~!!!」
「ははっ!お二人ともお似合いだよ~」
イリアが真っ赤にしながら扉の方へ歩いていくとウェインは捨て台詞を残して慌てて首をひっこめ、みんな逃げていった
その後、無事イリアの手によってすべて夕食を平らげた清十郎は部屋で一人満足しながらベッドで横になっていた
(幸せな世界にこれてよかったのう。マリカ様に感謝じゃ)
そんなことを思っていざ寝ようとした時に扉がノックされイリアだけが入ってきた。清十郎の心臓が高鳴る。イリアは部屋にはいるとベッドの脇に服の裾を引いて丁寧に座ると清十郎の顔をみて和やかに笑う
「ふふ。今日はなんだか心配したり恥ずかしかったりいろいろありましたわ」
「はは、そうじゃのう。こんなにも楽しい日々を送れるとは思わなかったな」
ひとしきり2人は笑うとイリアは心配そうな顔になる
「清十郎様のお母様はどうされたのですか?」
これは夢の独り言を聞かれたかなと思いながら清十郎は素直に答える
「儂が物心つく前に亡くなられたそうじゃ」
「そうでしたか・・・だから」
イリアは少し思案気になると何かを言いかけ言葉に出すのをやめた。ごまかすように笑うと清十郎に横になるように促す
「清十郎さまもうお休みにならないと体に障ります。お休みください」
「うむ。そうさせてもらおうかの」
清十郎も特に追及せず素直に横になる。するとイリアが清十郎の手を握る
「イ、イリア殿」
清十郎が慌てるとイリアは首を横に振ると微笑む
「今日は清十郎さまがお眠りになるまで私がそばについておりますわ」
「それは・・・」
「ふふ、子供は母親の言うことを聞かないとダメですよ」
「それは、言わないでくれ・・・」
イリアはイタズラ気に言うと清十郎は気恥ずかしさから顔を赤くし苦笑いを浮かべる
「さぁ、もうお休みください」
「うむ。ではお休みイリア殿・・・」
やがて静かな寝息が聞こえてきてもイリアは清十郎の手を優しく握り続けた
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