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第23話 作業場

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 その日の夕方、瞑想をしていた清十郎は扉の前のミーニャの気配を感じとり立ち上がる


「清十郎様、イグリット商店のエリ―様がお荷物をお届けに参れましたよ」


「うむ。すぐに参る」


 服を素早く直すと清十郎は扉を開けると控えていたミーニャに案内され玄関へと向かうと玄関のホールではエリーが3個ほどの木箱を置いて待っていた


「お、来たね。清十郎さん、荷物届けに来たけど、どこに持っていったらいいかい?」


 エリーは清十郎を見つけると手をあげて気さくに声をかける。今のエリーは繋ぎを着ており手には皮手袋をしている


「では、屋敷の離れに案内いたしますのでそちらにお願いします」


 清十郎の代わりにミーニャが答える


「はいよ。なら持っていくから案内頼むね」


 エリーはそういうと木箱を軽々と持ち上げると右肩に乗せた。清十郎も手伝おうと持ってみるがなかなかの重量がある


(これは米俵より重くないか?)


 清十郎は手伝おうと木箱を持ち上げてみたが意外な重さに驚く。小柄なエリーが軽々と持ち上げて見せたのもあるかもしれない


「あ、清十郎さん、無理しなくていいよ。あたしがやっておくから」


 エリーは振り向くと両手で木箱を抱える清十郎を見て微笑ましく笑う。はたから見ると中学生ぐらいの子供ががんばって木箱を抱えているようにしか見えない


「いや!おなごだけに任せるわけにはいかぬ。儂も鍛冶に携わる者ゆえこのような重さには慣れておる。気になされるな」


「そうかい?じゃあ、止めはしないけど怪我はするんじゃないよ」


 エリーはそういうとすたすたとミーニャについて歩いていく


(ど、どこにあのような力があるんじゃ)


 清十郎はそう思いながら木箱の重さに苦労しながらついて行く


 一旦、屋敷の裏口から出て裏庭をしばらく歩いたところにそこはあった。屋敷ほどの広さはないが街でみかけた一軒屋と同じくらいの大きさはありそうだ


「どうぞこの中においてください」


 扉をあけたミーニャがエリーと清十郎を促す。扉をくぐると何もない20畳ぐらいの空間が広がっていた


「じゃあ、これはここに置いておくね。残り一つだから清十郎さんはここにいて」


 エリーはさして興味がないのか木箱を置き次の木箱を取りに屋敷の方に歩いて行った

 清十郎はそういわれて離れを見ていく。20畳ほどの広さの部屋には滑らかな石が敷かれており暖炉が一つと開き窓がしっかりと設置され採光も悪くない。奥につづく廊下をすすむと途中に扉があり扉を開くとベッドが置かれた4畳ほどの床に木が敷かれた部屋があった。ひとしきり部屋を確認してからさらに奥に進むと裏口のある炊事場に突き当たった。炊事場には裏口ともう一つ扉があったので開くと小さいが石で作られた浴室があった


(屋敷に風呂場があったことにも驚いたがここにもあるのはありがたいな)


 そんなことを思いながら清十郎が見て回っているとミーニャが後ろから説明してくれる


「ここは先代様が住んでいたところだと伺っています。ウェイン様がご領主の時に豪華な屋敷は嫌ってこちらに住んでいたそうです」


「なるほどのう」


 清十郎はミーニャの説明に得心がいった。よくみれば建物に使われている材質もよく作りもしっかりしている


(これはありがたいな)


 そう清十郎が思ったところでエリーの声が玄関の方から聞こえてくる


「清十郎さん、来てくれるかい」


 玄関に行くとミーニャが木箱の一つを開けると布に包まれたものを差し出してくる


「例の加工したあれさ」


「これはありがたい」


 清十郎は受け取るとさっそく布を開く。開かれた布から薄緑色に光る薄い円盤が姿を現す


「うわぁ・・・きれいですね!」


「だろう?うちの旦那の腕の良ささね」


「たしかにイグリッド殿はいい仕事をしてくだされた」


 清十郎はミスリルの円盤を目線の高さにもっていき水平に構えると覗き込むようにして厚さのムラを確認するが一切見当たらなかった。清十郎はイグリッドの加工技術の高さに舌を巻く


「ううむ。見事なものじゃ。わずかな狂いもなく磨かれておる」


「よし、じゃあ。清十郎さん木箱の中身を全部確認しとくれるかい?」


 舌を巻く清十郎に気分をよくしたエリーは嬉しそうにしながら箱の蓋を開けていく。清十郎は中に入っていた研ぎ石やインゴット、道具の類を全てを確認した


「うむ。全部はいっておる。エリー殿、手間をかけて済まなかったのう」


「いいよ。これも仕事のうちさ。それにこれだけ買ってくれたお得意さんだしね。これからもよろしく頼むよ」


「こちらこそよろしく頼む。ところでエリー殿は力持ちじゃな」


 ひとしきりやり取りが終わったところで清十郎が気になったことを聞く


「ああ、あたしはドワーフ種だからね。旦那のイグリッドもそうさ。だからもともと力が強いんだよ」


「そうであったか」


 なるほどとうなずく清十郎にエリーは頷くと説明を続けてくれる


「うん、まぁ男は筋肉ダルマに髭あたまもモジャモジャだけど女は小柄なのが特徴さ。そのかわり頭の髪の毛はちりちりだけどね」


 でもとエリーは腰に手を当てると清十郎を軽くにらむ


「女の子に力持ちっていっちゃだめだよ。あたしは気にしないけど他の女の人は気をわるくしちゃうからね」


「そ、それはすまんかった」


 清十郎が謝るとすぐにエリーはにこやかな表情にもどる


「ま、さっきも言ったけどあたしは気にしないから大丈夫。じゃあ、あたしはもう行くからまた何か入用があったらよろしくね」


 そういうとエリーは部屋から颯爽と出て行った


「そういえば清十郎様は何をされるんですか?」


 エリーとのやり取りの間、何も言わず控えていたミーニャが清十郎に聞く


「うむ。そのうちわかる故内緒じゃ」


「ええ!私にちょっとくらい教えてくださいよ」


「だめじゃよ」


 内緒と言われ指先でちょっととジェスチャーを交えながら聞き縋ってくるミーニャに清十郎は苦笑いをしながら答える。がっくりとうなだれるミーニャをよそに清十郎は部屋の配置を考えていく


「よし、ミーニャ殿、夕食までに部屋をある程度使えるようにしたいから手伝ってくれ」


「へっ、今からですか?」


「うむ!思い立ったが吉日じゃからな!今からじゃ」


 ぽかんとするミーニャをよそに清十郎はさっそく動き出す。その後、侍女が夕食に呼びくるまでミーニャは清十郎に馬車馬のごとく手伝わされるのであった


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