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第14話 冒険者ギルド長バングリー

 アンガスは清十郎がついてくるのを確認すると眼鏡をはめた三つ編みの女性のところに行く


「ターニャ、こいつが清十郎だ」


 アンガスはターニャと呼んだ眼鏡をした緑の髪を三つ編みにした女性に清十郎を紹介した


「はじまして。私、冒険者ギルドで受付をしております

 ターニャと申します

 清十郎さまよろしくお願いします」


 ターニャは名乗るときれいにお辞儀をした


「ああ、儂は清十郎という

 よろしく頼む」


 清十郎も挨拶をしたところでアンガスが先をせかす


「じゃあ、ターニャ、爺のところまで案内を頼むぞ」


「はい。じゃあ私についてきてくださいね」


 ターニャはアンガスが爺と呼んだことには触れずどちらかというと清十郎に声をかけるようにしてカウンターテーブルの横にあった開き戸を開けるとこちらですと案内を始める。カウンターの裏に入ると階段がありその階段を上っていく。2階にあがると一番奥の部屋へと案内された


 コンコンとターニャがノックする


「ギルド長、ターニャです。アンガスさんたちをご案内いたしました」


「おう!はいってくれ!」


 部屋の中からだみ声だが覇気に満ちた低い響く声が聞こえてきた


 ターニャはその返事を聞くと扉を開く

 中に入るとそこには槍や長剣、短剣などずらりと武器が陳列されていたり壁にかけてあったりした。その数々の武器に目が奪われる


「これはなかなかのものじゃのう」


 清十郎は部屋を見渡し武器を見つけるとしげしげと眺める


「どうだ!それは俺が打ったものだ。なかなかのものだろう」


 清十郎が眺めていると後ろから声がかけられる

 そこには背丈は清十郎と同じぐらいだがはちきれんばかりの筋肉で横幅が清十郎の倍以上はある男が立っていた


「俺はここのギルド長をしているバングリーだ!ついでにここの隣で武器の工房も一緒に営んでいる!よろしくな!」


 バングリーはそう挨拶するとその手を差し出す


「儂は清十郎という。よろしく頼む」


 清十郎は挨拶に答えるとバングリーの手を握る


(む!これは相当な鍛冶に打ち込んで居る者の手じゃな!)


 清十郎が感心しているとバングリーはその太い首を傾げる


「お前さん、なんか不思議だな・・・

 剣を扱うと聞いていたが手が柔らかすぎる。しかし・・・うーむ」


 バングリーはそういうと考えこんでしまった


 それにしてもとバングリーが考え込んでるうちに清十郎はバングリーを改めてよくみる


(筋肉もすごいがその人相もすごいのう)


 バングリーの顔は片目を失ったのか左目に眼帯をはめたその顔に刻まれた皺の数をみると結構な年だと思われる。そして清十郎がなによりもすごいと思ったのは立派な口髭と顎髭につるりと輝く頭だ。そのすべてがそろった男がバングリーだった


(これは、アンガス以上に強面じゃな。どう見ても野盗か海賊の親玉にしかみえん)


 そう思っているとバングリーが顔をあげ清十郎を厳しく見る


「お前さん、今、俺を野盗の親玉かなにかとおもっただろう!」


「なぜ!わかる!」


 思わず叫ぶ清十郎にバングリーはニカリと笑うと清十郎の背中をたたく。かなりの力で思わず前につんのめる


「みんな、最初にそういうのさ!まぁ、こんな眼帯に髭と禿だ!もうなれた!

 そんなことより立ちっぱなしじゃえらいじゃろう。そこに座れ!」


 バングリーは豪快に笑いながら椅子に座るように促す。促されるまま清十郎たちは椅子に腰かける


「さて、自己紹介はすんだし早速用件にはいるか」


 ふーっと嘆息するとバングリーは真剣な面持ちになる


「まずは清十郎殿、そこにいる馬鹿者を救ってくれたことに礼を言いたい。ありがとう」


 頭をさげるバングリーに清十郎は首を振る


「頭をあげられよ、バングリー殿たまたま儂がそこにおっただけのこと礼を言われることでもない。気にされるな」


 呵々と笑う清十郎にバングリーは顔をあげると愉快そうに笑う


「がはは!なんだか、お前さんと話していると同じ年くらいの奴としゃべっているみたいだな。年はいくつだ」


「うーむ・・・この見た目じゃが一応86じゃ」


「む・・・それはどういうことだ。お前さんは明らかに人間種だろ?」


 バングリーは訳が分からないとばかりに腕を組んで首を捻る。と、そこでミーニャが口を開く


「バングリーさま、清十郎さまは異世界者でございます」


「なんと!」


「うむ・・・実は儂も訳が分からんのだが・・・」


 そこで今までの経緯をバングリーに説明する

 話し終わるまで腕を組みじっと話を聞いていたバングリーは話を聞き終わるとカッと目を見開いた


「と、なると俺らは爺友達じゃな!よしなら、お互い呼び捨てで行こう!あとお主の鍛冶をみてみたい!さっそく工房へいこう!」


 バングリーは立ち上がると清十郎の手を引き部屋をあとにしようとする


「まてまてまて!爺!おいこら!まだ話はおわってねーぞ!!」


「そんなもんあとじゃ!鍛冶と聞いては俺も黙ってはおられん!」


「バングリー落ち着くのじゃ!儂はどこにも逃げん!とりあえず鍛冶は儂も興味はあるがみな困るであろう」


「むっ!清十郎がそういうなら致し方あるまい!」


 清十郎がとめるとようやくバングリーは手を放し席に座り直す


「バングリーさま、今のお話は他言無用でございます。これはわが主からも申し付けられております」


 ミーニャがそういうとバングリーは頷く


「こんな話、他言できるわけがなかろう。だがターニャには話しておくぞ。あれに話しておかんとここの業務がすすまん」


「それは構いません。わが主からもバングリー殿とターニャ殿の助力を得るように申し付けられております」


「ふむ。ウェイン殿ならそういうか。一切承知した旨伝えておいてくれ」


「主にしかと伝えておきます」


 バングリーがそういうとミーニャは綺麗な所作でお辞儀をする


「おい、爺。そろそろ本題にはいろうぜ」


 アンガスがバングリーに声をかけるとそうだったといわんばかりにその頭をなでる


「がはは!つい話がそれちまったな!さて、それじゃ本題にはいるか」


 そういうとさっきまでのやり取りが嘘のように真剣な面持ちになる

 そこにはアボルグの街の冒険者ギルドを背負うギルド長としてのバングリーがいた


「アンガス、お前たちが持ち帰ってくれた情報は大変に意義のあるものだった。こちらで真偽不明となっていた竜の翼は全員死亡が確認できたがそれ以外にも行方不明になっていた者たちの死亡扱いも確定した」


「そうか・・・」


「でだ、お前たちが持ち帰った魔石を確認したところ交戦した魔物はブルーオーガとわかった」


「ブルーオーガ?聞いたことねーな」


 アンガスは首を傾げる。それを見てバングリーがうなずく


「オーガの変異種で肌が蒼の特徴だな。その肌は通常の武器では通用せんほど固く魔法耐性が非常に高い厄介な奴だ。そのくせ膂力は通常のオーガの2倍に知能も高いとくる。生きて帰れたのもの奇跡だ。清十郎に感謝しろよ」


「そんなもんと戦ってたのかよ・・・」


 バングリーの言葉にアンガスはガシガシと頭をかく


「よし、ターニャ、金庫から金を持ってきてくれ」


 バングリーの指示でターニャが部屋の片隅に置いてある金庫をあけると中から袋を運んでくる

 全部で6個の袋がテーブルの上に置かれる


「全部で金貨600枚だ。今回は素材の持ち帰りはないからな。オークションにかけられん分討伐料だけだ」


 バンクリーはそういうと持っていけとばかりの態度だ


「金貨600枚か・・・」


 素材をもし持ち帰っていたらどうなった?と聞きかけてアンガスはやめた。冒険者である以上たらればの話は次の依頼の時に死神を引き寄せる。それにあの時、もしオーガの運搬まで手を回していればトリビスとアルムは今頃いないだろう


「清十郎、俺たちは倒した1体分だけもらう。あとは全部お前のものだ」


「いや、それでは悪い。半分は持っていけ。それにアルムとトリビスはあの後、治療したのであろう?

 そうなると結構な金が要ったのではないか?」


 清十郎に図星をつかれてアンガスは渋面を作る


「それに儂は金にはこだわっておらん。儂としては全部やってもいいが、やると言ってもお主は受け取らんのだろう?

 ゆえに半分こじゃ」


「清十郎、悪い・・・」


「なーに、気にする出ない。お主の気持ちはしかともらった。若い者は遠慮するな」


 呵々と笑うと清十郎はバンクリーに目を向ける


「よし、ならそういうことだ!ところで清十郎、お前冒険者証を作っておけよ?」


「なぜじゃ?」


 清十郎が聞くとあとは任せたと言わんばかりにバンクリーはターニャに視線を向ける


「はい。ここからは私が説明いたします

 冒険者ギルドは各国すべてとつながっており支部も各国にあります。それだけに冒険者ギルドは銀行の役割も果たしているのですよ」


「銀行とな?」


「銀行とはお金を預けたり預けたものを引き出したりできる業務ですよ

 それに一時的にお金を貸し出しもしていたりするので各国に根付く冒険者ギルドがその役割を担っているのですよ、清十郎さま」


 と、銀行という言葉に聞き覚えがない清十郎に隣からミーニャが補足する

 その言葉に頷いて肯定するターニャ


「ふむ、ならその金を銀行とやらに預けたい」


「それがいいだろうな」


 バンクリーがうなずくとターニャが早速とばかりに道具を持ってくる

 細い針のついた台とカード型の青っぽい色のプレートをテーブルの上に置くと書類が挟まれたバインダーを清十郎に手渡す


「まず、そちらの書類に名前をお書きください

 文字がかけなければ代筆も致しますがお金がかかりますので代筆されるなら付き添いの方に書いてもらうといいですね」


 ターニャが仕事モードで話す


「うーむ・・・」


 清十郎は渡された紙を見るがミミズがのたまったような文字にしか見えない。どこに名前を書けばいいかわからない


「清十郎さまにまだ文字はお教えしておりませんので私が代筆致します」


 隣に座るミーニャはそういうと清十郎からバインダーを受け取る

 その間にとターニャは針のついた台とプレートを差し出してくる


「ミーニャ様がお書きになられている間にこちらの針で指をさしプレートに血を垂らしてください。それと刺した指で書類に血印を押していただくようにお願いします」


 ターニャに言われるまま清十郎は親指を針に差すとぷっくりと出てくる血を一滴プレートに垂らす

 するとプレートは輝きを放ちしばらくすると光は治まった。そのタイミングでミーニャが書類を差し出しここにもと清十郎の名前が書かれているところに指をさす


「こちらの書類のここに血の付いた指で血印を押してください」


 ミーニャに言われるがまま押すと書類も光り輝き、しばらくするとプレート同様に収まる


「これで、登録完了になります。お疲れさまでした」


 ターニャはそういうと書類を受け取り確認するとねぎらいの言葉と共にプレートを清十郎に渡す


 清十郎はプレートに目を落とすとなぜかプレートの字は読めた

 そこには清十郎の名前と所属アボルグと書かれていた


「注意事項ですが冒険者証を無くしたり破損した場合はすぐに届け出てください。その場合は金貨1枚で再発行致します。故意の破損や譲渡あるいは売買したことが判明した場合は登録の抹消及び国の終身奴隷としてずっと鉱山やあるいは戦争で奴隷部隊として従軍させられますので気を付けてください

 あとプレートには本人の魔力が登録されております。本人の魔力が消失するとプレートとの魔力ラインが消えます。プレートと書類も連動しておりますので保管している書類に死亡と出ます」


「ふむ、便利じゃのう」


 清十郎はターニャのプレートを光に照らしていろいろな角度から珍しそうに見ながら頷いた


「そういえば銀行といったか。あれはどのようにすればいいのじゃ?」


「基本的には受付で言ってもらえればカードをお預かり後、お金の預かりやお引き出しを致します

 残金については清十郎さま、プレートを触った状態で頭にお金の残高と思い浮かべてみてください」


 ターニャの言う通りに清十郎はカードをにぎってお金の残高を浮かべる

 すると金額0と頭の中に浮かんでくる


「なっ・・・」


 びっくりして集中を切らすと浮かんでいた文字は霧散した


「ふふ。驚かれましたか?」


「あぁ、これは驚いた。珍しいものじゃな」


「さして珍しいものではありませんよ

 あと、商人ギルド、魔術師ギルドでも同じシステムはありますのでいずれのギルドも登録すると銀行は冒険者ギルドでも他のギルドでも使えるようになります」


「ほぅ・・・それは便利じゃな」


「ただし、商人ギルドは商売の登録が必要になる上に年間で維持管理費が金貨1枚発生し魔術師ギルドは魔術の素養を持って加入が可能となりますので加入制限のハードルが厳しくまた年に1回研究発表の論文が必要となりますので当面は冒険者ギルドのみで加入しておくのが良いかと思います」


「なるほど、入ればそれぞれに役割があって面倒ということじゃな

 となれば儂は今のところは冒険者ギルドだけでよい」


「いまので大体の説明が終わりしたのでご質問はありますでしょうか?」


「特にはないのう」


「では、プレートを一旦、こちらにお渡しください。入金の手続きをしてきます」


「うむ。よろしく頼む」


「清十郎さま、町では現金での支払いが大半となっておりますので金貨10枚、大銀貨10枚、銅貨10枚は手元に残しておいたほうがよろしゅうございますよ」


 清十郎はプレートをターニャに手渡したところでミーニャが清十郎にやんわりと口を出す


「む、そうか。ならばターニャ殿そのようにとりはからってもらえるか」


「では、そのようにいたしますね」


 にこりとターニャは微笑むとアンガスに視線を向ける


「アンガスさんはどうします?」


「あぁ、俺も頼む。俺は全部入金でいいぞ」


 アンガスはそういうと腰鞄から冒険者証を取り出しターニャに手渡した


「わかりました。ではお二方の入金の手続きをしてきますね」


 ターニャはアンガスと清十郎のプレートを持って部屋から出て行った


「おい、爺・・・」


 ターニャが部屋から出て行ったのを見届けてからアンガスがジト目でバンクリーに声をかける


「あのプレートDランクだろう?

 いきなりDランクでも大丈夫なのか?」


「まぁ、清十郎を見慣れんやつらが知ったらうるさいだろうな」


「だったら・・・」


「それでもだ。ブルーオーガを単独で倒せるようなやつを最下級ランクからスタートさせられるか

 最下級ランクのFランクからスタートさせたとして今回のようにAランクの魔物を討伐してみろ。王都の冒険者ギルドはもちろんのこと間違いなく王族が動くぞ。そっちの方が面倒だ。ウェイン殿もわかっているから儂に話を通したのだろう」


 バンクリーがそういうとアンガスはその光景を思い浮かべたのだろう

 頭をかくと溜息を吐いた


「しかしだ、お前の言うこともわかる。そこでだ、清十郎お前に頼みがある」


 バンクリーは凄みのある笑いを浮かべ清十郎に言う


「今度、Bランク冒険者とたたかっちゃくれねえか」


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