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第12話 いざ街へ

 清十郎はあの後、ミーニャに食堂へ案内された

 食堂に入ると食事をおえたイリアが静かに紅茶を飲んでいた

 すでにビットは食べ終わったのか空になった椅子の前のテーブルをメイドが食器を片付けていた


「こ、これは、イリア殿」


 気まずげに声をかけるが

 イリアは何も言わず涼やかな顔で目を閉じ静かに紅茶を飲んでいる


(こ、こういうときはどうすればいいのじゃ・・・)


 女性の扱いに慣れていない清十郎は心の中で叫ぶ


「・・・」


「・・・」


 お互い沈黙の気まずい時間が流れる

 やがて昼食が運ばれてくると同じくらいにイリアは席を立つ


「清十郎さま、昼からはアンガスさまがご来訪されると聞きました。昼食を終えましたら応接室でお待ちください」


 去り際にイリアは眼を合わせず言うと清十郎が声をかける間もなく食堂を去っていった


「イリア殿にきらわれてしもうた、これはどうすればいいのじゃ・・・」


 暗い表情で落ち込む清十郎に救いの天使が声をかける


「ふー・・・しかたありませんね

 清十郎さまにアドバイスをして差し上げます!」


 その声に反応して振り向くとそこにはミーニャが腰に手をあてやれやれといった感じで

 立っていた


「そのアドバイスとやらはなんじゃ!」


「ちょ、ちょっと落ち着いてください」


 掴みかからんとする清十郎に焦るミーニャ


「アンガスから聞いたドラゴンとやらでも狩ってもってくればよいか!

 それとも魔王とやらが持つ神秘の宝玉でも奪って来ればよいか!」


「んな物騒なものいらねーですよ!

 なんですか!さっきからドラゴンやら魔物の王の宝玉やらすごいですけどそんなもの女の子は求めてねーですよ!」


 清十郎の必死さからでる物騒な言葉に思わず素でつっこむミーニャ


「こほん、女の子は贈り物がいいのです

 たしかに魔物の王の神秘の宝玉は宝石と聞こえるかもしれませんが

 あれは魔物の王の命その物で魔力が尋常じゃなく含まれていて普通の人が持つと乗っ取られる謂れがあるのですよ」


「む!そうなのか。そんなことアンガスは言うてはおらなんだな」


「なので、贈り物、それも清十郎さまが真心こめてご用意されたものが良いのです」


「なるほど。なれば、どんなものがいいか」


「細工物などどうですか?例えばこれは私が自分で買ったものですが・・・」


 とミーニャは自分の首にかけてある金のネックレスにつけられた飾りを胸から取り出し清十郎に見せる

 真ん中に羽をかたどりその付け根には紫の宝石らしきものがついている


「ほう、これは・・・」


「以前、イリア様と一緒に街の小物店で見つけて買ったものです」


「イリア様も小物がお好きですからきっと贈られると喜ばれますよ」


「うむ!ミーニャ殿ありがとう!

 これで光明が見えた!」


 解決法が見つかると人間、元気になる現金な生き物

 さっそくとばかり腹が鳴り清十郎は目の前の食事をたいらげるのだった


 食後、清十郎は応接室へ移動した

 イリアは同行しておらずミーニャが付き従っている


(ふーむ、細工物か・・・

 鍔を作っておったから鏨と金槌があれば最低限出来るがあとはヤスリが欲しいのう

 あと、研ぎ石もいるな。こやつの研ぎもしたいからな)


 清十郎はソファーに座りながら相棒を鞘から抜く

 白金に輝きを放ち刀文がきれいに波をうつ

 抜き身の刀を目先に持っていき歯を上に覗き込むように構えると左右に揺らしながら刃こぼれを確認する


 いきなり抜刀する清十郎に後ろに立っていたミーニャがビクッとなる


「せ、清十郎さま、武器を抜く時は一声かけてください

 びっくりするじゃありませんか」


「あ、これはすまぬ。考え事をしておったものでな」


 清十郎は一通り確認し満足すると納刀した

 そこで扉が叩かれる


「アンガス様がおいでになられました」


 ミーニャとは別のメイドが扉を開くと赤髪を逆立てた男が入ってきた

 先日とは違い軽鎧をつけておらず白の長シャツに麻でつくられたジャケット、皮のズボンを身に着けていた。軽鎧の時は違い鍛え抜かれた身体が服の上からでもわかる


「おう!清十郎、元気そうだな」


 アンガスは気さくに手をあげると清十郎の目の前に座る


「うむ、いろいろあったがおおむね元気じゃ」


「ん?なんかあったのか?目が死んでるぞ」


 アンガスは清十郎の顔を見ると眉間に皺寄せて覗き込んでくる


「これ、男にじろじろみられる趣味はないぞ」


「んー、気になるがまぁ、いいか」


 そう言ったところでミーニャが清十郎とアンガスの前に紅茶を差し出す


「おう。ミーニャありがとな

 ところでイリアはいないのか?」


 アンガスは部屋を見渡すとここにはいない人物をミーニャに尋ねる


「ふふ。乙女心は複雑なのですよ」


「なんじゃそりゃ」


 ミーニャは意味深げに清十郎を一瞥すると微笑んでアンガスに答える

 アンガスは訳がわからんと首を傾げる


「まぁ、ウェインからは自由にしていいって話だからな」


 と、アンガスは言うとミーニャを見る


「ミーニャ、今から清十郎を街に連れていく。帰りは送る」


「私も同行いたします。イリア様からその様に申し付けられておりますので」


「そうか、まぁ、構わんだろう。そっちの方が都合がいいかもしれんな」


 アンガスはミーニャの同行の申し出にうなずく


「清十郎、今から街にでるぞ」


「うむ。儂も欲しいものがあってな。ただ金がない」


「ああ、それはもちろん知っている

 その金を今から手に入れるための手続きに行くのさ」


 清十郎にアンガスはその強面を歪めてニカリと笑う


「なぁ・・・アンガスよ、お主が笑うときっと子供が逃げるぞ」


「ぷっ・・・」


「う、うるせい!気にしていること言うんじゃねーよ!

 良いから行くぞ!」


 アンガスは呆れる清十郎と笑いを堪えるミーニャを促すとさっさと部屋を出ていった

 清十郎とミーニャはあわててアンガスの後を追い3人は屋敷を後にした


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