第1部 第2章 重すぎるイケメン竜騎士団長 第3話 漆黒の長剣に蒼白い闘気が燃え上がる
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本作は、「想像力だけが取り柄の孤児少女が、持ち前のおしゃべりとマシンガントークが災いし、修道院を追放されてしまい、生き延びるために足を踏み入れた『死の森』で、古代の遺物『幻影の三面鏡』を拾う。それはなんと、思い描いた通りの姿へ変身できる神の道具だった!」という物語です。
お楽しみいただけますと幸いです!
「我が番よ、無事だったか……! 逢いたかった……!」
(いや感動の再会みたいに言ってるけど、昼間にすれ違ったばっかりですから!!)
押し寄せる魔物の群れを背に、ルシアン様はまるで背景に花でも背負っているかのような超絶イケメンの笑顔(ただし目は重たく全開)で私を見つめていた。
あまりの熱量に思わず数歩後ずさりしてしまうが、今はそんなことを言っている場合ではない。
「私への熱烈な視線は結構ですから、目の前の敵に集中してください! 街が大変なことになっています!」
「ふっ……俺を案じてくれるのか。優しいお方だ」
「話を聞いてーーーっ!?」
私の絶叫をかき消すように、十数匹の魔狼が一斉に牙を剥いて飛びかかってきた。
「チッ、野蛮な犬どもめ。俺と彼女の甘い時間を邪魔するな!」
ルシアン様の雰囲気が一変する。
先ほどの甘い熱量はどこへやら、一瞬で氷のように冷徹な戦鬼の顔へと切り替わった。漆黒の長剣に蒼白い闘気が燃え上がり、一閃。
ズバァァァンッ!!
目にも留まらぬ速度で放たれた斬撃波が、前列の魔狼数匹をまとめて一刀両断した。
(つ、強い……! やっぱりこの人、伊達に竜騎士団長やってないわ……!)
「我が番よ! 俺が前衛を張る! お前はその圧倒的な魔法で、後方の群れを叩いてくれ!」
「指示を出さないで! ……でも、分かったわ!」
私は胸の前で三面鏡の光を意識し、右手を高く掲げた。
頭の中に思い描くのは、修道院でよく妄想していた「邪悪な魔物を一網打尽にする聖なる雷」。
(いっけぇぇぇぇ! 豪快に吹き飛ばせーっ!!)
『——汝の想いを穿て』
私の叫びに応えるように、夜空から紫色の巨大な雷光が降り注いだ。
バチチチチチッ……ズドォォォォン!!
「ギャオオオオン!?」
地響きとともに、街の東門を埋め尽くしていた魔物の大群が、紫の雷撃に呑み込まれていく。圧倒的な破壊力。しかし、不思議なことに街の建物や巻き込まれそうだった騎士たちには一切の被害が出ていなかった。
「な……魔法の威力を完全にコントロールして、敵だけを殲滅しただと……!?」
周囲の騎士たちが開いた口が塞がらない様子で私を見上げている。
(えっ、そうなの!? 私、ただ『街を壊さないで』って祈っただけなんだけど!?)
変身時の潜在魔力が規格外すぎる。自分でも引くレベルの強さだ。
群れの大部分を吹き飛ばしたことで、戦況は一気にこちらへと傾いた。残った魔物たちも、ルシアン様率いる竜騎士団の手によって手際よく片付けられていく。
「ふぅ……なんとか、治まったわね」
安堵の息を漏らした瞬間、私は激しい目眩に襲われた。
(っ……!? なにこれ、急に頭がクラクラする……!)
変身中の規格外な魔法を連発したせいか、それともこの姿を維持する魔力が底をつきかけているのか。三面鏡が胸の奥で熱を持ち、姿を維持できなくなりそうになる。
(ヤバい……! ここで変身が解けたら、ルシアン様に正体がバレちゃう……!)
よろめく私の身体を、強い腕が優しく抱きとめた。
「大丈夫か!?」
目の前に、心底心配そうなルシアン様の顔があった。
彼の胸に抱きかかえられる形になり、至近距離で整いすぎた顔面と視線が交差する。
「無理をしたな……俺を助けるために、あれほどの魔法を……」
「ち、違……私、別にあなたを助けるために……っ」
言いかけた言葉は、三面鏡が発した小さな警告音(ピピッという甲高い音)によって途切れた。
左側の鏡の光が点滅し始める。変身の制限時間——タイムリミットだ!
「あ……ごめんなさい、私、行かなくちゃ!」
「待て! まだ名前も聞いていない! 傷ついた身体でどこへ行くつもりだ!?」
「放してくださいっ!」
私は残った力を振り絞り、ルシアン様の胸を押し開けて夜の路地裏へと走り出した。
「待ってくれ! 我が番ーーーっ!!」
背後から響く必死の叫び声を振り切り、私は暗闇の中に飛び込んだのだった。
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【作者より】
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