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襲撃

僕は、自分でも思っているが正義感が強い。だからこそ、S級冒険者として人を助けていた。


まあ、その結果今のように人が嫌いになったわけだけど。だからこそ、悲鳴は無視して反対側に進もうとしたが進まなかった。


その時の経験、行動が体に染み付いていたせいか、考えとは真逆に体が悲鳴の聞こえる方へと動き、口は詠唱を始めていた。


「欺瞞と誠実、現し世と彼岸。異なる事象が混ざりて転じよ。――虚無(ヴァニタス)


愛刀を異空間から取り出し、通常の人間では目で追いきれない速度で悲鳴の下へと向かった。





「キャー!」


なんでこんな事になってしまったんだろう…。私はただ、助けを呼びに行きたかっただけなのに。





私は、いつものように商会へと行き受付嬢の仕事をこなしていた。この仕事も始めてから2年が経ち、後輩に仕事を教えるような立場になっていた。


最近は魔物による襲撃も少なくなり、平和な時間が続いていると思っていた。魔族と人種、エルフ種などの味方陣営の戦いも沈静化しつつあり、冒険者や平民も全員が油断していた。


しかし、それが間違いだった。


「どんな状況にあっても油断するということはしてはならない」。


先代勇者の言葉だった。この都には魔王討伐の伝説がある。先代勇者は油断したことにより、パーティーメンバーを1人失い敵を討つように魔王を倒したという伝説がある。


そんな伝説があり、最初の数百年は守られていたみたいだけど、魔王の復活はここ数百年でなく、先代勇者の伝説も風化しつつあったことで、冒険者の中でその伝説を律儀に守っている者はもうほとんどいなかった。


だからこそ、そんな状況を見計らい、生き残っていた魔族と魔人がこの都に大量に攻めてきた。


冒険者たちは、魔族の襲撃に数瞬遅れて気がついたせいで、都の中に攻めてきた大量の魔族に大量の人が殺された。


そうして、商会にいた私達にも影響が遅れてやってきて、私の同僚もたくさん死んだ。


私は魔の森に行くことがよくあったので、そこに向かい助けを呼んできてくれ。と冒険者に頼まれたので魔の森へ急いだ。


「はぁ。はぁ。まだ魔の森の中盤だからもっと急がないと。」


周りを見ずに走っていたせいで目の前にいた化物に気がつかなかった。


「キャッ。ごめんなさい。急いで…て。」


ハイオーガ?なんでS級魔獣が魔の森に?この森にいるのは、高くてもB級魔獣までじゃ。


私の命はどうなってもいいけど、都のみんなを助けるためにも急がないといけないのに。これじゃ…。


「誰か。助けて!」


ハイオーガが手斧を振りかざし、体がバッサリときられると思い、瞼を閉じると、何秒立っても痛みがやってこなかった。


「なん…で?」


瞼を開くと、目の前には刀を携えた青年が佇んでいた。


「だ…れ?」


「来るつもりはなかったのに…。やっぱり、体に染み付いていた習慣か。」


よくわからない独り言を放つ青年に、攻撃を塞がれたことによりとてつもなく怒ったハイオーガが手斧を振り下ろした。


「危ない!」


青年が殺されそうになり、叫ぶと青年は一言言った。


「ハイオーガか?お前うるさい。」


〈抜刀・五式:(うつろ)


技名だろうか。虚と言い刀を横に薙ぐと、ハイオーガは斬られたことに気が付かないまま絶命した。断面はとても人の手によって斬られたものとは思えない美しさで、表面には黒くどこまでも広がり、飲み込まれてしまうような闇が広がっていた。


なんで?S級魔獣があんなにあっさりと。


「あ、あなた。何者なんですか?」


「チッ。人間か。知らん。僕に話しかけるな。」


そう、拒絶され森の奥に戻ろうとする青年に急いで話しかけた。


「あの。あの!すみません。私の住む都を助けてください。私はどうなってもいいですから。」


女の口からそう聞こえた。


信じられない。自分のことを第一ではなく、周り、相手のことを第一に考える人間などいるわけがない。人間は身勝手で傲慢だ。少しでも自分に利があればすぐにでも他人を裏切る。


だからこそ、前の世界で会得した技を使用した。


〈読心〉


そう唱え、女の心を覗いてみると自分のことなど一切考えていなかった。同僚、家族、冒険者、赤の他人。心のなかに自分のことを心配する思考が一切と言っていいほどなかった。


「なぜお前は自分のことを第一に考えない?戻ったら自分が殺されてしまうのは明確だろう?」


そう聞くと


「だって、周りの人が死んだら悲しいじゃないですか。それに、自分が死ぬよりも周りの人が死ぬほうが嫌ですし。」


「は?」


心底意味がわからなかった。自分が死ぬより周りの人が死ぬほうが嫌だ?なぜ自分を第一に考えていないんだ?普通の人間の思考ではない。


「お願いします。都を助けてください!」


昔の自分を見ているようで、心底吐き気がした。だが、女の目を見ると未だに瞳に希望が残っていた。


これは何を言っても諦めないだろうな。


「わかった。今回一度だけだ。そのかわり、今後一切僕に関わるな。」


「ありがとうございます!あぁ。私の名前はレイン・ヴァイスです。あなたは。」


「名前を教えるつもりはない。一つ教えるとしたら、元S級冒険者だ。」


そう言い放ち、都へと向かった。

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