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3/8

先に惚れたの38才の奈央子さん?

「ユージくんが帰ると、急に静かね。太陽が沈んだみたい。」

「酷いな。ぼくが息子で悪かったね。家の中が暗くて。」

「アキラもそこそこうるさいわ。でもね、ムダにうるさいのよ。」

「いやいやいや、ユージはムダに筋肉だし。」


お互いに顔を見合わせて声を上げて笑った。


アキラは女手一つでここまで育ててくれた母に、感謝している。

いつもありがとうと心の中で言っている。奈央子を幸せにしたい。幸せになってもらいたいと心底思っている。

感謝の方法がわからなかったり、それを言葉で現せなかったりというところが、普通の男子高校生。感謝の言葉が恥ずかしくて言えないのが、この年代の可愛いところである。


「かあさん、テレビの調子悪いよ」


「え?」


「ほら、画面の上のところにいくつか筋が入ってない?チラチラしてるし。」


「あらやだ。テレビを買うのは、想定外の出費だわ。」


「大丈夫。YouTube見るか、聖子ちゃん聴くから、ぼくは平気だよ」


アキラは昭和の聖子ちゃんにハマっている。パイナップル、ユートピアがお気に入りのアルバムだ。


そこへ、ユージからLINEが入る。

「アキラ!野球見てるか?ドラゴンズが逆転したぞ!」

「あー、ユージ。テレビの調子悪いんだよ。」

「そっか」


それきりLINEが来ない


しばらくして、ユージからのスマホが鳴る。

「アキラ、俺の家のテレビ、型が古くなったから、新しいの買うんだよ。よかったら貸すから使ってよ。」

「いいの?」

返事より先にスマホが切れた。 


「かあさん」

「ええ、聞いてたわ。良いのかしら?」


また、ユージからスマホ。

「アキラ、今度の休み、オフクロかオヤジかどちらかと届けにいくよ。」


「いいのか?」

返事より先にスマホが切れた。


「ユージ!落ち着け!」

奈央子がクスクス笑いながら、

「たぶん聞こえてないわよ」


「だよな。あの筋肉せっかちが。かあさん、今度の休み、テレビを持ってきてくれるらしいよ。ユージの父さんか母さんと一緒だって。」


「まあ」

テレビを拝借、いや恐らく譲り受ける身としては恐縮だか、何故か奈央子の心が弾む。


そして、奈央子の顔が晴れやかになった。


そう。お気づきだと思うが、ユージがいると家が明るく感じるのは、奈央子の心が真っ青な空のように晴れ上がるからであった。


ユージがテレビをあげるのではなく、貸すと言ってくれた彼なりの優しさが、奈央子にはたまらなく嬉しく愛おしく感じた。


最近、どんどん大人になる息子のアキラとその親友のユージ。ふたりの男子高校生の凄まじい成長の早さに目を細めながらも、ユージの笑顔が頭から離れなくなっている奈央子であった。

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