か、監督!すごい選手がいますよ!ノーマークでした!
ユージが長田監督に声をかけた。
「監督さん!ちょっと練習を見て行ってください。」
見せるような選手はいたかな?と長田監督は思った。
グランドに行く途中、米村監督と話していたら、中西が血相を変えて飛んできた。
「か、監督!すごい選手がいますよ!ノーマークの選手かと。」
目を疑った。140キロ後半は出ているのでは?まだコントロールは定まっていないが。
野茂さんのトルネード投法で投げている。
長田監督は驚いて、
「米村監督!彼は?大会では見かけていない。」
米村監督も悪い気はしない。
「彼は、3年の水島アキラ。うちのエースです!
彼は、元々ノーワインドアップでコントロールを重視した打たせて取るタイプの投手でした。
球速は130キロ代後半と悪くはなかった。
しかし、ユージに聞いた話ですが、お遊びで野茂さんの投げ方を真似していて。しっくりいくなということで、ワインドアップにに変えたのが大会前です。」
長田監督
「あわわわわ。
いや、漫画ではよくある話だが。
まさか、こんなにすんなりはまるなんて。
きっかけが他にはないと。
大会前にフォームを変えるなんて考えられません。」
米村監督
「ユージとマネージャーが私に進言したんです。ユージ説明してくれるか?」
ユージ
「はい。二人のマネージャーが野茂さんの投球フォームを真似するアキラの動画を撮って分析したら、ワインドアップにしたほうが、すんなりと体重移動ができていることに気が付いたんです。
筋トレで下半身を鍛えたこともあり、見事にハマりました。
しかし、トルネードはまだ未知数なので、ワインドアップで大会出場をしました。」
中西マネージャー
「トルネードはいつから?」
ユージ
「本当に最近です。大会が終わってからなので、1ヶ月ほど。」
長田監督
「あわわわ。
信じれない。」
中西マネジャー
「監督立会いの下、彼の話を聞いていいですか?」
米村監督
「もちろん。水島!ちょっとこっち。」
アキラ
「こんにちは!水島アキラです。ピッチャーやってます。正式には引退しましたが。」
長田監督
いい男だ。スタイルも、顔も。うらやましい。と思ったが口に出さなかった。
「水島君はプロ志望だしますか?」
アキラ
「出しません。
大学か社会人に行き、野球をやりたいですが、誘われるわけないので、どこか一般入試で大学に入って野球をやり、そこで這い上がりたいです。」
長田監督
「何?水島君、実は、井伊君がうちに来てくれるんだ。採用枠が2つあって、あとひとつ空いている。これという人材がいないので、今年は井伊君だけで行こうと思ったが、水島君、君は原石だ。是非話をさせてほしい。」
アキラ
「原石だなんて。ユージから監督と会うことは聞いていましたが、ぼくもですか?日本一のチームに入れるなら、ぼくからお願いします。」
米村監督
「ちょっと待ってください。ハハハハハ。長田監督フライングですハハハハ。川伊もまだ行くと笑」
長田監督
「そうだそうだ。
つい興奮して。順番を踏まないとな。
今度お母さんにも、来てもらって話せますか?9月20日に井伊君家族で会うのだが。」
アキラ
「たぶん母は大賛成してくれます。ユージと一緒の進路なら。」
中西マネジャー
「どうゆうこと?」
アキラ
「ぼくはユージと親友で。母と井伊家は家族ぐるみの付き合いです。」
すぐに米村監督が、奈央子と水島家に電話して、9月20日に奈央子と井伊家が一緒に面談することになった。
少しだけ見たアキラだが、これは大変な素材を見つけた、と長田は思った。
プロにもいける。這い上がりたいと言った。ハングリー精神もある。
川伊君、水島くんが来てくれたら、ウチのチームは劇的に変わる。
と思った長田監督だった。
努力を積み上げて苦労した人間が、人との出会いをきっかけに一気に開花する、その典型である。よくある話だ。
さて、ユージの井伊家に奈央子とアキラが飛んできた。
エヌエヌエスの長田監督たちとの面談を控え、奈央子が飛んできた。
奈央子
「美香さん!大変なことになったわ。アキラが野球?会社?いずれにしてもあんな大きないい会社に入社できるチャンスが来るなんて。」
奈央子は完全にお母さんになっている。
「ユーちゃんが、アキラを監督さんに紹介してくれたの?本当にありがとう。」
手を取ってユージにお礼を言う奈央子。
ユージ
「アキラががんばったから、当然だよ。」
と、シェイクしたプロテイン入りのカップを置いて、手を握り返す。
奈央子
「どうすればいいかしら?」
美香
「何もしなくていいわ。大事なのはアキラちゃんの気持ちだから。向こうも強制はしないから。いつも通りでいいのよ。」
奈央子
「そうなの?はー、緊張するわ。」
アキラ
「なんでかあさんが緊張するの?」
ハハハハハハ。
美香が、ご飯食べていきなさいとなった。
ピンポーン
美香が出た。
すると、
えー!なんでー!と大きな声。
まぁ、入ってください。ユージいるから、どうぞ!
見てたわよ。テレビ。優勝おめでとう。
ん?なんだ?
ひときわ大きないい男。
ユージ、アキラ
「小谷くん!」
「おー、こんにちは!会いたかったよ。肩は大丈夫?
あ、突然、すみません。いろいろ道を聞いて、勝手に来てしまいました。で、やっぱり道に迷ってしまって。ご飯時にすみません。」
あの知多医科大学付属高校のエース、小谷周平だ。
甲子園では、大活躍さ、優勝し、いまや愛知のいや全国のアイドルだ。
だが何故?
一同驚きと、歓声。
父賢一
「小谷君ですよね!どうしたんですか?突然」
小谷
「川伊くんの怪我がずっと心配で。」
賢一
「ありがとうございます。
見てましたよ。予選も、甲子園も。今日は時間ありますか?遅くならないように車で送るので、家でご飯を食べていけますか?」
気さくな男だ。川伊家の食事に応じた。何やら家に電話してる。
賢一と美香に、小谷の母親がやたら恐縮しているのが、電話越しにわかる。
女性達は、何やら落ち着かないというか、目が星になっている。
奈央子も目が星っぽくなっている。
ユージ
「ねえ、ぼくに会いに来たのに。」
と、奈央子にヤキモチやきながら、プロテインをゴクゴク飲んでいたら、突然キャーと大声。リコだ。
リコがうるさいので、場面を移す。
今、ユージと奈央子の関係は安定している。夏休み終わりに2人で行ったデート帰りの車中に再びもどる。
車中では、聖子ちゃんのアルバムの一曲、Presentが流れている。
彼から誕生日にプレゼントされた彼女の気持ちを綴っている曲。
イントロから彼女のワクワクする心情が伝わってくる。
♪リボンをほどいたら金の細いネックレス。安物さと照れた彼。嬉しかった。バイトしてると聞いてたわ。私のために無理させてごめんね。(作者解釈)
それを聞いたユーシは、
「ぼくは、まだ奈央ちゃんに何もプレゼント出来ないね。」
「いえ、たくさんプレゼントもらってるわ。
身の丈と言う言葉知ってるでしょ?
できる範囲でいいのよ。」
「うん。」
奈央子は、ユージがコツコツ努力を積み重ねている事を自他ともに認めていることを知っている。
それなのに、奈央子の言葉を素直に受け止めている。
その素直さが、ユージの強さなんだわと、思った。
2人は、告白などで、自分の気持ちを表現することなど一切なかったが、今回のデートで、両想いであることを確信した。
この状態を大事にするために、周りを心配させないようにすることも誓った。
それが、ふたりの結びつきを安定させていくことだろう。
話をもどして、小谷君が家に来た一部始終は、次の章で。
リコがなにかやらかさねば良いが?。




