カップルが結ばれる南京錠の伝説
今日、奈央子とユージは、知多半島をドライブデートだ。
そして、美浜ビーチランドの水族館を見ている。
奈央子は、ユージの人差し指を、親指と人差し指でつまみ、
二人並んで歩いてる。
突然、
「ユーちゃん、手、繋ごっか?」
ユージ
「うん」
二人手を繋いで歩き出した。
急にユージが、奈央子の手をユージの胸のところに持ってきた。
奈央子が、え?ユーちゃん何?ドキドキする奈央子。
すると、
「奈央ちゃん、手が大きいね」
まあ、女の人にそうゆうことを言ったらだめよと言おうと思ったら、
ユージ
「いいな。大きな手で。
ぼく、中学で野球始めたとき、ピッチャーやりたかったんだけど、手が小さいし、身体も小さいし、やせていたから、先生にセカンドやれって言われたんだ。
だから、アキラが羨ましかったし、特別な人しかピッチャーは出来ないのかなと思ったよ。
野球の神様は僕には味方していないって思って。
今度は、神様が僕から野球を奪うのかな?」
ユージは、静かに言った。
奈央子は、胸が締め付けられた。
試合ではあんなに輝いていたユージも野球のスタートはそんなことがあったんだ。
それから頑張ったんだね。並大抵な努力ではなかったはず。
奈央子は、
「ユーちゃん、野球の神様はいい人よ。そう、信じましょう。」
ユージ
「ん?」
奈央子
「え?」
ユージ
「ねえ、野球の神様って人?人間?
だっていい人っていうから。」
と声をあげて笑った。
奈央子も一緒に笑った。
それから、ずっと手を繋いで歩いた。
海鮮フライを食べて、イルカのショーを見た。
イルカに触れたり、ペンギンに触れたり。2人とも楽しかった。
「次どこに行く。」
「海行きたい。内海海岸へ行こうか?」
「いいわね。海の家で海風にあたりながらゆっくりしましょうか?」
内海海水浴場は、千鳥ヶ浜とも呼ばれ、広い砂浜で、夏は海の家・シャワーなど設備が充実している。
日はまだ高いが、広い砂浜が開放的で、二人を海岸へ誘った。
波が海岸に打ち寄せる音。
奈央ちゃん、野茂やって!
野茂?どうやるんだっけ?
こうだよ。
こう?
そうそう。
じゃあ、ぼくは立浪ね。野茂対立浪。
そういえば、アキラとよくやっていたわね。
奈央子と野球の真似事をするユージ。
しばらくして、立浪の真似をしていたユージが急に「ん~」と何かを考え始めた。真剣な顔で。
奈央子が驚いて、どうしたとユージを覗き込む。
「奈央ちゃん、ぼく復活出来るかも。」
「え?」
「立浪さんみたいに左で打つ練習する。右がなおればスイッチヒッターになれる。」
多くは語らなかったが、強い意志をかんじる。
「難しいことはわからないけど、野球の神様からお告げがあったの?」
「違うよ。ぼくの女神様。」
とにっこり笑った。
日も落ちてきた。奈央子とユージは、野間埼灯台のカフェにいる。
白い灯台と海の景色が美しい人気スポットである。夕方は特に雰囲気が良く、休憩に最適。砂浜もあり、軽く海辺で遊ぶこともできる。
「ユーちゃん、私ね、ちょっとしたことだけど報告があるの?」
「なになに?」
「今務めている会社ね、小さいけど業績がよくて。総合職が必要ということで、一般職から総合職に職種転換する募集があって、それに受かったの。」
「総合職?それって社長になれるの?」
「アハハ。まあ、可能性は高くなるかな?でも、お給料は上がるのよ。」
「わー、よかったよかった。」
「私ね、最初は家計の足しにと思ったの。でも、そう思うと、プレッシャーきつくて、最初の1年はダメだったの。つまらないし。
でもね、ユーちゃんやアキラ見ていたら、少しずつでも積み重ねればできるかなと思ったわ。少しずつね。そして、気がついたら、上手くいったの。近くにユージという良い見本がいたの。ありがとう。」
照れるユージ。
奈央子がそう言ってくれて嬉しかった。
日もだいぶ低くなってきた。
「ユーちゃん、ここから外に出て、灯台に行こうよ。」
「うん」
そこには、モニュメントがあり、南京錠をかけると、カップルは結ばれるという伝説がある。
「ユーちゃん、知ってた?」
「知らない」
奈央子は、少し間を置いて、
「どうする?」
「鍵かけたいかな。」
すごくかけたいのに、わざと控えめなふりをするユージ。
「わかったわ。でも、2人だけの秘密よ。いい?」
「うん。」
二人の秘密。ユージは嬉しかった。
奈央子がいままで以上に近く感じた。
時間も夕刻。夕陽がだいだい色に輝き、空が同じ色に染められる。海もキラキラと輝いている。船が遠くに見える。
「綺麗ね」
奈央子が夕陽に染まる空の海を見て思う。
ユージは明日からまた、夢に向かって走り出すだろう。
手が小さいと言われて、ピッチャーを取り上げられ、野球まで取り上げることは、野球の神様とはいえ、私が許さない。
そして、夕陽を見て何かを決意しているようなユージ。
奈央子がユージを意識するようになってから、少し大人びたように見えるユージ。
ホームランを豪快にかっ飛ばしても、相手を優しく思い遣るところ。
デリカシーの無い物言いで、笑わせるところ。
そして、野球の神様は、ぼくに味方しないのかな、と奈央子にだけ見せる切ない表情。
ユージの全てが愛おしい。
ユージ
「見ててね。これからも、ずっと野球をがんばる。野球が大好き。」
それを、聞いた奈央子は、思わずユージを抱きしめた。
この章はここまでです。読んでくれてありがとうございます。
次の章から
ユージもアキラも、人生の分かれ道に差し掛かります。
新ライバルの小谷くん、社会人野球チームの長田監督が登場します。
お楽しみに。




