アラフォー女子のプライド
前章で述べたように、2回戦の外海大学附属高校戦。
1回の表、ワンアウトランナー1、2塁で、打席はユージ。
いきなりの先制の3ランホームラン。
女子がざわつき始めた。
「川伊くん、可愛い。」
「カッコいい。」
「付き合っている人いるの?」などと。
今日も応援に来ている奈央子の耳に届いている。
何か、面白くない。やきもち?
1回の裏は、外海大学附属高校の攻撃。
中野高校の先発は、左のエース、3年生の早川だ。
早川はテンポよく投げる。ポンポンと投げて相手のこの回の攻撃を0点に抑えた。
2回以降の中野高校の攻撃は、6回までランナーを出すが、後が続かない。
相手のピッチャーが、ユージのホームランで目を覚まし、どんどん攻めてくる。
6回を終え、3対0で中野高校リード。
7回表、中野高校の攻撃。相手ピッチャーの疲れが見えた所で、中野高校が襲いかかる。
相手も1点もやらないとばかりに、必死に守る。そして、2アウト満塁。
キャー、と黄色い声援。
「川伊くーーーーん!」
ユージは、いつも通りバッターボックスに入り、審判、ピッチャーとキャッチーに軽く頭を下げる。
足場を均すでもなく、そのまま静かに構える。
静かだ。ユージの耳には何も入らない。
スーと息を吸い、フーと息を吐く。
来た!
バットを振る、と言うより、ボールを潰しにかかる。そして、大きくフォロースルーをとる。
キン!快音を残して、ボールはスタンドへ。
キャー
川伊くーーん!
カッコいいーーー
応援団席は、もう大騒ぎ。皆立ち上がり、手を取り合い大騒ぎだ。
ダイヤモンドを駆け抜ける。
ガッツポーズも笑顔もない。相手ピッチャーへの最大限の敬意である。
ベンチに帰ってきたが、ハイタッチなどのパフォーマンスも笑顔もなし。味方を応援する声のみ。
ベンチに座り、相手を見る。
相手ピッチャーがユージを見る。
目が合った。
相手ピッチャーは、帽子のツバに手をやった。
ユージも返す。
お互いに軽くお辞儀をしたようにみえたが、それは本人同士にしかわからない。
それを見ていた奈央子は、
「ユージくん、小さいときから、かわらないわ。いつも、相手を思いやり、痛みがわかるのね。」
ベンチのユージの姿は見えないが、奈央子にはわかる。
キャー
川伊くーーん!
カッコいいーーー
余韻がつづく。
この子たち、みんな、私のライバルになるのね。
若さには到底敵わない。
でも、私負けない。
背が高いなんて、気にしない。
「私、ユージに好きになってもらう自分になるわ!」
ユージを誰にも渡したくない!
と誓う奈央子であった。
試合は、7対0で、中野高校の7回コールド勝ち。ユージは3安打2ホームラン7打点。チームの全打点をホームランでたたき出した。
3回戦は、7月11日。ピッチャーは、いつもはファーストを守る中井。アキラも5番ファーストに入り臨戦態勢。いつでもリリーフが出来るように控える。
相手は、古城東高校となる。過去、ベストエイト入りした経験もある。
さあ、これから強豪も出てくるぞ。
頑張れ、ユージ、アキラ。そして、奈央子。
次回は3回戦、お楽しみに。
次回投稿
2026年03月25日 19時30分
ep.12 名門社会人野球チーム監督が探し当てた才能




