親友のかあさんを好きなのが父にバレた?
小村第2高校との試合は、5回、10対0で、ユージ達のコールド勝ちで幕を閉めた。
先発の2年生、竹之内は5回とは言え、0点に抑え、打線が爆発し、10点を取った。
投手力を温存する事が出来たし、これ以上にないスタートを切れた。
ユージは、2安打、1四球、3打点だった。
次の試合は、7月4日。外海大附属高校だ。
陸上部が全国区。特に駅伝が強い。他はあまり強くないが、油断は禁物。
ユージが家に帰って来た。
「初勝利おめでとう。」
「ありがとう!」ユージが笑顔。
「ユージ、今日の試合中の態度は、立派だった。」と、父の賢一が褒めた。
「特に、点を取った後、ガッツポーズをしたり、喜びを表に出さないところは、相手を尊重する姿勢として、実に見事だったね。」
「うん。」とユージは、ペットボトルのミネラルウォーターをうれしそうに飲んだ。皆も同じペットボトルから、注いで飲みだした。
「そう言えば、奈央子さん、来てたよ。」
「ホント?」
「そうなんだよ。ユージの打席を祈るように見てたよ。」
「へー。そうなんだね。」冷静を装うユージ。
「奈央子さん、ユージのこと、気になっているんじゃないかな?」
「パパ、まさか」冷静を装うユージ。
「好きなのか?」
親子揃って、デリカシーがない。
「ブーっ、」
美香は、ミネラルウォーターを吹きそうになった。
同時にリコは、「ゲホゲホッ」と、なにやらむせた?
「ところで、ユージ。」
「何?パパ?」
「肩を気にしてる感じだったが。」
「自分では気がつかないけど。」
「そうか。ならいいが、オーバーワークは禁物だぞ。休むのもトレーニングの内だから。」
「ありがとう、パパ。わかったよ」
父とユージは、それぞれの部屋に行った。
「パパ、ユージの気持ち、気がついたわね。」
「ええ、奈央子さん、昔からわかりやすいもの。可愛いわね。フフッ」
「いやいや、ママがあそこでコントみたいにむせるからよ。」
「あら、あなた、鼻血を出してたわよ。あれじゃ、いくらパパでも、すぐわかるわよ。」
「トマトジュースなんですけど。」
実にわかりやすい家族である。
次の日。
2回戦まで、まだ日にちがある。
アキラは調整を兼ねて、ワインドアップの練習をしている。
キャッチーでキャプテンの松井は、受けながら、手応えを感じているようだ。
「アキラ、どう?」
「いい感じだが、リズムに乗れないというか。」
「そうかい?いい感じだよ。球も伸びて来る感じだよ。アキラは順調に行けば、7月16日の知多大附属で先発だな。」
「アキラくん、球数抑えてね。あと、3球よ。」
「わかったよ、カナ。」
「もうやめてもいいけど、折角だから。」
アキラは、中学2年生の春に野球を辞めた。練習嫌いだから、先輩と折り合いがつかなかったからなどと周りから言われたが、家庭事情を考え、彼なりに出した結論が、野球を辞めるだった。
ユージは戻ろうと言ってくれたが、ない袖は振れない。
時間のある限り、ユージとキャッチボールをしたり、ノックをしたり。
周りからは遊んでいるようにしか見えないが、それでもアキラは楽しかった。ユージには感謝している。
最後の2球でふと思った。
野茂さんみたいにトルネードで投げてみよう。
投げた。ガシャン。松井の遥か上を超えて凄い勢いで、金網にぶつかった。
「おいおい、真面目にやれよ!」
立ち尽くすアキラ。
7月4 日、2回戦。
今日は学校が休日でもあり、生徒の応援が多い。対戦相手は、外海大学附属高校。
1回の表、今日は先攻だ。
いきなりワンアウトでランナー1、2塁。
打席はユージ。静かに打席に立っていた。
2球ボールを見送って、3球目、グワッと振り抜いて、キンと甲高い音を残し、左中間に飛び込む先制の3ランホームラン。
どっと歓声があがる。
川伊家、奈央子もいる。
皆、立ち上がった。嬉しそうだ。
ユージが、ホームに戻ってきた。
観客席がザワザワしている。
「ねえ、川伊くん、可愛くない?」
「ヤバい。」
「男子が筋肉だらけとか言ってるけど、どちらかと言えば、細マッチョよね。」
「顔とのギャップが萌える。」
「そう言えば、さっきから、川伊くんにちょっかい出してるマネージャーいたわよね。」
リコのことである。
「なに、あの子。川伊くんと付き合ってるの?」
「信じられない。」
「なんとかならないの?」
「え?知らないの?川伊くんの妹よ。」
「えーーーーーー!!!!」
「リコちゃん、可愛い。仲良くしたい!何組?」
妹とわかった途端、この差はなんだ。
ユージのモテ期、到来か?
今回はこの辺で。
奈央子!女子高生にまけるなよ。




