京大生はおことわり(6・終)
「というわけで、我は岩手達朗の子をみごもった。妻子を養うのには収入がいる。そこで、我は達朗を焚きつけて地上げの総元締めに電話をかけさせた。刺木紘一――のちの我が祖父じゃ」
「???」
頭が混乱する。何を言っているのだ、この子は。
「我は刺木紘一に善行功徳をすすめた。死ぬ前に今世の悪因縁を少しでも減らせ、さすれば少しは寿命が延びるじゃろうとな。夢を通じて心をゆさぶったり、幻覚を見せたりといろいろやったあげく、達朗は刺木家につかえることとなった。そして、赤子となった我は刺木康造の娘として養子に迎えられた」
「お産をして一度亡くなり、自分の娘として転生した、ってことね」とメリーさん。
「え!? メリーさんも、それを繰り返しているの?」
「あたしはそういう面倒くさいことはしない。この百年以上をずっと生きているのー」
いやもう、この会話には右原さんだけが目を丸くしていた。
「えっと、梅雨の井姫があらわれたのは地上げの総元締めに祟るのが目的だったんじゃなかったっけ?」
「今まで通りミソラちゃんでいいぞ。……いやー、一宿一飯の恩義があると、ガチで祟るわけにもいかないんよ。ほら、牛頭天王――もとい、武塔大神が一夜の宿を求めたときに、蘇民将来が歓待して宿を提供して疫病から守られたってアレよ。せいぜいが財産を奪ってそれで許してやったわ、がっはっはっ」
なんか最初に会った頃の性格が復活していた。
私は、ずっとたずねたかったことをたずねた。
「ところで。お兄さん二人って冤罪よね」
「あ、ああ。実を言うとちょっと大げさに言いすぎてしまったのだ。本家にいたら病の元になるかもしれんので、図書室にこもる言い訳にな。まあ、子供のいたずら程度のことはあったけどな。けど、父があそこまで気にしていたとは思わなんだ。まあよかろう。我は祈りをかなえただけなのだから」
私は、怪異の恐ろしさが改めて身に染みたのだった。




