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M属性 ~嗚呼、あなたに踏まれたい~  作者: 高谷正弘
第二章 港湾都市サーガラ
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五十六夜 剣闘士競技会・前編

「ノルブリンカ円形闘技場」に、楽隊の角笛(ツィンク)と太鼓が鳴り響く。

 空を見上げると光の粒が舞う快晴。白壁上にサンフラワー色の旗が立ち、谷間の風にはためいている。

 ひときわ大きな角笛の調べに合わせ、闘技場の大扉が開いていく。

 待ちわびた多くの観衆から盛大な拍手が巻き起こった。否が応でも気持ちが盛り上がる瞬間――そして誰もが度肝を抜かれる。

 統一された半球兜(サーブレア)胸甲(ブレストプレート)が銀の波を立て襲ったのだ。

 兵士数十人が二列縦隊で扉から現れ、左右にわかれて白壁前に立つ。見事に規律の整った動きと、日に輝く甲冑に唖然とため息がもれた。

「刀礼――っ!」

 隊長格の号令で一斉に剣を抜き胸元で掲げる。

 動作と響きが完全にシンクロし、呼応する姿はそれだけで見応えがあった。

「おお……おおおお――――~…っっ!!!」

 遅れてさらなる拍手と大歓声が重なり、振動で空気が割れる。

 見ていたアマゾネスの少女が頬を染め、憧れのまなざしを向けていた。


「セツとバンダ、そして鍛冶職人の皆さん……本当にお疲れさまでした」

 この時代、職業兵士のメイン装備はチェインメイルである。

 革鎧(ブリガンダイン)――裏地に金属片を張り強度を高めた防具を重ね着し、いっそう防御力を高める者もいた。

 革鎧は騎士が愛用する、胸部甲冑コート・オブ・プレートの発展形ともいえる。

 しかしぼくは防御の重要性を力説して、一五世紀の主流となる板金製の胸甲――ブレストプレートを強く推奨したのだ。

 厚さと丸みをおびた装甲は、銃弾すら受け流すことが可能。

 兵士にとっては百年は早い装備より、ノルブリンカがまとうプレートアーマーを連想させるのか大好評だった。

 以後この胸甲は、アマゾネスを象徴する防具となる。

「慣れぬ甲冑を不休で仕上げた成果に思いを馳せ、今は安らかにお休みください」


「走らないでくださ――い! 一騎駆けは騎士の分野で――す!」

「戦場で生き残るには、転ばない! 密集する! (ケツ)の穴を閉める!」

 より観戦しやすい前方の席を確保しようと、走り出す客の前に紐が張られた。

 落ちつくようにと声がかかっている。各所に配した兵士とは打ち合わせており、確実に一時停止させていた。

「慌てず焦らず」――ケガ人でも出たら大問題となる。

 兵士は若い女性であり、本日の競技参加者でもあった。立ちならぶ兵士も誘導する兵士も、よく見れば全員に古傷生傷がある現役の戦士。

 つい目を見張り、頬を染めながら誘導に従う者もいる。

 かける声ほほえむ顔に、覇気をまとって感じるのだ。本来ならば彼女たちから、街を警備する数名が出る予定だった。

 しかし市民たちから、競技会の間は自分らが街を見回ると声が挙がる。

「せっかくのハレ舞台を、邪魔しちゃ悪いわよ」

 皆も基本訓練はしているし、各住居に武器も常備していた。なにより一年通して鍛錬している兵士を知っているのだ。

 まかせてほしいと笑いながら胸をたたく。

 ノルブリンカが了承し、ぼくは念のため角笛を持つべきと提案。イダム卿の町の教訓から、市民の避難訓練はすでに実地している。

「まったくもう、婿さんは本当に心配性だねえ!」

 おばさんの声に爆笑が重なり、ぼくだけが笑えない状況にもある意味慣れた。


 スケジュールは午前と午後にわかれる。

 午前中は予選。

 約百人の兵士が三十数人づつ三組に別けられていた。組ごとに乱戦(メレ)をおこない、生き残り上位二名が代表選手となる。

 お昼休憩のあと午後に本戦。

 代表選手六名が一騎打ち(ジョスト)の勝ち抜き戦をし、優勝者を決めるのだ。

 ――1DAYトーナメントである。

 武器は木剣や木槍など得意な得物、そして盾とそろいの防具。

 サーブレアやブレストプレート越しであっても、有効打を受けたら退場。武器を手放し、手を上げて素早く壁際に下がる。

 刃を潰した実剣ではなく、一般観客向けにかなり優しくしているそうだ。

「だけど武器にも布を巻くなどして、安全対策をすべきではないでしょうか?」

 防具は鍛冶職人の皆さんに無理をお願いし、そろえていた。木剣でも骨折などの重傷や、重体となる危険は十分にある。

 ここにソプラノボイスの美少年、トリコナーはいないのだ。

「……戦場で斬られたら、死ぬぞ?」

 誰の言葉だったか覚えていない、不思議そうな顔で問われ愕然とした。

 剣を持つとは、斬る斬られる世界に身をおく意思決定にほかならない。死が身近にある時代、死を……受け入れなければならない時代。

「どうしても、覚悟の違いが浮き彫りになるなあ」


 約一時間をかけ、どうにか観客が闘技場に収まる。

 やはり座席は足りず、階段にシーツを敷いて座る客もいた。幸い事前通達はしていたので大きな混乱はない。

 白壁に整列していた兵士が試合場に入り、大扉が閉められる。

 観客を誘導していた兵士も試合場に降りた。完璧な正方形に整列し、それだけで歓声があがっている。

 サンガ伯爵が現われ、一般席の中ほどに設けた貴賓席に着く。

 手狭だがこれ以上広い席の確保は難しかった。気がついた領民から歓声がわき、手を振る姿はさすが板についている。

「まあ一般席とはいっても、周囲は三名の因果伯が固めているんだ。この闘技場で貴賓席(ここ)ほど安全な場所はないなあ」

 ジャーラフだけいつの間にかいない、きっと周辺を監視してくれているのだ。

 プリンスがサンガ伯爵以上に手を振り、やたら受けていた。

「お……おお――――~…」

 次いで領主のノルブリンカが貴賓席に現れ、観客の視線と意識が吸いつく。

 褐色の肌にベリーショートの白い髪、月桂冠は変わらずだが――罪深い襟ぐりで胸元を晒す、サンフラワー色のコタルディが風に舞い広がった。

 剣と盾を持てば、戦いの女神が顕現して感じられよう。

 家政婦長が必死に薦めた苦労が報われる出で立ちだ。サーガラ領領主である父に挨拶する姿まで堂に入り、深い感嘆の息がもれる。

 チュニック姿しか見ていなかったので、ぼくも口を開け魅入っていた。

 ため息が闘技場を包み、次第に静寂へと変わる。

 戦士の女神は、それが当然とばかりに一拍おく。神託を待ち望む兵士を見下ろし――大声で宣言した。


「これより――っ! アマゾネス剣闘士競技会を開催するっ!!」


「うおおおおお――――~っっ!!!」

 兵士たちが剣と盾を打ち鳴らし、あらんかぎりの大声で叫ぶ。負けず観客も拍手と大歓声を送り、角笛(ツィンク)がそろって吹き鳴らされた。

 嵐が巻き起こり、お祭りが始まるのだ。

 最初は右の列の三十数人が残り、ほかは準備に下がる。代表者が一歩前に出て、顔の傷を勲章さながらに見せびらかした。

「我らが命を、我らが姐さんに捧げるっ!!」

 木剣を掲げ宣言すると、後ろの兵士も同様に掲げ宣誓する。

我らが姐さんにっ(ラウレア――ッ)!!」

 開始の合図である角笛が鳴り、全員が四方に散って油断のない視線が飛ぶ。

 三十数人の組み合わせは直前に発表された。事前通達してしまえば、メンバーで協議される配慮からだ。

 乱戦(メレ)ではなく、団体戦(トゥルネイ)になってしまう。

 しかし何年もいっしょに稽古している間柄、誰が強いかすでに知れ渡っている。

 代表者として宣誓をした、顔に傷のある兵士を取り囲んでいた。強い者を余力のあるうちに倒さないと、到底生き残りは見こめない。

「どうしたい、睨みあっても未来は開かないよ!」

 顔に傷のある兵士が挑発しても、囲んだほうは汗を流し踏みこめないでいる。

 どうやら彼女はかなり強者のようだ。

「あっほら、後ろからきた!」

 剣で差された兵士と、周囲の数人が釣られて後ろを向いてしまう。

「おらあああ――っ!!」

「ぐっ!?」

 強者ゆえにできるハッタリ、顔に傷のある兵士は盾ごと突進して道を切り開く。

 いたるところで混戦と、激戦がくり広がられていた。

 観ていると好みの兵士が出てくる。強い兵士は次々と倒していくので、見応えがあり応援してると楽しい

 だけどぼくは別の兵士に注目していた。

 ひときわ背が低いせいか、スキを突く戦い方をしている。わざと転んで攪乱し、追われると乱戦の場に飛びこみ乗りきっていた。

「そっちはダメだっ! 横に避け……よぉっし!」

 数人に囲まれると一人の後ろについて逃げ延びる。観客席からは情勢がわかり、握った拳を振りあげて応援した。

 M属性の予感とばかりに声をかけたけど、疲労で足が止まりついに倒される。

 悔し泣きしている姿に、できるかぎりの拍手を送った。打ち倒した者に歓声を、手を上げ壁際に下がる者に激励を。

 緊急な治療を必要とする者は即座に裏方に運ばれ、医師に診てもらう段取り。

「一応裏方のぼくとしては、応援に集中してはいけないんだけど……」

「ノルブリンカさまの横に座っていてください、誰が見てもそうとわかるように」

 家政婦長に勧められ感謝し甘えさせてもらう、言葉の裏は考えないことにする。


「ええ……っ?」

「う……っそだろぉ!?」

 兵士間に動揺とも、驚きともとれるざわめきが起こった。

 貫禄ある兵士が武器を放棄し、手を上げたのだ。悔しさと称賛のこもった瞳を、長い髪を揺らす若い兵士に向けている。

 どうやら下克上があったようだ。

 若い兵士は感激からか震え、手で顔を拭いている。

「ばかっ前を向け! まだ戦いは続いてるよ!!」

「はっ……はい!」

 敗者の激励に鼓舞され、勝者が弾けて周囲を見回し戦いに戻る。

 あちらこちらで、知られざるドラマが起こっていた――。 

 この時代は常に乱戦(メレ)と言っても過言ではない。紋章で区別できれば御の字だが、視野の狭まる戦場でどこまで判別できるのか。

 騎士ならまだしも傭兵ならば、「戦いの最中」に敵味方を入れ替える者がいた。

 誰も信用はできない……明確な示唆がないのだ。弱ければ初陣で、強ければ討ち取って名を上げようとする味方の手で。

 剣の強者だからとて、充当に生き残れる世界ではない。

「部隊行動と個別の武勇は違うけど……」

 それでも生き残るのが本当の強者なのか、ついに本戦へ進む代表選手がそろう。


 一人は代表で宣誓した顔に傷のある兵士――スクルド。

 一人は下克上を果たした揺れる髪の若い兵士――スコグル。

 共に生き残った二名だが姿は対照的だった。スクルドは笑みを見せ、スコグルは肩で息をしている。

 すでに戦いの経験差が表れていた。


「あっ皆さん飲み物は足りてますかー? 給仕は私しかいませんので、面倒ですが自己申告制となっていま―す!」

 貴族に対し不敬にもほどがある軽口をたたき、苦笑と要望が飛びかう。

 二組目が準備されてる間に、ぼくも用意しておいたハーブティーを飲む。叫んで枯れた喉に、さっぱりした爽やかさが流れこむ。

「スポーツ……と呼ぶには過激すぎかな、でも応援に没頭するなんて初めてだ」

 野球観戦を見習い、観客席では飲み物を販売している。

 以前の昼食会ほどには種類がそろわなかったので厳選。エールにハーブティー、そしてアマゾネス自家製の蜂蜜酒(ミード)

 市民が長方形のお盆をタスキがけし、客の間を立ち売りしてくれていた。

「荷馬車に積んで何本も樽買いしたけど、足りるかなあ」

 日が昇るにつれよい陽気となり、みる間に売れて補充に忙しく歩き回っている。

 屋台料理の強み、お昼もこの形式で販売する予定だ。

「観戦しながら飲食できるのはいいですなあ、気分の高揚で懐も緩むというもの。しかしマナーある食事を好む貴族には、無粋に映るやもしれません。この貴賓席をもっと広くとって机を配し、競技会が武勇を表す場となれば――…」

 サンガ伯爵は観戦以上に、興行性に強い興味と関心をしめしていた。

 競技会は領民の息抜きであり、趣向を凝らすのは領主の人気取りの側面もある。

 やはり領主なのだ、没頭すべきは所領経営か。

「やれ――っ後からいけ――! ぶん殴れ――っ!!」

 当のノルブリンカは自分も参加しているのか、手足を振り回していたけど。



 ☆



 三組の乱戦(メレ)が終了し、六名の代表選手が出そろった。

 とうにお昼を過ぎていて、急いで「絶品三獣士」が料理を販売する。外へ食べに行く者やトイレに立つ者、息抜きに歩きたい者いるはず。

 問題点を上げ、次回時に対処できるよう申し送る。

「今回の評判が次回に繋がります、問題はできるだけクリアにすべきですね」

「せめて発表に二週間はとるべきだったかなあ、準備も急だったし」

「予選と本戦を別日にするのもいいわねえ、たっぷりと殴り愛~蹴り愛~」

「武器と同様に甲冑の変更も必要では、体力の消耗と動きやすさを視野に入れて」

「僕に出場させろ」

 うんまあ……一部いらないなと突っこみながら、意見として記憶し清書しよう。

 なおも言い合っている因果伯をよそに、サーランバ卿がうなずいていた。

「それにしても素晴らしい盛り上がりですね。今回は闘技場に収まりましたけど、次回観客がもっと増えたら難しくないですか?」

「その可能性は十分ありますね」

 確実にそうなるだろうと理解をしめす。ゆっくりできる五月に開催していたら、動員数は今回の比ではなかったはず。

 娯楽が少ない時代、「戦い」は強い刺激であり抗えない魅力となる。

「ぼくは戦争のない国で育った……そこでは一部のスポーツを代理戦争に見立て、自分が支持するチームに熱狂していたっけ」

 握りしめて手にかいた汗に問う。

「闘争本能」は人類にとって、切り離せない(カルマ)なのか。

「それが楽しめるほど、平和だったってことか」


「収容できない事態になったら、どうすればいいですか?」

 対処に飛び回った経緯を知っており、不安げに見つめてきた。

「そうですねえ、サーランバ卿はどうすべきだと思います?」

「僕――ですか?」

 答えではなく質問で返され、意外だったのか考えを巡らしている。

「闘技場はこれ以上広くできませんし、物理的に入らないのは仕方がないかと……観戦料を多く払った方を優先して、あっ身分のある方を無下にはできませんよね。貴賓席をもっと広くとって――…」

 やはり感覚が貴族寄りか、サンガ伯爵と同じになるのだなあ。

 彼らにはそれが常識であり、ばくが立ち入っていいのかと悩む点でもある。

「お客さんは競技会を楽しみに、サーガラから一日かけ旅してくるのです。目前で門を閉ざされ観戦できなかったら、次回また来てくれるでしょうか?」

 少しいじわるだったかな、とはいえ観客の大多数が平民である。

 まずそこを意識しなければならないのだ。欧州では長い期間、九割以上が農民といった国や時代があった。

 不満を完全に抑えることはできない、要は所領経営と同じ。

「あっ……!」

 先日領民の力に驚いたのを失念しており、気がついて顔を赤く染める。

 素直さがサーランバ卿の美点だなと顔がほころぶ。貴族家に生まれ育った者に、固いライ麦パンは驚きしかない。

 雑穀のおかゆ(ポリッジ)なんか想像外だろう。

 しかし忘れてはならない。それすら手に入らなければ、盗賊となるか餓死しかないのが平民だと。

 誰が育て、何を食べているのか。

 観客が楽しそうにホットドッグにかぶりつき、見ているだけで幸せになった。

「小麦をまきキャベツを収穫し、パンを焼いてブタを育てソースを熟成させる……農家の職人の商人の力が集まったからこそ、笑顔に繋がったのです」

「……ソーセージだけで、奇天烈ドッグは作れませんね」

 無理ですね――と、顔を合わせて笑う。

 ぼくとて誰もが助け合って生きている……なんて幸せ回路は持っていない。

 才能資質に関わらず領主の息子は領主となるこの時代。どんなボンクラが領主となり傍若無人な振る舞いをされても、耐えるしかない事態もある。

 女性の権利が低く、埋もれた才能が開花できない悲劇もあった。

 まずは成り立ち――「生産者」から「消費者」へ、そして「分解者」へ。生態系を表す食物連鎖を知るべきなのだ。


 この時代に得難き知識の推奨、一般的学校教育への草分け……。


「――大都市であるサーガラで、観戦チケットを客席分販売する方法があります。これなら移動に費やす一日分の距離問題、宿問題がすべて解消されます」

 費やす労力が少なければ苦情は減るし、サーガラも税収があり願ったりだ。

 サーランバ卿が気がつき口を開けた。こっそり聞き耳を立ててる、サンガ伯爵を見ないように話す。

「観戦料を多く払った方を優先するのはいいですね。ですが全席では領民から不満が出るでしょう、金額意外に優遇されるだけの理由も必要としたほうがいい」

 貴族だけを優遇はしない、権利の自由。

「金額意外の理由、ですか?」

「そうです、たとえば今日いい席を確保するため走る観客がいました。ならば観戦に適した席の指定料(・・・)を高く見積もっても、不平とならないのでは?」

 指定料……と、サーランバ卿が小さくつぶやく。

 予約制と指定席はすでに向こうの世界(アラヤシキ)の常識。映像に残せない時代この方式は、画期的な手法といえた。

 興行に携わる者にとっても、集客数を事前に計算できるメリットは大きい。

 だが自由席の開放感――「好きな時間に楽しむ」のも、捨てがたい魅力。両方を満足させるには、やはり経験とデータの蓄積が必要。

「……選択肢がある、ことでしょうか」

「それはいい! より多くを選択する自由があれば、納得もしやすいですね」

 サーランバ卿の主張に肯定をしめすと、ふに落ちて表情を明るくする。

 霧のなかを指針もなく歩き続けられるほど、人は強くない。希望(ひかり)がほしいのだ、次の一歩を踏み出すために――。


「お――いなにやら真面目な話をしてるけどさ、アユムの出番だぞ――!」

 ノルブリンカが闘技場に指示の合図を送りながら、声をかけてきた。

「はい? ぼくの出番は最後だけでしたけど……」

「部隊行動と個別の武勇は違うと言っただろ、やって見せてくれ――!」

 予選敗退した九十人が出入口から現れ、半数にわかれて距離をとる。

「アユムがいっぽうを指揮する、団体戦(トゥルネイ)な――!」

「ええ――――~っ!??」

 本日最大の絶叫が喉を突いた。

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