二十四夜 使命
『ある愛の詩』
もうす もうす 皆にもうす
痛きところはござるか 辛きときはござるか
こは泣き おやは亡き えんは無き
ひかりに遺すは はかなき御世と
やみに惑いて しのび哭き
そはこなたと問うてみよ
されば さればアラヤシキ
あなたはいきを吐き あなたはしょうみょう
ひに想い よに夢む
もうす もうす 我はもうす
痛きところはござろうか 辛きときはござろうか
「天使の梯子」――雲が割れ光が射す幻想的な空間。
大道芸や武術大会などの催し物を催す野外施設に、重軽傷者や重体を負った者が集まり祈っていた。
中心には金色の髪を腰まで伸ばす、少女と見紛うソプラノボイスの少年。
「トリの坊主」ことトリプティー伯爵、名をトリコナー。
袖口が漏斗に広がる白いコットを頭の上で組み、両足で跪く。顔を隠し神に拝謁する姿で朗々と詠いあげていた。
口元には「タラーク」に酷似した文様が浮かび、淡く発光している。
呼応して周囲の患者の体からも、「カルマ」をしめす淡い光があふれだす。
一小節ごとに痛みが消え、手を組み涙を流してる市民もいた。トリコナーこそが神に思えたのかもしれない。
石造りの野外施設に、術者との結びつきを深くする「福音」が響きわたる――。
O属性「妄水」
「病は気から」を有言実行させ、体は無事だと「カルマ」を通し精神に刷りこむ。
新陳代謝を促進させるだけでなく、骨折や有毒物質なども完治する。おそらくは遺伝子レベルでの治療を可能としていた。
ゆえに精神に「定着」してしまった傷は治らない。
治療後は疲労をともなうので、十分な栄養と休息が必要となる。
「閣下、名誉ある御業に……感謝が耐えません!」
「ああ本当に……ありがとうございます!」
詩が終わり、兵や市民がトリコナーに礼をとっている。
祈りの輪に入っていたアカーシャも走ってきた。
「はい!」
「ん? ……うん!」
なぜか手を差し出し、握手しようとするので応じる。
「もう体はほとんどいいみたいだね。お腹が空いたでしょう、元気になったら何か料理を作るから期待してて」
アカーシャが「にへら~」としか形容できない笑みを浮かべた。
「おおっそいつはいいな、当然俺にもご馳走を振る舞ってくれんだろうな?」
「もっもちろんです、ずいぶんとお世話になってますから」
ウールドが大笑いし、しかし半分以上真剣な顔で睨まれる。ご馳走とまで言ってませんと突っこみたかったけど、ここは素直に手を合わせた。
――重体や毒による重症者は出ても、領民の死亡はなんとか食い止められる。
都市部は空き家が多く櫛の歯欠け状態。市民が少なくパニックが拡大する前に、避難勧告できたのが功を奏したのだ。
まさしく不幸中の幸いだった。
「もし亡くなった方がいたら、カレシーの件はもっと複雑になっていたな」
「妄水」によって体の痛みや外傷は改善へ向かう。しかし魔獣に襲われた恐怖は、精神的な後遺症となり癒やされはしない。
強いショックがトラウマとなり、心を蝕むストレス障害……PTSD。
窮地におちいり重症を経験し、傷跡や吹き出す血――「命の危機」への認識は、ふとしたことでフラッシュバックさせえた。
けっして無かったことには、ならないのだ。
「皆さん体調が悪くなったら、遠慮なく申し出てくださいね」
挨拶をしながら群衆を別け、トリコナーもこちらに歩いてくる。
それでも……アカーシャとトリコナー。因果伯の皆がいなかったら、この光景は見られなかった。
「よう、お疲れ――」
「お疲れさまです、トリコナー」
「やあウールド、アユム。しかしその姿を見ると、なんだか詠いたくなるね」
そういって笑うと金の髪が揺れ、汗を弾いて光る。火照った頬が華奢さ演出し、本当に美少年だなと笑い返す。
ぼくはまだ足の骨折が完治してるとは言いがたい。
リハビリ代わりにウールドにおんぶしてもらい、街を「視て」周っていた。少し気恥ずかしくなり、アカーシャの手を支えに降りる。
「相変わらずトリの坊主の『力』は見事だなあ、んでもういいのか?」
「ええバジリスクの毒に手こずりましたけど、皆さんの症状は落ちつきました」
もう大丈夫です――そういってまたも笑う。
トリコナーはあの騒動からずっと、城で野外施設で「妄水」を使っていた。
精神を癒やす手助けになればと、乞われるまま詠い続ける。
「これが私の戦いです」
人々が救済を求める声に、辛く長い戦いに笑顔で応えるのだ。
野外施設には領主の意向で、パン、肉、スープの配給がおこなわれた。普段よりよい食事に子供が喜び、走り回っている。
皆の笑顔に迷子になった女の子が浮かび、思わず腰の剣に手をそえた。
ヴィーラ殿下に下賜された大切な剣。
しかし騎士として佩刀しないのは問題だし、かといって汚すのもなんだしで……けっこう扱いにも悩んでいる。
お兄ちゃんが瓦礫のなかから見つけ、城まで持ってきてくれたのだ。
妹はもう怖い夢も見ず、元気にしているそうだ。
「またお話を、ねだってくれるかなあ」
「アユムは意外と頑固ですね、ついに私の『力』を受けてはいただけなかった」
トリコナーが残念そうに苦笑する。
声が聴こえれば影響を得られるそうなので、患者の数によって「力」を多く使うとかはないそうだ。
「いえ骨折の後遺症もなく治癒も早い、そばに居るだけで助かっています。それに反省しているんですよ、色々な方に迷惑をかけてしまいましたから……」
「んで看病してもらったりと、さらに迷惑をかけてたなあ?」
多忙な領主がぼくにつきっきりだった件を言ってるのだ。
今なお騒動の事後処理が滞っており、業務にたずさわる方に恨まれてそうだ。
「やっぱり、頑固だったでしょうか」
うな垂れるとウールドが大笑いする。
率直にいうとぼくにとっても、二週間のロスはきつかった。だけど今この場所は異世界だと、忘れてはいなかったか?
側溝にお風呂と王国の改善が進み、どこか楽観視してはいなかったか?
「好事魔多し」……自分への、戒めとしておきたかったのだ。
「治療の機会がきてほしいわけではありませんけど、次回があればお願いします」
「その節がありましたら、どうぞご指名ください――おや、これは残念」
今度はトリコナーが手を差し出した。アカーシャと手を繋いでいて、応じれずに顔を見合わせて笑う。
「覚えていたくれたんですね、握手……相手と友好をしめす挨拶と言われてます」
「被告人……? ああいえ、アクシューですか。そうして肌が触れて心が通えば、武器は持てない。不信感や不満がもたらす、心苦しい告訴も減るでしょうね」
ステキな習慣です、ほかにも親交を深める方法があれば――。
なんとなく話が途切れず談笑する運びとなり、なぜかウールドがソワソワする。
「なあお二人さん、どうでもいいけど場所移さね?」
黒髪の容姿端麗な少年と、金色の髪の美少年が交歓する――気がつくとぼくらの周りに、いつの間にか人垣ができていた。
妙齢な女性集団による半包囲……。
値踏みされるのは慣れていても、目が光ってかなり怖い。動揺し焦っていたら、アカーシャがいたずらっ娘らしく笑った。
「あっ……もしかして先に握手して、改悪したんでしょう!」
妹が小悪魔なのも、まあ悪くはないよね。
「それではプールヴァ帝国の因果伯であると、確定したんですか?」
政治的な話から離れており、トリコナーが疑問に髪を光らせる。
城に向かい四人で歩き――正確にはぼくはおぶってもらい、それが楽しく見えたのかアカーシャはトリコナーにおぶってもらっていた。
バジリスクに追われていたフードの「男」は、一命を取り留める。
状況から「綺人」の使用は明白で、なし崩し的に立場と国とが判明していった。
『本案件における軍隊行動は、因果伯であり指揮官の私に全責任がある! 捕虜の身に僅かの命乞いもない。だが大切な仲間や部下の亡骸だけは名誉をもって遇し、どうか帰国をかなえていただきたい!』
盲目となりながらも、毅然とした態度で処遇を突きつける。
「礼節を持ち逃げたり暴れたりせず、騎士道精神あふれる潔い方でしたね」
「潔いかはまだわからんが新王都に送られた。あとは密偵か侵略行為か、向こうで事情聴取がされるんだろう」
面倒にならなきゃいいなと、ウールドが空を見上げため息をつく。
ぼくはウールドの突っこみに首を傾げつつ、もう一つの気がかりを考えていた。
S属性は物質を返還させる、ではO属性は……?
「イーシャ卿と同じO属性の『男』も、同じく盲目となった――気になる?」
目を細めてトリコナーが訊いてくる。
ぼくは両手で口を隠し、少し照れてしまった。
「顔に、出ていましたか?」
「そこまではね。でもアユムは感が鋭いし、知識が豊富だから気がつくかなって」
「こいつ意外なとこでむっちゃ鈍いぞ、監視にまったく気がついてなかったし」
「ウールドのときは別ですよ、とても監視には見えませんでしたよ?」
苦笑の反論に、半バーガーはうまかったと喉を鳴らす。
まあおかげで気楽に話せる間柄になれたのかな。親交を深めるため監視させてたわけじゃないだろうけど、殿下にはお礼しなきゃ。
……そんな理由じゃ、ないよね?
アカーシャが眠り目で、小さく笑う。
先日盲目となった「男」の状態を、イーシャ卿――ラヴィにうかがってみた。
察してくれたのか教えてくれる。
「O属性……『綺人』はアユムの想像通りです、視力を返還しています」
私事に立ち入った件の憤りはなく、光をなくした件への感傷もない。
「暴走させなければ、そうそう限界は迎えません。布から糸がほどけ、徐々に体が露わになっていく感じですね。私は……炎に包まれてしまったのです」
当時の記憶に浸っているのか、淡々としつつも愁いを帯びた睫毛が揺れていた。
「ヴィーラ殿下の、お役に立ちたくて……」
スーリヤ様の言葉を思い出す。
「力」を持つ者は義務が強要されるのだと、必ず迎える限界を知ってもなお。
「盲目の身となったことに、悔いはありません。ですが殿下のお怒りは凄まじく、それゆえに深い嘆きが……見えぬ目にも伝わりました」
それがいっそう心苦しかった――。
二週間前、ぼくも同じ怒りと嘆きを目の当たりにしている。ときに心のケガは、言い知れぬ激痛をともなうのだと知った。
「因果伯がヴィーラ殿下に忠誠を誓うのは、恐怖からだけではないのです」
まあ、怖いんですけどね――そういってラヴィは笑い、釣られてぼくも笑う。
「アユム……よろしければ、お顔を触っても?」
「え? ええ、どうぞ」
ラヴィの細く、そして少し冷たい手が頬を伝い、耳を首筋をなでる。
「アユムは殿下を思わせる、とてもいい声をしています。強い意志が幾重も集い、芯のある光が瞬いています」
「カルマ」ではわからない容姿を心に描いているのか、名残惜しく手が離れた。
「自分の話はできますけど、他者の『力』は信頼を得てからになさいませ」
「――そうだね『妄水』は、声帯を返還している」
トリコナーがこともなげに答え、眠ってしまったアカーシャを背負いなおす。
声帯を? トリコナーも美しいソプラノボイスを、いずれは失う!?
「先日ね……私の詩で治癒した子がお礼にと、得意な歌を聴かせてくれたんだよ。キレイな声でね、天使の歌声っていうのかなあ」
その子が重なるのか、アカーシャの顔を眺めている。
「もちろん限界を超えるつもりはないさ、私は今の立場が結構好きだしね。ただ、あの歌声を聴けた。それだけで私の使命は、いつも果たせてるんだ」
なんて贅沢なんだろうね――彼の表情は、柔らかな光に包まれていた。
使命――。
ラヴィも光を失った件に固執はしていなかった。それはヴィーラ殿下に対して、使命をまっとうしているからではなかったか。
ウールドが肩越しにウィンクする。
『なっ悪いことばっかでもねえだろ?』
その目が訴えていて、なんだか面白かった。
「なに? なんの話?」
「男同士の内緒だ――!」
トリコナーが興味深げに訊き、ウールドが大笑いしてはぐらかす。
ソプラノボイスが不満そうに天へと響いた。
「私は男ですよ――っ!」
☆
ホーマ親方の鍛冶場は東の内側城壁そばにある。
独立した石壁で囲い、万一の事故に備えて強固な防壁さを誇った。バジリスクの振動にすら、小揺るぎもしなかったそうだ。
寝てしまったアカーシャをトリコナーにあずけ、ウールドと二人で向かう。
閑散とした雰囲気だったのにあちらこちらから鍛冶の音がする。見れば空き家となっていた近所の鍛冶場にも、火が起こされ煙が立ちのぼっていた。
何度か訪れた歴史のある広い仕事場。
親方と同業者の手伝いだけだったのに、大声がこだましている。どうやら聞いたとおりだったので気を引き締めなおす。
「おう、来たか――っ!」
ホーマ親方の鍛冶場も、人でごった返していた。
薪ボイラー用のパイプを製造する者、分解し構造を確かめうなってる者。量産できるよう頼んであるのだ。
七十歳を感じさせる親方が浅黒い肌に汗を滲ませ、中心で檄を飛ばしている。
木炭高炉には火が入れられ、水車動力によるフイゴ送風の轟音が響く。輻射熱が熱気に拍車をかけ、あちらこちらで大声が交わされていた。
「親方の怒鳴り声は、この現場で鍛えられたんだなあ」
「ハンドミキサーはできた! 持ってけ――!」
製作台の上に箱に入ったハンドミキサーが数台収まっている。
興奮しながらハンドルを回すと、先端でクロスした数枚の金属板が回転した。
金属のこすれあう音がもはや懐かしい。
ウールドが見慣れた「んで、なんに使うんだそれ?」の顔をしていた。動けないときに設計図を運んでもらったのだ。
「そのうちご馳走しますね」
アカーシャとの会話を思い出し、ウールドが目を輝かせる。
「マヨネーズの製造もホイッパーでは大変だった、これでずいぶん楽になる」
「相変わらずお前の仕事は細かすぎる!」
ギアの数を素にしろとどうのと――。
親方はブツブツ愚痴をこぼし顔をしかめていた。憎まれ口をたたきながらも完璧に仕事をこなす職人魂を、ぼくは尊敬している。
「遠心分離器のほうは実質ストップだな。あの騒動の復興で他領から賦役や大工が集まってきてる、メシが必要だ」
遠心分離器は水車を利用するつもりで図面を引いた。
現在は空いていた水車まで粉挽きに回しており、わがままは言えないと頷く。
『公衆浴場とやらに使っている無駄な水車も、粉挽きに回すべきだ!』
そんな意見が相次ぎ、銭湯ファンが大反対する騒ぎまで起きている。
入浴を「異常な行為」と批判する者たちが、魔獣騒動を利用したのだ。まあ領主が話も聞かず、陳情書を破り捨てたけど。
「それにしてもあんなでっけえ蛇をよく倒せたもんだ。英雄が現れて討伐したってもっぱらの噂だ、坊主は何か知ってるか?」
ぼくが苦笑し、ウールドがわざとらしく斜め上を見た。それで納得できるわけもないのに、親方は肩をすくめて追及はしない。
こんなときは本当に、周囲に恵まれているなと感謝する。
「親方の鍛冶場も人があふれていますね、お弟子さんたちですか?」
「元弟子だ、銭に釣られて新王都にいっちまった薄情モンよ――!」
鍛冶場の喧騒を見回しながら訊いてみたら、またしても憎まれ口をたたく。
「親方が見分広めろ、独立しろと追い出したんじゃないっスか――っ!」
「それでこんな面白いもん作ってんだから、俺もマナスルにいてえよ」
鍋やら鎌やら飽きちまった――と非難めいた声に同意の声が重なる。
「うるせ――っ! 聞いてんじゃねえぞ、手ェ動かせ手ェ――!」
大笑いと再批判がこだまし鍛冶場を包む、慣れたやり取りなのだ。
見れば十年の間に、元弟子たちも親方資格を得ていたようだ。さらに若い職人を引き連れている。
ホーマ親方にとっては孫弟子にあたるのか、怒鳴る表情に覇気が漲っていた。
『アラヤシキの奇天烈な少年がマナスルを見違えらせた』
そんな噂と薪ボイラーの話も、すでに新王都で広まっているそうだ。
「少し早い気がするけど……まあ、いいことかな」
職人としては見てみたい、手に取って性能を確かめたい。しかし職人ギルドとの契約があり、派遣された領地から自由に移動はできない。
厳しい誓約条項があるのだ。
日々の仕事に追われ、ヤキモキしていたところにバジリスクの騒動があった。
ある意味これ幸いと、復興の仕事と称して元鞘に帰ってきたのだ。ここで知識を身につけ、新王都やほかの領地でも広めてもらえたらありがたい。
なればこそ打てる次の一手。
「職人が集まった、いまがチャンス!」
ぼくの盛り上がりを、ウールドが面白げに見ていた。
ボイラーによる高温高圧のエネルギーを、機械エネルギーへと変換する。
薪ボイラーと同じく熱を利用するのだが、ピストンとクランクを使い往復運動を回転運動に転化させる点が最大の特徴。
水車や風車、人力や畜力といった農業社会における労力とは一線を画す。
物質がもたらす熱運動の概念……熱エネルギー。人類は新たに、安定した動力を得ることに成功したのだ。
発明から応用、改修に改良を重ねた百年の歳月。
一八世紀の動力革命、ワット式蒸気機関――「蒸気エンジン」である。
「こっ……こいつァ――~…」
設計図を見て、ホーマ親方がうなる。
周囲の弟子は意味がわからないと首を捻っていた。薪ボイラーを図面から起こし熱の力を理解している、親方だからこそわかるのだ。
大いなる技術の格差と、四〇〇年の隔たりを。
「……まずは部分的に試作してみましょう。親方には難しいヵ所をチェックして、順次に試行錯誤を――」
焚きつけるぼくの言葉は聞こえていないようだ。
滝の汗を流し、逆に目は輝いている。
「こいつァ俺の仕事だ……っ! 誰にもやらせねえっ!!」
両腕が震え、焼ける視線は設計図から離れない。
「この俺の、一世一代の仕事だっっ!!!」
歓喜と怒号と、武者震いをこめて吠える。
親方の尋常ではない様子に、弟子たちもわき立つ。
「ホーマ親方! 俺らにも手伝わせてください!」
「まずは薪ボイラーを作れるようになりやがれ! 下手な奴には、ネジ一本だって触らせやしねえからなっ!!」
「おお――――っっ!!!」
ホーマ親方の鍛冶場に雄たけびが鳴り響く。
人の目の色が変わる瞬間を目撃する、数少ない機会だった。
職人であり続ける――それがホーマ親方の、使命であるかのように。




