「3日目:Another view」
見られてしまった。彼にあの場面を、あの日を、あの瞬間を……。
何度も何度も繰り返しているというのに、行き着く先はいつも同じ。正直言って、気が滅入ってしまいそうだ。
「ううん、頑張らないと!」
私はパシッと自分の頬を叩き、浴室の天井を仰いだ。ヒリヒリと痛みを頬に伝いながら、耳元まで湯船に浸かる。
それにしても、今回も同じ事を繰り返しただけ。唯一違ったのは、あの空間の中でアレが来なかった事だ。
だがしかし、油断は出来ない。私しか居ないのだから、彼の道を選ぶ事が出来るのは……私しか、居ないのだから。
――だから、殺しちゃえば良いのに。
湯船から出て、髪の毛を乾かしている時にその声は響いた。私は眺めていた鏡の中を睨むようにして、ドライヤーの風を強くした。
「何の用?悪いけど、今髪を乾かすので忙しいから後にしてくれる?」
『あぁ、コワイコワイ。そんなに睨んでも、意味なんか無いのに睨んじゃって』
鏡の中で肩を竦めて、やれやれと言わんばかりに首を振る彼女。これがもう一人の私であり、私の内側にあるモノだと信じたくない。
『ヒドイなぁ。信じたくないって、私を否定するって事は、自分自身を否定するのと一緒だよ?イイの?』
「私は私を否定するつもりは無いけど、あなたは信じたくないわね」
『でも私は、私を信じてるわよ?次にどういう行動を取って、どういう結末を望んでるのかも知ってるから。その上で聞くんだけど、結局はどうするの?あの子を助けるの?それとも見捨てる?』
「助ける。その為に私はこの世界にいる。これは決定事項だから、あなたにはもう止める事は出来ないでしょ?」
『そうね。最初の方だったら、幾分か中断させる方法はあったのだけどね。見ていて面白いし、退屈しのぎには丁度良いかなぁって思ってるよ?』
退屈しのぎ。これが自分から出た言葉だと信じたくは無いが、紛れも無い本心からの言葉なのだろう。
彼女は私であり、私は彼女。言葉で言えばややこしいかもしれないが、彼女は私の内側にあるモノであり、それ以外の何者でもない存在だ。
そんな事を知らされた時は信じたく無かったが、私は繰り返してる内に実感してしまった。
……彼女は、私のマイナスの感情という事に。




