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エマの本音が聞けるまで ー見てるだけじゃ満足出来ない次期公爵様とギフトの事情ー  作者: HARUHANA


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14/30

14.嫉妬の理由

「リヒトと婚約が出来ないって何でよ、お父様!!」

 

 どうして婚約が進まないのよ……!

 ずっと……ずっと、リヒトだけを見て来たのに。


「落ち着きなさい。今度、マゼル公爵邸に行く予定があるから、その時にもう一度打診してみよう。なっ?」

「だって……前に、婚約の話しが出た時だって、上手く交わされてたじゃない! リヒトもリヒトよ、私が一番適任だって分かってるのに」


 五つ離れたお兄ちゃんが、好きな人になるのに時間なんてかからなかったわ。いつも私と手を繋いでお出掛けしたり、遊んでくれたりしたじゃない。

 恋心に変わってから、ずっとずっとアピールしてきた。好きだよって何度も伝えてきた。結婚するなら、絶対リヒトお兄ちゃんが良いって……伝えてきたのに。

 

 だから……だから、お父様にお願いして婚約打診のお手紙を出したのに。


 "自分で見初めた相手を選ぶ"


 ……リヒトは私の何を見てきたのよ。リヒトに釣り合うように、リヒトの好みに近づきたくて可愛くなったのに……!



 絶対諦めたくない。

 だから今日、お父様と出向いた。


「リーヒトッ、元気だった? 変わりない?」

「あぁ変わりないし、調子が良い」

「私も調子良いのよ、ほらっ髪だって艶々でしょ?」

「あぁ……うん、それで今日は――」

「そうよね、気になるわよね! お父様たちのところへ行きましょう」


 さり気無くリヒトの腕に絡めて歩けば、ほらぁやっぱり私たちお似合いじゃない! ガラスに映る二人、やっぱりこうでなくっちゃ。


「リヒト君、ぜひリーゼルを君の妻に貰ってやってくれないか?」

「…………」

「リーゼルも立派な淑女になっただろう? 小さい頃から一緒にいてくれたリヒト君なら、私も安心して預けられるし、幸せな家庭を築けるんじゃないかと思ってね」


 でも、リヒトは何も言わずに微笑むだけ。

 マゼル公爵だって「早く結婚して欲しいんだけどな」とか「いつになる事やら」とか言って、真剣味が足りないのよ。


「リヒトの奥さんになってあげる。ねぇ、私たちお似合いだと思うの。良い奥さんになれるように花嫁修行だって頑張ってるわっ。ねっ、だから一緒に」

「リーゼル、君のことは気心知れた友人とは思ってるけど……結婚はまた別だ」

「どうして? 私のこと嫌い?」

「そうじゃない」

「……なら、私を選んでよ。リヒトの隣に並んでも恥ずかしくない淑女になったよ? 家格だって釣り合いが取れるし、私は……リヒトが好きなの」

「…………」


「まぁまぁ二人とも、お茶でも飲んで落ち着きなさい。誰かいるか? 新しいお茶を入れてくれ」


 痺れを切らしたのか、リヒトのお父様に遮られてしまったけど、どうしてここまで私を避けるのよ……。こんなに好きなのに。私が一番近くにいるじゃない。誰よりも近くでお互い見てきたのに、メイドなんか見てないで私を見てよ。


「ねぇそこのメイドさん、入れ終わったらそこを退いてくださる? 今、リヒト様と大切な話をしてるの」

「……話は終わっただろ? スパニー侯爵、申し訳ありませんが僕もこちらで失礼します」

「ちょ、リヒト……!?」


 メイドの腕を掴んでドアを出ていった。

 ……は? この私を差し置いてメイドと出ていくの?

 

「リーゼル嬢、リヒトが失礼な態度をとってすまなかったね」

「……いいえ。ですが、私は諦めきれません」

「息子をこんなに思ってもらえて、親としては有難い限りだよ。私と妻も政略結婚ではないから、リヒトにも自分の思う人と結ばれてほしいと思っていてね。それでもリヒトだって良い年だ。結婚適齢期というものは、見過ごせないとも思っているんだよ」

「ならっ……」

「どうだろう、リヒトが23の年になる誕生日までに相手が決まらなかったら、その時は私も後押ししよう」

「リヒトの誕生日って、あと二ヶ月ですよね」

「息子にも息子なりの考えがあって今を生きてるのは間違いない。そこも尊重してやってほしいから、二ヶ月後リヒトがどうなってるかその目で見届けてほしい」

「分かりました。二ヶ月後、もしもリヒトに相手がいなかったらその時は、リヒトの誕生日パーティで私との婚約を発表して下さい」

「良いだろう。愛し、愛されたいなら努力しなければ得られないがね」

「そんなこと分かってますわ。絶対二ヶ月のうちに振り向かせてみせますから」

「楽しみにしてるよ」



 心の中でガッツポーズをして、気分よく部屋を出た私。

 今日、ここに来てよかったわ!

 夫婦になるなら、私だってやっぱり愛されて大切にされたいもの。二ヶ月後に、仕方ないから一緒になりましたーなんてなりたくない。どんな手を使ってでもリヒトを私に夢中にさせてみせるんだから。


 さっきは部屋から出て行っちゃったけど、このままじゃ気まずいし、お茶ぐらい付き合ってくれないかしら。


「ねぇ、リヒトはどこ?」

「リヒト様は出掛けられました」

「は? さっきまで応接室にいたのよ?」

「応接室から出てから、馬車で出掛けられましたので……」

「あっそ。どこに行ったか知らない?」

「マダムフランのお店と伺っております」

「ふ〜ん……」


 ふと蘇った、メイドの腕を引くリヒト――


「メガネのメイドって前からいた?」

「メガネ? あ……エマですね。まだこちらに来て二ヶ月程でしょうか。何かございますか?」

「別に。気に入らなかっただけ」


 ここに居ないなら長居する必要もないし、リヒトを追いかけようかしら。


 ねぇリヒト……私を選んでよ。

 一緒になれるなら何だってするから。

 貴方が、どうしても欲しい……の。

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