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第148話:二本の槍


地面が、

爆ぜた。


轟音。


白と赤。


二つの炎が、

同時に前へ走る。


「ッらァ!!」


オルドの拳。


真正面。


セレスの白槍と、

正面からぶつかった。


ガァァンッ!!


衝撃。


空気が割れる。


土強化された腕が、

白火を受け止める。


だが――


「ぐっ……!」


押される。


地面が砕け、

オルドの足が沈んだ。


「ハッ!!

 重ッてぇなァ!!」


笑っている。


だが、

余裕はない。


セレスの白火は、

真正面から貫きに来る。


圧縮。


固定。


押し潰す火。


「理解が遅い……やはり獣だな」


セレスが低く吐く。


白槍が、

さらに前へ沈んだ。


その横。


ザハクが滑る。


低い。


地面を這うみたいな速度。


「……」


視界から消える。


次の瞬間。


右。


「遅い」


低い声。


「ッ!!」


咄嗟に槍を返す。


ギィィンッ!!


爪と槍が擦れる。


火花。


だが、

止まらない。


ザハクが、

そのまま懐へ潜る。


速い。


「……近いな」


火が爆ぜた。


ゴォォッ!!


至近距離で、

火を叩きつける。


ザハクが、

咄嗟に跳んだ。


だが、

避け切れない。


「ぐぁッ!!」


肩が焼ける。


そのまま後方へ滑る。


土煙。


だが。


「オルドとの時もだが……反応が良すぎる……」


ザハクは止まらない。


低く構えたまま、

再び地面を蹴った。


その瞬間。


風が裂ける。


上。


翠。


「散れ」


ルエル。


風刃。


幾重もの翠線が、

空中から降り注ぐ。


「ッチ……!」


カイナが前へ出た。


白火。


細い線みたいな炎が、

空を走る。


ダンッダンダンッ!!


風と火がぶつかる。


空中で、

翠が裂けた。


「へぇ」


ルエルが笑う。


「白服のくせに、ちゃんと見えてるんだ?」


「循環干渉……鬱陶しい術式だ」


カイナが低く返す。


白火が、

さらに細く圧縮される。


「だが、エアほどではない……」


次の瞬間。


白線が、

風の核へ突き刺さった。


轟音。


風向きが乱れる。


今まで渦巻いていた土煙が、

横へ流れた。


視界が開く。


「ッ……!」


オルドが舌打ちする。


「風が切れた!」


「カイナか……」


ザハクが低く吐く。


その瞬間。


俺は地面を蹴った。


一直線。


火が残像を残す。


「ッ!?」


ザハクが反応する。


だが、遅い。


槍を振り抜く。


轟音。


火が、

地面ごと爆ぜた。


土が吹き飛ぶ。


ザハクが腕を交差する。


しかし、防ぎきれていない。


「ぐっ……!!」


吹き飛ぶ。


その横。


セレスの白槍が、

さらに前へ沈む。


「ッおぅらァァ!!」


オルドが吠える。


土強化。


筋肉が膨れ上がる。


真正面から、

白槍を殴り返した。


轟音。


白火が揺れる。


だが。


止まらない。


「化け物がよォ!!」


「貴様らが脆いだけだ」


セレスの声は冷たい。


次の瞬間。


白槍が、

オルドの腕を弾き飛ばした。


体勢が崩れる。


そこへ。


火。


「ッ!!」


俺が、

横から突っ込む。


オルドの目が開く。


「な――」


遅い。


槍を振り抜く。


ゴォォォッ!!


火が、

真正面から炸裂した。


爆音。


熱風。


オルドの巨体が、

後方へ吹き飛ぶ。


そのまま岩壁へ激突した。


轟音。


岩が崩れる。


「ッがァ……!!」


土煙。


だが、

まだ立つ。


膝はつかないが、

すぐには動けまい。


第四最強を名乗るのは、

伊達じゃなかった。


その瞬間。


横。


ザハク。


低い姿勢のまま、

再び踏み込んでくる。


「まだだ……!」


土が隆起する。


槍。


壁。


地面そのものが、

牙みたいに襲い掛かる。


だが。


白が走った。


轟音。


セレス。


白槍が、

土ごと全部貫いた。


固定された土壁が、

まとめて吹き飛ぶ。


「なっ……!?」


ザハクの目が揺れる。


そこへ。


俺が踏み込む。


「終わりだ……」


槍を引く。


熱。


脈動。


火が、

腕から溢れる。


次の瞬間。


振り抜いた。


ゴォォォォッ!!


炎が、

一直線に走る。


「ッッッ」


ザハクごと、

後方の岩壁を飲み込んだ。


爆音。


熱風。


岩が崩れる。


地面が揺れる。


静寂。


土煙だけが、

ゆっくり広がっていく。


「……」


前。


オルドはかろうじて呼吸を保ち、

ザハクも片手で身体を支える。


その横を。


白と赤。


二本の炎が、

止まらず前へ進む。


第四の前線が、

初めて後退した。


―――――


蒸気が、

戦場を覆っていた。


白。


熱。


崩れた水壁。


「中央防壁、崩れます!!」


怒号。


次の瞬間。


白服達が、

一気に前へ雪崩れ込んだ。


「押せえぇぇ!!」

「今だ!!」


火線が走る。


崩れた土壁を、

白火が焼き抜いていく。


「っ……!」


ユーリスは、

思わず息を呑んだ。


動いている。


戦場そのものが。


さっきまで、

押し返されていたはずなのに。


今は違う。


敵陣が、

明らかに乱れていた。


「水班後退!!

 循環維持できません!!」


「風班、蒸気量過多!!

 視界確保不能!!」


「土壁、左側崩落します!!」


連鎖。


崩れていく。


水の流れが切れたことで、

全部が噛み合わなくなっていた。


その時。


横。


マリスが、

静かに目を細めた。


蒼の瞳。


戦場の奥を見ている。


「……流れ、切れた」


小さく呟く。


「...もう水が回ってない」


その瞬間。


前方。


最後尾の土壁が、

轟音と共に崩れた。


「中央開いたぞ!!」


白服達が、

さらに前へ出る。


その先。


敵拠点。


半壊した防壁の奥。


赤い旗の下に、

石柱が立っていた。


腰ほどの高さ。


表面には、

円環の刻印。


四属性の線が、

中心で交差している。


拠点核。


「……あれを」


ユーリスが目を開く。


あれを取れば、

第三は落ちる。


その瞬間。


敵術者達の顔色が変わった。


「核を守れ!!」


「白を近づけるな!!」


だが。


遅い。


「第四列!!

 拠点核へ!!」


白火が走る。


轟音。


最後の防壁が吹き飛んだ。


「ッぁ……!!」


敵術者達が崩れる。


その中央へ。


白服達が一気に雪崩れ込んだ。


「拠点制圧!!」


「第三、落ちたぞ!!」


歓声。


熱。


白火。


ユーリスは、

その光景を見ながら、

小さく息を呑む。


勝った。


本当に。


その時だった。


――ゴォォォッ!!


遠く。


第四側から、

巨大な爆音が響いた。


「……!」


ユーリスが顔を上げる。


遠い。


だが、

見える。


白と赤。


二つの炎。


まだ、

止まっていない。


―――――


轟音。


そして。


岩壁が吹き飛ぶ。


同時に。


今まで繋がっていた風の巡りが、

急に薄くなった。


「うっそ……あの二人が!?

 こっちも手一杯なのに〜!」


カイナが、

白火を構えたまま低く吐く。


「ん? ……第三、抜いたか」


次の瞬間。


第四側の空気が変わった。


獣人達がざわつく。


「おい……後方の風が!?」


「土壁維持が落ちてる!!」


「俺達、あの人数に押されてるのかよ!?」


揺れ。


乱れ。


その瞬間。


セレスが前へ出た。


白槍。


静かに持ち上がる。


「終わりだ」


低い声。


オルドが顔を上げる。


「……ハッ」


血を吐きながら笑った。


「まだ終わってねぇだろ……!」


地面を殴る。


土が隆起する。


だが。


薄い。


さっきまでの圧がない。


「ッ……!」


ザハクの目が揺れる。


術式が乱れている。


そこへ。


赤い火。


「どけ」


俺は地面を蹴った。


轟音。


一直線。


火が、

第四中央へ走る。


土壁。


岩。


防壁。


全部まとめて、

火に呑まれた。


「止めろォ!!」


オルドが吠える。


だが、

遅い。


その横。


白火が並ぶ。


セレス。


言葉はない。


だが、

まるで対のように並ぶ。


二本の槍が、

真正面から最後の壁を貫いた。


轟音。


赤と白。


二つの火が重なり、

固定されていた土術式が一気に崩壊する。


地面が割れる。


第四中央が、

完全に開いた。


その瞬間。


横で、

鈍い音が鳴った。


「ぐぇッ!?」


パコダが吹き飛ぶ。


ミリカだ。


低く着地したまま、

すぐに駆ける。


「今にゃ!」


「あ!?

 待てこらぁ!!」


パコダが叫ぶ。


だが、

ミリカはもう聞いていない。


一直線。


崩れた拠点の奥へ走る。


白線に囲まれた石柱。


円環の刻印。


四属性の線。


拠点核。


ミリカが、

そこへ手を叩きつけた。


「……取った!」


「お前かよ!」


パコダの声が響く。


次の瞬間。


円環の刻印が、

白く塗り替わった。


そして、

空が鳴る。


高い音。


戦域全体へ響くように、

白い光が打ち上がった。


終了の合図。


第四側の空気が、

止まる。


誰も動かない。


獣人達が、

拠点核を見る。


それから、

空へ上がった白い光を見る。


第三。


第四。


両方が落ちた。


事実上、

全勢力が崩れた。


一つを除いて。


「……あーあ」


パコダが、

倒れたまま笑った。


「マジで負けたじゃねぇか……」


オルドが、

悔しそうに舌打ちする。


ザハクは黙っていた。


ただ、

静かに息を吐く。


ミリカは、

拠点核から手を離し、

得意げにこちらへ戻ってくる。


「取ったにゃ!」


「……美味しいとこ取りしやがって」


「エアのために取ったにゃ」


「ありがとう……にゃ?」


「ッ!?

 エアになら、なんか……もういいにゃ」


「え……あ、あぁ、そうか……」


白い光が、

空で弾ける。


その横で。


セレスが、

静かにミリカを見ていた。


冷たい目。


怒りではない。


敵意でもない。


だが、

どこか気に入らないものを見る目だった。


「……ッチ」


小さく聞こえた気がした。


ミリカの耳が、

ぴくりと動く。


「?」


セレスは視線を逸らした。


白火が、

静かに揺れる。


その中央を。


白と赤。


二本の炎だけが、

最後まで消えずに燃えていた。

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