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Melty romance 〜甘S彼氏の執着愛〜  作者: yuzu
side真乃

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2/6

2

 合コンらしい会話が、テーブルの上を滑っていく。

 趣味の話、仕事の愚痴、休日の過ごし方。

 笑い声が飛び交う中、私は誰が何を言っているのかもよくわからないまま、適当な相槌を打っていた。


 「へぇ~」「そうなんですね」「すごーい」

 

 どの言葉も、心がこもっていない。

 口だけが自動的に動いて、笑顔だけが貼りついている。


 手元のグラスには、4杯目のカクテル。

 苺の香りが甘ったるくて、飲むほどに気分が悪くなりそうなのに、自分で好きなものを注文できる空気でもない。


 グラスが空きそうなのをめざとく気づいて、"気が効く私"演じ中の立花由佳里(同僚)に注文されてしまう。


5杯目を受け取り、お皿の上に取り分けられたオリーブと生ハムのピンチョスを口に放り込む。


(男なんて、みんな頭ん中エロしかないくせに)

 内心でそう毒づきながら、マドラーをくるくると回した。


 会話の中に見え隠れする“下心”にゾッとする。

 

 隣に座る美春さんに目くばせをすると、

 彼女が小さく頷いた。

 「私たちちょっと、メイク直しいってきますね」と言って、4人全員がグラスをテーブルに置き、化粧室へ向かった。


 化粧室の中は、花の香りが充満していて、外より少し静かだった。


 鏡の前では美春さんがリップを塗り直している。


 耳たぶに香水をつけながら由佳里が言った。

「今日の合コン、顔面偏差値高すぎ! しかもハイスペ。全員T大卒だって。しかも医者。」


 弾む声に、思わずため息が漏れる。


「……美春さん、私もう帰りたいです」

「えー、ちょっと! まだ始まったばっかじゃん」

「なんか具合が……それに男に興味ないし。だって、男ってみんな」

「みんな、エロしか考えてないって?」

 由佳里と美春さんは笑いながら鏡越しに私を見る。


「真乃。男なんてね、頭の中の八割はエロでできてるの。重要なのは残りの二割よ。」

「……その二割を知る気もないのに」


 肩をすくめる美春さんに、私も苦笑いを返した。


 彼女の言うことは、たぶん正しい。

 

でも。

 “あの日”以来、私はもう、"男"とう生物と関わる気になれなくなっていた。


「高校生のときのこと、引きずりすぎじやない?」


 美春さんが、リップを閉じながら言った。


「十代の男なんて、子どもだよ。忘れて、今を生きなきゃ」


 その"今"から逃げ出したいんだけど。


 化粧室を出ると、照明が少し落ちた店内に、グラスの音と笑い声が戻ってくる。


 テーブルに戻ろうとしたその瞬間――

 

 通路の先に、「オレのこと、覚えてる?」と言ったあの男が、壁に軽く肩を預けながら私を見ていた。


 目が合うなり一言。

「彼女、連れてっていい?」


 低い声が、美春さんのほうに向けられる。

 

 美春さんが私を見た。

 ほんの一瞬の間を置いて、唇の端を上げる。


「ごゆっくり~♡ご返却は明日でいいですよ♡」


「ちょ、ちょっと待って、美春さん!」


「いってらっしゃい、真乃♡(次回の合コンセッティングよろしく♡)」


「由佳里お願い、私も……(一緒に席まで連れて行ってぇ 涙 )」

「真乃ちゃん、ファイト♡」

「そんな、由佳里。日向まで……みんなぁ。」


 慌てて袖を掴もうとするが、彼女達はさっさと店内の奥へ戻っていく。


 まるで“楽しんできなさい”とでも言いたげに。

 私は困惑したまま立ち尽くす。


「じゃ、行こ。」

 そう言って、彼が私の手首をそっと取った。

 


「ちょっと!やめてください。」

「《《また》》、逃げられたくないから。」


 彼の瞳に浮かぶのは下心ではなく、怒りが滲んでいる気がした。

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