第三十四話:平和への剣
ディオンたちが作戦を練った日の夜、ヴァルガス強硬派の最終作戦が実行に移された。ディオン、レオ、リアム王子の三人は、エリックが集めた情報と、ディオンが地下から持ち帰った軍事文書を元に、強硬派の最後の隠れ家――王宮の敷地外にある古い貴族の館へと急いだ。
「レオンハルト将軍は、この館で待機し、アークランドへの軍事侵攻の最終信号を出そうとしている。ゾラは、その間に王宮で最後の攪乱を仕掛けるつもりだ」リアム王子が情報を整理した。
ディオンは、王宮に残るリゼットとエリックの安全をレオに託し、リアム王子と共に館へと潜入した。
館の内部は、静寂に包まれていた。だが、ディオンは長年の騎士の勘で、これがレオンハルト将軍が仕掛けた罠であることを察知していた。
「リアム殿下、警戒を! 罠です」
二人が声を潜めた直後、通路の壁が崩れ、数人のヴァルガス兵士が銃を構えて現れた。ディオンは即座に剣を抜き、先陣を切って飛び出した。
ディオンの剣は、もはや師アルフレッドの教えを超えた、愛する者を守るという純粋な信念を宿していた。彼の動きは驚異的に速く、ヴァルガス兵士の銃弾が届く前に、その攻撃を無力化した。リアム王子は、ディオンの戦いぶりを冷静に分析し、残りの兵士の退路を魔法で断つなど、的確に援護した。
激しい戦闘を突破し、館の最上階にある通信室に辿り着いたディオンとリアム。そこには、制服を完璧に着こなした、レオンハルト将軍が悠然と立っていた。彼の傍らでは、通信兵が最後の侵攻信号を送信しようとしていた。
「よく来たな、ディオン・ノックス。そして、裏切り者のリアム」レオンハルトは冷酷な笑みを浮かべた。「お前たちの浅はかな『愛と平和』の夢は、ここで終わる。アークランドは、ヴァルガス帝国の一部となるのだ」
ディオンは剣を将軍に向けた。彼の瞳は、五年前の記憶を失わせた真の黒幕を前にしても、揺るがなかった。
「貴方の企みは、すべて暴かれた。ヴァルガスにも、真の平和を望む者がいることを知るべきだ!」
リアム王子は、強硬派の罪状と、ゾラの企みを記した文書を突きつけた。「強硬派の行動は、ヴァルガス皇帝陛下の意思ではない。これ以上の無駄な血を流すな!」
レオンハルトは文書を一瞥し、鼻で笑った。
「くだらない。力こそが正義だ!」
将軍は自ら剣を抜き、ディオンに襲いかかった。レオンハルトの剣術は、アルフレッドとは異なる、冷徹な軍略に基づいた致命的な一撃の連続だった。ディオンは、師を越えたばかりの自身の力と、リゼットから得た「光の力」への信念を信じ、将軍の剣を受け止めた。
その頃、王宮では、ゾラが最後の手段として、リゼットを拉致しようと襲撃していた。だが、リゼットはもはや「異端の王女」ではない。
「私を、ディオンが守り抜いた力を、二度と封じさせはしない!」
リゼットの予知夢の力が覚醒し、ゾラの動きのわずかな未来を捉える。ゾラが放った魔法の軌道を察知したリゼットは、エリックとレオの協力の下、ゾラを欺いた。
その瞬間、ディオンの剣が、レオンハルト将軍の右腕を正確に捉え、将軍の剣を打ち落とした。
「これで終わりだ、レオンハルト!」
ディオンの勝利は、通信室に響き渡った。そして、リゼットとエリック、レオの連携により、ゾラもまた拘束された。
レオンハルトとゾラが捕らえられ、ヴァルガス帝国の強硬派は瓦解した。リアム王子は穏健派を率いて、アークランドとの真の和平交渉を開始。リゼットの力は、和平交渉を優位に進める「光の力」として、正式に認められた。
ディオンは、身分を超えてリゼットの傍らに立つことを許され、王女の守護騎士として、リゼットを支え続けた。
テラスで、リゼットはディオンの手を握り、微笑んだ。
「ありがとう、ディオン。あなたが私の光になってくれたから、この国は平和になった」
ディオンは、愛するリゼットを見つめ、静かに答えた。
「俺の忠誠も、愛も、すべてはあなたのためにあります、リゼット様。あなたとこの国を守るためなら、俺は何度でも、立ち上がります」
二人の誓いの口づけは、アークランドとヴァルガス、そして愛と信念が試された、すべての戦いに終止符を打ったのだった。




