第三十三話:光の王女
ディオンとレオが秘密裏に追跡を続ける中、リゼット王女とリアム王子は、王宮の謁見の間で緊急の集会を開いた。集められたのは、国の要人、中立派の貴族、そして王宮を代表する一般市民たちだった。
国民や貴族たちは、前騎士団長アルフレッドの拘束という未曽有の事態と、ヴァルガス王子という婚約者候補の突然の登場に、不安と戸惑いを隠せない。
リゼットは、静かに、しかし決意を込めた眼差しで集まった人々を見渡した。隣には、柔和なリアム王子が立っている。
「私は、今、あなた方に訴えます。これまで『異端の呪い』として恐れられてきた私の力、『予知夢の力』は、ヴァルガス強硬派による我が国への陰謀を暴く、未来を守るための光であると」
リゼットは、ゾラが仕掛けた毒の真相、そしてアルフレッドが「大義」という名の誤った信念に囚われていたことを、包み隠さず話した。
「私の予知夢がなければ、私たちは、ヴァルガス強硬派の罠にかかり、国は滅亡の危機に瀕していました。この力は、誰かを傷つけるためのものではなく、このアークランドの平和と、愛する国民の未来を守るために授けられたものなのです」
国民の間には、長年の「異端」という呪縛から、すぐに受け入れられない空気が流れた。そこで一歩前へ出たのが、リアム王子だった。
「リゼット王女殿下の力は、決して『異端』ではない。それは、ヴァルガス帝国では『高貴な魔力』として尊ばれるべきものです」
リアムは、ヴァルガスの魔術知識に基づき、リゼットの予知夢の力が強硬派が狙うほど強力で、国家の危機を回避する上でいかに重要であるかを、論理的に説明した。
「私の国の強硬派は、この力を恐れ、封じようとした。それは、彼らがリゼット王女殿下の力を、我がアークランドの最大の防衛線と見なしていた証拠です。この力こそが、ヴァルガスとの真の対等な和平の鍵となる」
彼は、穏健派の代表として、強硬派の陰謀と、リゼットの力を恐れる必要がないことを、力強く国民に訴えかけた。
リゼットの真摯な決意、そしてディオンという騎士が命を懸けて彼女の力を守り抜いたという事実は、人々の心に深く響いていた。リアム王子の論理的な擁護と、二国間の平和への強い意志は、彼らの不安を少しずつ溶かしていった。
集会の終わりには、国民と貴族から、リゼットの「光の力」を認め、平和を求める声が湧き上がった。
リゼットは、その光景を静かに見つめた。隣にはリアム王子。そして、心の中には、自分を守り、愛を誓ってくれたディオンがいた。
公的な支持を得たリゼットは、リアム王子と共に、ヴァルガスとの和平交渉を、強硬派ではなく穏健派のリアム王子が主導するという決定的な合意を取り付けた。これにより、強硬派の陰謀は、外交面でも封じられ始めた。
しかし、ディオンからの最終報告が、リゼットの決意を再び揺さぶる。
「今夜、最終作戦決行」という報せが、王宮に届いたのだ。




