第三十ニ話:純粋なる情報網
ディオンとレオが、ヴァルガス強硬派の隠された作戦基地から戻った直後、エリック王子は興奮気味にディオンに駆け寄った。彼の純粋な奮闘が、最後の作戦に不可欠なピースをもたらしたのだ。
エリックは、王宮内の使用人たちとの絆を頼りに、強硬派に加担している人物の情報を集めていた。
「ディオン、聞いて! キッチンのおばさんが教えてくれたんだ」
エリックは、通常の貴族がしないような、分け隔てない親切さで使用人たちの心を開かせた。彼の純粋な「みんなの笑顔がほしい」という願いは、私心を捨てた情報源となった。
「強硬派に賛同している財務担当のサマーズ卿が、昨夜、王宮の外の怪しい人物と密会していたんだ。サマーズ卿は、普段は絶対に冷たい水を飲まないのに、その夜は妙に喉が渇いていたって」
ディオンはその情報をすぐにメモした。サマーズ卿は、強硬派に多額の資金提供を行っているという裏の情報をリアム王子が掴んでいた人物だった。
また、エリックは中立派の貴族たちにも接触していた。政治的な駆け引きを一切せず、ただ「この国の善良な人々が、恐れずに暮らせる未来」を望む純粋な思いを伝えた。
彼の真摯な訴えは、中立を保っていた貴族に「自己保身」を超えた大義を思い出させた。
その結果、中立派のヴィンセント伯爵が、強硬派の貴族がリゼットの演説の場で意図的な妨害工作を仕掛け、演説を中止に追い込もうとしている計画の情報を、エリックに密かに伝えた。
「姉上の演説の場で、わざと混乱を起こさせようとしているんだ! でも、これで事前に手を打てる!」エリックは誇らしげに胸を張った。
ディオンは、その情報を聞き、深く感謝した。
「エリック王子。あなたは、我々が剣で切り開けない、人々の心という最も重要な情報を開いてくれた。本当にありがとう」
エリックの純粋な活躍により、ディオンたちは強硬派の最終的な狙いと、それを阻止するための確かな情報を手に入れることができた。




