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大神殿の巫女長であるクラーヴィアは“祈りの間”にて夜半の祈りをささげていた。
魔灯を数本ともしたのみの祈りの間は静寂に満ちていた。
祈りを妨げるものは何もなく、今日一日の感謝を心のうちでささげ、日課の祈りを終えようとしていた。
(空気が......)
クラーヴィアは一瞬風が通り抜けたような感覚を持つ。だが、扉が開いた気配はない。が、閉じたまぶた越しに違和感を覚えた。
ゆっくりと頭をあげ違和感のもとを探る為に辺りを見渡す。
それは祭壇、女神像の前。
何かが淡く光っている。
先程までは何もなかった。
クラーヴィアが祈りの間に入ってから誰もこの空間には入ってきてはいないはず。
仮に誰かが来たのであれば、結界が反応する。
祭壇前の光はだんだんと収まっていく。
訝しく思いながらもクラーヴィアは祭壇に、女神像に近づく。
光が消えたそこには一人の少女が横たわっていた。