表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王様の隠し事  作者: 木に生る猫
番外編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1217/1218

リテアはいい子③

「リテアちゃんは凄いねぇ〜。もうこんなに作業が進んでるなんて……」

「ふふーん」


 ディライトに褒められ、リテアは胸を張って嬉しそうに笑ってみせた。

 ぐりぐりぐりぐりと頭を撫でられ、リテアはぴょんぴょんと飛び跳ねて喜ぶ。


「私、凄いですか? いい子ですか?」

「凄くていい子だよ〜。でも、後はもう具材に火入れたりするだけだし……他のところに行ってこようね〜」

「はいっ! ……でも、誰のところに行きましょう。天使さんたち……? 父様……の、書類には触らせてもらえないから……大伯母様……?」

「ダメ。マリーツィアのところは、ダメ。いいね?」


 ディライトが圧を掛けながらリテアにそう言うと、リテアは若干不服そうながらも、こくりと頷いた。

 ディライトがマリーツィアのことを嫌っているのはリテアも知っているし、少しずつ改善はされているものの、その怒りと嫌悪は妥当なものだと、リテアも理解しているから。

 不用意に名前を出してしまったな、と少し反省しつつ、リテアは一先ず厨房から出た。


「うーん……レアちゃんと姉様のところは……急に押しかけても、困ってしまいますよね。他には……他には…………」


 どうしても思い付かなくて、リテアはむむむと唸りながらヴェルジアの元へと向かった。

 天使たちはきっと手伝わせてくれないから、まだヴェルジアの方が可能性はある。

 ヴェルジアの執務室に到着すると、コンコン、と扉をノックして、リテアはヴェルジアの返事を待った。


「入っていいよ、リテア」

「失礼しますっ、父様!」

「どうしたの? また来るなんて……」


 リテアを部屋に入れるなり、そう声を掛けてきたヴェルジアにリテアは小走りで駆け寄った。

 そして、その様子を確認してからぎゅうっと抱き着くと、リテアは嬉しそうに訊ねる。


「父様! 何か、お手伝いできることはありませんか?」

「手伝い? ……んー……お手伝い頑張っててえらいけど、疲れてない? 疲れたらちゃんと休むんだよ?」

「まだ大丈夫ですっ。それで、お手伝いは……!」

「……あ〜……うーん……わかった。これは触らせられないから……お茶を淹れてきてくれないかな? そろそろ休憩しようと思ってたんだ。自分の分も用意しておいで、一緒にお菓子でも食べよう」

「お菓子っ! ……あ、でも……私、もうおやつを食べてしまいました……もし兄様にバレたら、怒られてしまいます」

「そうなの? んー……ちょっとディライトに相談してみるね。とりあえず、一緒にお茶は飲もうか。用意してくれる?」


 はい、と元気よく返事をして、リテアはお茶の準備に向かった。

 相変わらず元気そうなその後ろ姿を眺めつつ、ヴェルジアはディライトに連絡を取る。

 作業と並行してヴェルジアが相談をしていると、リテアが危なっかしい動きで紅茶を運んできた。

 ヴェルジアは微笑みながら立ち上がり、リテアから紅茶を受け取って机に並べる。


「……リテア。クッキー数枚くらいなら、特別に許してくれるって。ただ、もう夕食が近いから……食事に支障が出ない程度しかダメだよ。僕も、リテアと同じくらいしか食べないから」

「むっ……兄様ったら、私がたくさん食べると思っているんですね! おやつはもう食べたんですから、節度くらいは守れるのに! 特別に、なんて言葉を付け足さなくても、それくらいわかっています……」

「あはは……食べすぎて夕食が食べられなくなったら、リテアが落ち込むと思って言ったみたいだし……数枚はって許してくれたのも、お手伝いを頑張ってるところを見てたからみたいだよ。あんまり怒りすぎないであげて」

「父様は兄様の味方をするんですか? 父様は、私の父様なのに!」


 拗ねているリテアに苦笑いして、ヴェルジアはその頭を撫でた。

 ディライトはきっと色々考えた上でああ言ったのだろうが、それでもリテアの顰蹙を買ってしまったらしい。

 リテアはむっとして、自分の淹れた紅茶を飲む。


「……美味しくできたので、早く飲んでほしいです」

「ん? そうなの? じゃあ、いただきます……ああ、本当だ、これまでで一番美味しいね……香りがよく出てる」

「えへへ……上手にできてるでしょう? たまに練習していたんですよ! 苦味……渋味? が、出てないでしょう……!」

「これまでのも美味しかったとは思うけど……まぁ、でもそうだね。うん……これまでで一番美味しい」

「……私の淹れた紅茶……いつもちょっと、苦いのに。どうしてみんな、これはこれで美味しいって言うんですか?」


 心底意味がわからない、と言いたげな顔で、リテアは首を傾げた。

 苦味や渋味のある紅茶は、美味しくなんてないはずだと。

 そんなリテアに、ヴェルジアは薄く微笑む。


「大好きなリテアが、一生懸命淹れてくれたものだから。どれだけ苦くても、渋くても、美味しく感じるんだよ。苦味も渋味も、ちょっとしたアクセントでしかなくなるんだ。ふふ……」

「……そうなんでしょうか……。……でも、まぁ、いいです。私、上手に紅茶を淹れられるようになったので! これからは、みんなに美味しい紅茶を楽しんでもらえます!」

「ふふっ、そうだね。……リテア、ほら。クッキー美味しいよ」

「あむ……んん〜っ、んふふふふ……」


 幸せそうにクッキーを頬張るリテアに、ヴェルジアは頬を緩めて笑った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ