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魔王様の隠し事  作者: 木に生る猫
番外編

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リテアはいい子②

 リアの仕事の手伝いを完遂すると、リテアは次にキッチンに向かった。

 確か、今日の夕食の担当はディライトだったはずである。

 ちらりと顔を覗かせてみれば、何らかの野菜を刻んでいるディライトが見える。


「……兄様。お手伝いに来ました」

「あ、リテアちゃん……さっきはごめんね〜。ちょっと動揺しすぎて……リテアちゃんのやる気を削ぐようなこと言っちゃったね。ごめんね……まだ怒ってるなら、無理に手伝いなんてしなくてもいいよ〜?」

「いーえっ、手伝います! リテアはいい子なのでっ!」


 ぷん、と顔を背けながらリテアはそう言い、ディライトの傍に立った。

 そのままちらりとその手元を見ていると、話しながらも手は動かしていたようで、いつの間にかまな板の上には肉が置かれている。


「……何のお料理ですか?」

「スープだよ。適当なスープ。リテアちゃんには……ええと……ああ。あそこの籠にハーブが置いてあるから、葉っぱだけ千切っておいてくれるとありがたいかな〜。茎は使わないんだよねぇ〜……あ、別で利用はするから、捨てずに分けておいてくれればいいよ〜」

「わかりましたっ」


 リテアはいつの間にか傍にあった足場にぴょんっと飛び乗ると、いくつかのハーブを手に取った。

 そしてリテアは、少し楽しそうにぷちぷちとハーブの葉っぱを千切り、茎と葉っぱとで分けていく。


「……リテアちゃん。手、匂い嗅いでみて〜?」

「えっ? ……あっ、美味しそうな匂い……」

「そうそう。触ると手に匂い付くんだよね〜、面白いでしょ〜?」

「……お花とかも付きますか!? 付くなら、手がお花のいい匂いに……!」

「……物によるだろうけど〜……えっと、まぁ、ハーブよりは付きにくいんじゃない〜? 付くのは少なそうだよね〜……」

「……そうですか……」

「もし付けたいなら香水とか香油とかが手っ取り早いし、花そのものにこだわるならヴェルくんにおねだりでもしてみたらどうかな〜? きっと叶えてくれるよ〜、条件付きだろうけど」

「……いえ、大丈夫です。おねだりなんて可愛い言い方をしても、我儘は我儘ですから!」

「……我儘かなぁ?」


 不思議そうにディライトは呟きつつ、だが特には触れずに料理を続けた。

 リテアも無心でぷちぷちと葉っぱを千切り、全て分け終えると満足そうに胸を張る。


「ぱちぱち〜。凄いねぇリテアちゃん」

「に、い、さ、ま! 子ども扱いしすぎです! ……次はどうしたらいいですかっ」

「ん〜……包丁を使わせるのは、まだちょっと怖いかな〜……鍋見ないといけないから、付きっきりでは見れないし……ヴェルくんに怒られそう。ん〜……」

「お鍋、見ておきますか?」

「……そうだねぇ。魔法で火の管理くらいなら、片手間でもできるかな〜……じゃあよろしく〜。えっとね〜、具材が煮えてるか確認しておいてほしいんだよね〜。スープ自体は、別に混ぜたりしなくても大丈夫だから」


 ディライトの言葉にリテアは頷くと、鍋の中に浮かぶ具材を見た。

 少し小さめに切られたそれらはいつも通りとても美味しそうで、リテアはごくりと唾を飲み込む。

 ちらりと隣を見てみると、ディライトは、一部のハーブを細かく刻んでいた。

 今ならきっと、見ていないことだろう。

 リテアはそーっと具材を掬い、それを口元へと運んだ。

 食べ慣れた、大好きな味が口の中に広がり、リテアは幸せそうに頬を緩める。


「美味しい〜?」

「美味し……んっ!? むぐっ、んぐ……! な、なんでバレて……」

「そりゃあ真隣で食べてたらね〜……くふふっ、あんなに幸せそうな顔して、作った側としては嬉しくてしょうがないけどね〜。……ただ……いくら美味しそうだからって、煮えてるかわからないもの食べないで……煮えてなかったらあんまり美味しくないよ〜?」

「え、えへへ……あまりにも美味しそうで、食べちゃいました……はっ! だ、だめです、リテアはいい子なのに……! つまみ食いなんかしちゃ……あ、ああ、どうしましょう……!」


 うわぁん、ととても悲しそうな顔になったリテアの頭を、ディライトはぽんぽんと撫でた。

 そして、見透かすような瞳をして言う。


「色々考えたんだけど〜……リテアちゃん、いい子になりたいんだよね?」

「……悪戯は、好きですけど……そればっかりでは、大人になんてなれません!」

「大人になりたいんだねぇ〜……ボクも悪戯好きだけど、結構大人だと思うけど〜? それはどう思ってるかな〜? ヴェルくんのこと、育て上げたし……」

「……。……えっと……その。……兄様のこと、大人だと思っていませんでした」

「げほっ……ん、んん……! そっか……そっかぁ〜……」


 ショックを受けつつも、ディライトはなんとかそう口にした。

 ちゃんと叱って、勉強も見ているはずなのだが、大人としては見ていなかったらしい。


「……じゃあ、ボクのことなんだと思ってたの?」

「兄様は兄様です。兄様が、父様の父様なのは、知っていますけど……でも、私にとっては兄様は兄様なんです。大人じゃないですけど……凄く年上の、兄様?」

「……ん〜。可愛いから許しちゃおうかな〜……くふふっ」


 ディライトは笑うと、ぐしぐしと少し力を込めてリテアの頭を撫でた。

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