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魔王様の隠し事  作者: 木に生る猫
番外編

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1212/1213

ifストーリー 楽しい学園生活㊷

 学園から離れ、近くに学園の生徒がいなくなると、リウは未だリウの鞄を持ったままのレインの手首を掴んだ。


「いい加減にして。こんな方法で無理矢理私の一緒に帰るなんて……何がしたいの? こんなことをしても私がもっとあなたのことを嫌いになるだけだって、わかっているでしょう」

「うん、わかってる。……ごめんね、どうかしてた……はぁ、鞄返すよ」

「えっ、……あ……ありがとう……?」


 やけに素直なレインに面食らいつつ、リウはそっと鞄を受け取った。

 そのままそろりと距離を取ろうとするが、レインはしっかりと着いてくる。


「なんで着いてくるの。鞄はもう私のところにあるんだから、着いてこなくてもいいでしょう」

「一緒に帰りたいから」

「私は一緒に帰りたくない」

「だってリウ〜……僕、邪魔しないように我慢してたよ? 一日くらい、ご褒美として一緒に帰ってくれてもいいんじゃない? 一緒に帰るだけでご褒美になるんだよ? お得じゃない?」

「お得じゃない。いいから離れて、鬱陶しい」


 ふい、と顔を背けてリウが足早にレインから離れようとするが、レインは平然とそれに着いてきた。

 そんなレインに苛立ちを募らせつつ、リウはもう一度レインに向き直る。


「……要求は?」

「ふふ……凛々しい表情のリウも可愛い。……僕は君のことが好き。知ってるでしょ? でも、それは僕の一方通行で、こんなのはただの我儘。我儘だってわかってるけど……こんなの、間違ってるけど。それでも、君が僕のよく知らない人と楽しそうにしてて……どこか遠くに行っちゃうんじゃないかって思った。まぁ、それも当然のことなんだけど……愚かな僕は、そのせいで、リウの鞄を奪うなんて愚行を……」

「あら、よくわかっているじゃない。褒めてあげる。――レイン、えらいえらい……いい子ね」


 死んだ魚のような目をして自分を愚かだと見下すレインに、リウはうっすらと笑みを浮かべてその頭を撫でた。

 なんだかんだ、幼馴染である。

 こういう時のレインへの対応くらい、心得ている。


「……すぐそういうことするぅ〜……顔が、顔が近い……」

「ご褒美はこれで終わり。わかったら、大人しく一人で帰りなさい」

「……そういうことするせいで僕がリウのこと手放せなくなってるってことわかってる? ねぇ、わかってやってるの? 天然でそれやるのはわざとそれやってる僕よりタチ悪いからね」

「着いてこないでってば……何が言いたいの……?」


 よくわかっていなさそうなリウに、レインは言葉を詰まらせて押し黙った。

 愛され上手、なんて言葉では足りないくらいに、リウは天然の人誑しだ。

 これまでそこまで深い繋がりの無かったスティルペースも、友達になったらあっという間に絆されてしまった。

 リウは人を誑し込む天才だと、レインは本気で思う。


 ただ、天然で人を誑し込むリウと、必要なら自分で打算的に、計画的に人を誑し込むレイン、どちらの方がタチが悪いかは議論の余地があるだろうが。


「それで。どうしてご褒美をあげたのに、一緒に行こうとするの?」

「帰り道が同じだから。同じ時間に出発した時点で、こうなるのは必然だよ。僕は今日なるべく早く帰ってくるよう言われてるから回り道はできないし、リウも今日はリアの勉強を見る約束をしてるから回り道はしたくない。でしょ?」

「どうして約束のことを知っているの……?」

「朝、すれ違った時に自慢された。こればっかりは偶然だよ」


 何をしているの、とリウはリアに文句を言いたくなったが、その光景を想像したところあまりにも可愛かったので、何も言わずに口を閉ざした。

 そして、行き場のなくなった不満をレインにぶつけつつ、リウはゆっくりと溜息を吐く。


「仕方無いわね……今日はあなたの策略に嵌ったままにしておいてあげる。でも……そうね。一週間、あなたとは口を利かないから」

「えっ……で、でも、学園では――」

「口を利かないわ。喧嘩をした、ということなら誰も疑いはしないでしょう? 聖人扱いされている私でも怒ることくらいはあるのだと、みんなに知らしめる良い機会だわ」

「ま、待って、ごめん、わかった、僕は走って帰るよ!」


 焦った様子で口にしたレインに、リウはゆっくりと笑みを浮かべた。

 そして、こてんと可愛らしく首を傾げて、目を細めて言う。


「必要な時以外、立ち止まっちゃダメよ? 破ったら……」

「わ、わかったわかった、もう行くから! ……わざわざご褒美までくれて、ありがとう!」


 レインはしっかりとお礼を伝えてから、急いで走り去っていった。

 リウはその後ろ姿を眺めて薄く笑みを浮かべると、ゆっくりと歩き始める。

 ご褒美をあげるに至った経緯はさておき、いつもあれだけ素直なら嫌いになったりしなかったのに、と思いつつ、リウは溜息を吐いた。

 無事に追い払えたのはいいことなのだが、少し気疲れしてしまった。


「……早く帰って、可愛いリアの顔を見ないと……」


 気疲れの回復には、可愛い可愛いリアを見るのが、リウにとって一番だ。

 だからリウは、頭の中に可愛いリアの笑顔を思い浮かべると、少し早足で家へと向かった。

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