ifストーリー 楽しい学園生活㊶
リウがリアが淹れてくれた紅茶を飲んでいると、スマホから通知音が鳴った。
それを見てみると、スティルペースが写真を一枚送信してきたようで、リウは首を傾げながらアプリを開いてみる。
すると、スティルペースが恥ずかしそうにリウが贈った服を着てポーズをしている、自撮り写真が送られてきていて、リウは目を丸くする。
その格好をしっかり観察してみると、元から持っていたものを合わせてみたようだ。
「ふふ……えーっと。そうねぇ……凄く可愛い……で、いいかしら? 似合ってる、の方がいい……?」
「誰が可愛いんですか」
「スティルペース。私が贈った服を着て、写真まで撮ってくれたの。感想を全部伝えるには、少し長くなりすぎるから……うん。やっぱり、凄く似合ってるって伝えましょう」
リウはそう言って頷くと、ぽちぽちとスマホを操作してスティルペースに感想を伝えた。
そしてリウはスマホをおくと、上機嫌に足をぷらぷらと揺らして紅茶を口に運ぶ。
「……ふふ……学園祭、楽しみね……」
「お姉さまが悪い顔を……何を考えているんですか?」
「だって、校舎全体を使えるかもしれないのよ? やりたいことくらい山のように溢れてくるわ。そうねぇ、例えば……おばけ屋敷とか、謎解きとか、仕掛けを考えるのがとっても楽しそう! 揃えるものはそれなりにあるけれど、どうにでもできるでしょう。後は……そうね、テーマに則るなら、大切になるのはあくまでも一体感。各教室で少しずつ雰囲気を変えて……ふふふふふふっ……」
怪しい笑い方をし始めたリウに、リアはじとりとした視線を向けて溜息を吐いた。
楽しいことになりそうなのは同意だが、あまりにも笑い方が怪しすぎる。
「……考えるのはいいですけど、実現可能なものじゃないと、採用なんてありえないですからね……?」
「もう、リアったら。それくらいわかっているわ、お姉さまのことを何だと思っているの?」
「空想と現実の分別くらいは付いていると思いますが、予算なんかは度外視してしまう人だと思っています。何年お姉さまの妹をしてきていると思っているんですか」
「リアったら、心配性なんだから……ふふん、本格的な案出しが楽しみね。クラスで決めることは、例年より少ないかもしれないけれど。クラスだけでは、何をするのか決められなくなるわけだし」
ふぅ、とリウは息を吐き出し、その日を楽しみに待つことを決めるのだった。
◇
いつか来る案出しの日に胸を躍らせて、幾夜過ぎただろうか。
ようやく、その日が訪れて、リウはニコニコと教師の話を聞いていた。
今年のテーマは〝繋がる絆〟で、クラス別ではなく、学校全体で何かしらの出し物をすることになったこと。
今日はその内容について話し合うが、それだけで出し物は決まらない、などなど。
こうなるだろうな、とリウが想像していた通りのことを説明され、話し合いは始まった。
さて、何から提案するべきか、とリウは思案する。
テーマを考えた張本人であるリウは、以前からどんな案を出すか考えていた。
だからその頭の中には、誰よりも多くの案が存在している――が。
先陣を切るべきではないかもしれないな、とリウは周囲に視線を巡らせた。
自分が多くの、それも充分に考えられた案を提案してしまったら、自分自身に同等を求めてしまう子もいるかもしれない。
だから、しばらく様子を伺ってから案を出そうと決めて、リウは誰かが案を出すのを待つ。
だが、新しい試みというのもあってか、案を出す人は中々いなかった。
仕方が無いので、リウはどの案を口にするか慎重に吟味してから、手を挙げて先陣を切る。
「予算などについてまでは、考えられていないのですが……謎をたくさん考えて、お客様に解いてもらうのはどうでしょう。えっと……謎解き屋敷? 脱出ゲーム……?」
明確な呼び名はよくわかっていなかったので、リウは首を傾げながらそんな提案をした。
一先ず発表はしたので、リウは椅子に座りつつ周囲の様子を確認してみる。
これで多少は発表しやすくなっただろう、と。
こんな感じでいいんだよ、とリウがお手本を示してみせると、ぽつぽつと案が上がり始めた。
それにリウはほっとしつつ、しばらく案が出されていくのを眺める。
それはどれも楽しそうで、やりたいことが詰まっていて、見ているだけでも楽しい気持ちになる。
だからリウも、そろそろ我慢ならなくなってまた一つ案を挙げた。
「宝探し……なんてどうでしょう? 実行委員の方にも、比較的負担は少なく……クラスでできることも多いと思うんです」
にこ、と笑ってリウはそう言い、再び椅子に座った。
それからもいくつか案が出て、クラスだけでは決められないためにそれらの案は実行に預けられる形になる。
結論が出るのは、しばらく先になることだろう。
それからは授業が始まり、放課後になると、リウは駆け足でスティルペースに駆け寄った。
「スティルペースぅっ、ぎゅ〜っ」
「ひゃあ!? や、やめてください、リウさん……! あ、あれから毎日毎日……」
「毎日じゃないわ、あなたと一緒に帰りたい時だけよ。ふふ……ねぇ、だめ?」
「うっ……いつもはそのお願いを聞いていますけど、今日はダメです。先約がありますから」
「まぁ……そうなのね。それは……残念だけれど、仕方が無いわ。じゃあ、また次の機会に一緒に帰りましょうね」
少ししょんぼりしながらリウがそう言ってスティルペースから離れ、鞄を持ち上げた。
しかしすぐに上から手が降ってきて、鞄を奪われる。
「……あっ……!?」
「ここ数日、ずっとあの子と帰ってるよね? たまには僕とも一緒に帰ろう?」
「いいから返してっ。持たなくていいから……! あなたとはいいの、一緒には帰らない。だから返して」
「やだ。ほら、とにかく行こう」
レインにそっと手を握られ、リウは渋々手を引かれて歩いていった。
だがそう易々と、レインとともに帰ってやるつもりはない。
だが一先ず、知り合いに見られないようこのまま学園から離れなければならない。
「……逃さないからね?」
低く囁かれた言葉に、リウはこっそりとレインを睨みつけて、絶対に一緒には帰らない、と心に決めた。




