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魔王様の隠し事  作者: 木に生る猫
番外編

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1208/1213

ifストーリー 楽しい学園生活㊳

 それからリウとスティルペースは、ショッピングモールの服屋さんを訪れていた。

 普段は行かないその場所に、リウはきらきらと目を輝かせる。


「わあ……ふふ、いつも行っているところと全然雰囲気が違うわ! 凄いっ、なんて気楽な場所なのかしら……!」

「リウさんは……そうでしょうね。……今更ですけど、こんなところに連れてきても良かったんでしょうか? 学園が同じでなければ、雲の上のような人だったはずなのに……こんな、庶民向けのお店に……」

「んー……? ……ああ……大丈夫よ、連絡はちゃんとしてあるし。どうか気にしないで。ふふ……普段はこういうところ行かないから、とっても楽しいし!」


 明るい表情で笑うリウを見て、スティルペースはほっとした表情を見せた。

 その顔を見ながら、リウはニコニコしたまま、内心で近くに護衛の人がいるのは内緒にしておこう、と心に決める。

 そんなことを伝えたら、緊張して遊ぶどころではなくなるに決まっている。


「……あっ……これ、猫ちゃんの柄のお洋服? 可愛い……」

「リウさんの私服、お上品なものばかりですもんね。こういうのには、馴染みがありませんか?」

「ええ……こんなの、初めて見たわ! 凄い、可愛い……! うーん……外には着ていけないけど、部屋着なら……許してもらえるはず? とっても可愛い……ええと、これは……店員さんに伝えたりしなくてもいいのよね? これを持って、レジに行ってお会計……」

「はい。でも、もう少し回りましょう。お会計は最後ですから」


 ええ、とリウは頷き、慣れた様子で歩き始めるスティルペースの後ろを歩き始めた。

 だが、可愛らしい動物のイラストが印刷されている服なんかを見つけると、リウは足を止め、まじまじとそれを眺める。

 そういうものは普段行くお店には置いていないので、とても興味を惹かれるだろう。


「……部屋着として活用できるなら、好きなものを買っていいと思います」

「す、スティルペースぅ……誘惑しないで頂戴な……ただでさえ服がたくさんあるのに……うぅ、でも欲しい……一旦、保留……! ……コホンッ、スティルペースは欲しいものがあるのよね? どんなのが欲しいの?」

「ああ、えっと……その。……リウさんはご存知ですよね、私が……誰と付き合っているのか」

「ああ……そういうこと。新しいデート服ね? 気合の入った、可愛い服が欲しいのね。任せて!」

「えっ?」


 リウが気合を入れ、ちらりと周囲を眺めると迷いなくいくつかの衣服を手にし、ぐいっとスティルペースに押し付けた。

 そして、満面の笑みで言う。


「試着、してきてっ!」

「え……」

「……あ、嫌だった? 自分で選びたかったかしら、ごめんね」

「あ、ああ、いえ、そういうわけじゃないんです。ただ、リウさんがおしゃれに拘っているイメージが無かったので、驚いてしまって……」

「自分のおしゃれに興味は無いの。でも、他人を飾り付けるのは好きよ。安心して、私のセンスは色んな人に認められているから! とりあえず、試着してみて!」


 ワクワクした様子でもう一度、試着してみてと口にするリウに、スティルペースはおずおずと頷いて試着室に移動した。

 リウはその近くで服を見つつ、スティルペースが着替え終わるのを待つ。

 少しして、ゆっくりと試着室のカーテンが開いた。

 リウが振り向くと、そこには清楚で可愛い服を身に纏ったスティルペースが立っている。


「あの……どうでしょうか? 少し、不安で……」

「ふふん……見立て通り、とっても似合っているわ!」

「……で、でも、靴やカバンまで……可愛いですけど、こんなに買うつもりはなくて」

「あら? 私が選んだんだもの、お金は私が出すわ」

「えっ!? い、いえいえそんな! 申し訳ないですから……! お金を出させるなんて、そんな……」

「むぅ……酷い言い草。心外だわ。……安心して、スティルペース。私はただ、あなたにこれらをプレゼントしたいだけなの。だから……どうか、受け入れてはくれないかしら」


 リウがそうお願いしたものの、スティルペースはどうしても申し訳なく感じるのか、ふるふると首を横に振った。

 それにリウは困った顔をすると、躊躇いがちに言う。


「……あの、ね、……お友達と、プレゼントのし合い……みたいなの、憧れてたの。一着でいいの、もし良ければ……私の分のお洋服、選んでくれない?」

「プレゼント……でも、一式と一着では、量も値段も差が……」

「……もう! 面倒になってきてしまったわ……気にしないでいいのに、みんな私の立場を気にしてしまうんだから……! いいかしら、スティルペース! 私はお金に無頓着だから、値段がどうこうとかは全く気にしてない。私の立場を気にして、自分が私よりも多くをもらうことに気が引けるのでしょうけれど……私は、そうやって遠慮されることの方が嫌。私、ずっと遠慮されてきたのだもの。お友達には、遠慮なんてされたくないわ」

「……わ、わかりましたから……近いです……」


 スティルペースがそう指摘すると、リウは無意識に詰め寄っていたことに気が付き、恥ずかしそうに距離を取った。

 そして、おずおずとスティルペースを見上げると、もう一度お願いする。


「その……プレゼントのし合いっこ、してくれる……?」

「はい、大丈夫です。……学園ではそういうこと、しないでくださいね……嫌ではありませんけど……」


 距離の近いリウにそう言い、スティルペースは苦笑いした。

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