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魔王様の隠し事  作者: 木に生る猫
番外編

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レインの勇者育成スパルタ指導?⑳

 ユウはソファーに腰掛けると、言いづらそうにしながらも話を始めた。


「俺……望まれて生まれたわけじゃないらしくてさ。父さんにも母さんにも、優しくされたことないんだ……いつも自分でご飯を作ってた。家事も、俺がしてて……学校でも、疲れてるのがわかるのか……やつれてるって、距離を置かれてたんだ。友達はいなくて……先生は……優しい先生もいたけど、慰めるばっかりで何もしてくれなかった。……だからさ! 凄く、嬉しかったんだ……こっちに来てから、新鮮な食材が食べられるし、家事も全部俺がやる必要は無いし……レインさんとレイシェさんは、俺のことを褒めてくれるから」


 真っ直ぐ二人のことを見て、ユウが微笑むと二人はお互い顔を見合わせ、示し合わせてユウを抱き締めた。

 それが当たり前だったから平気な顔をしていたが、それでもずっと孤独感に苛まれていたのだろう。

 孤独への恐怖は、最初からそれが当たり前だったとしても、最初から人間に備わっているものだから。


『大丈夫ですわ、ユウ君。ここには、そんなことを強制する人や、あなたを除け者にするような人はいませんからね』

「……もしそんな人がいたら、僕に教えて。罪人として色々制限はあるけど……ふふ。身内を傷付けられた仕返しくらいは、してあげるから。もちろん、ほどほどにね?」


 絶対に怖いことを考えているレインに、レイシェはじとりとした視線を向けて溜息を吐いた。

 まぁ、そもそもそんな人はいないし、いたとしても本当に大したことはしないだろうから、レイシェは何も言わないでおく。

 ただ、その大したことないことで最大限のことをやるのがレインなのだが。


『……さて、ユウ君のお部屋を用意しないといけませんわね。少々狭いですけれど、物置部屋がありますし、整理してくつろげる場所にいたしましょうか』

「うん、そうだね……けど、今は大丈夫でもその内狭く感じるだろうし、空き時間にちょっとずつ増築作業しておくよ」

『ええ……残念ながら建築についての知識はありませんので、少しばかりのお力添えしかできませんが……指示さえ下されば、いくらでもお手伝いいたしますわ!』

「……増築?」


 なんか当然のようにレインが増築をしようとしているので、ユウが困惑した表情になった。

 増築を自分でしようとする人なんて、見たことがなかったので。

 だが、これまでレインと一緒に過ごしてきて、ほとんどなんでもできる超人めいたところを何度も目にしているので、結局はレインからできるか、という結論に落ち着く。


「……えっと……とにかく、ありがとう! 家に人が増えるなんて大変なことだと思うし、俺の我儘を聞いてくれて……本当に、感謝してる」

「いいんだよ、気にしないで。知らない世界で新しい環境で暮らす……っていうのも、大変だろうしね。僕のせいでもっと良いところに引っ越しとかできないのが申し訳無いよ」

「……でも、仕事増えるんだろ……?」

『お兄様は元々、忙しいことをお好みですから。リウも過労は良しとしないでしょうし、本当に気にしなくていいのですわ』

「……償いのためなら喜んで働くけど、別に忙しいのが好きなわけじゃないからね……?」


 誤解を招くことを言うレイシェに困った表情でそう言いつつ、レインは家の中に視線を巡らせた。

 そして、部屋を増やす位置を検討しつつ、ユウの頭を撫でる。


「……これから、どうしようか。もう特訓なんて必要ないし……自衛ができる程度の実力は付いてるんだから、鈍らない程度にたまに剣を振るくらいで大丈夫だけど」

「あ……そっか、必要だった修行も、もういらないんだもんな。……でも俺は、レインさんやレイシェさんのことを守りたい。勇者になりたいわけじゃないけど……頑張って修行したのに、呆気なく気絶させられちゃったし」

「……頻度は落とすとして、空き時間に修行を付けるのはいいけど……あれを指標にしない方がいいよ……あれ、リウだもん。どれだけ鍛えても絶対無理。僕でも本気で気配殺されたら……昔はともかく、今は察知なんかできないよ」


 レインが肩を竦めながら、あれを指標にするのだけはやめておけと忠告した。

 ユウがお願いしたとて、リウはわざわざあれを再現しようとはしないだろうが。


「えっ、そうだったのか……えっとじゃあ……」

「……僕を目標にもしない方がいいよ。元世界最高峰だから。人間が至れる、最高到達地点と言ってもいい。一先ずレイシェの防御を破るくらいでいいんじゃない? 本気を出せば、かなりのものになるでしょ?」

『まぁ、お兄様ったら……その通りではありますけれど。そうですわね、わたくしなら調整して、段階的に目標を立てることも可能ですから。適任、とは言えるかもしれませんわね』


 ふふん、とレイシェが嬉しそうに胸を張り、ユウに微笑んだ。

 ユウも微笑みを返して、嬉しそうに言う。


「じゃあよろしくお願いしますっ、レイシェさん! ……なんか、色々よくわかんない言葉も出てきたけど……」

『気にしない方がいいですわ。お兄様は、隠し事を減らしているだけで……気にしてほしいわけではありませんから。……今日からユウ君は、わたくしたちの家族同然ですわ。これからも末永く、よろしくお願いいたしますわね』

「ほとんどこれまで通りではあるけど……よろしく、ユウ」

「……うんっ!」


 ユウは頷き、嬉しそうに満面の笑顔を浮かべてみせた。

これにて『レインの勇者育成スパルタ指導?』は終了です、ありがとうございました!

次からはしばらく学園生活です。

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