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魔王様の隠し事  作者: 木に生る猫
番外編

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レインの勇者育成スパルタ指導?⑱

結構未来の出来事って説明はしたんですっけ。

忘れてたかもしれない。

 激しい剣戟の音が響き、魔法の光が散る。

 数十分が経過したが、リウとレインの戦闘は未だに続いていた。


「いい加減……っ、冷静にっ、なってくれない!?」

「冷静? あははっ、何を言っているの? 私は冷静よ、でなきゃ私はもっと弱くなっているわ!」

「ほんっとこうなると話通じないなぁ! 勘弁してよ!」

「あらあらあら、私のことが好きなのでしょう? 愛しているのでしょう! ならば、付き合うのが筋というものよ! あははっ!」

「ッ……リウじゃなかったら本当にキレてるからね!?」


 ユウに好きな人が誰なのか知られてしまい、レインは若干顔を赤くしながら叫んだ。

 怒るどころか殴っているかもしれない、と内心で呟きつつ、レインは唇を噛み締める。


「さぁ、さぁ、さぁ! まだまだ始まったばかりよ! ともにこの宴に浸り、楽しみま――」

「――リル」


 さっと近付いたレインがリウの耳元に囁くと、リウはぴたりと動きを止めた。

 その瞳がそろりとレインを見て、それからユウの方を見る。


「……とりあえず、レインのことは殴るけど……っ、本当にごめんなさい! 私……つい、興奮しすぎてしまって……怪我はしていないかしら? あっ、怖かったわよね、ごめんね……」

「しれっと殴るって言わないで。今のはリウが悪いよ、絶対」

「わ……っ、私が悪くても〜……! だって嫌だったんだもの……凄く……咄嗟に殴るのは我慢したのよっ」


 自分が悪いのは自覚している上で、レインのことは殴ろうとしているらしい。

 すぐに正気に戻ってくれればあんなことする必要無かったのにな、とは思いつつ、騒いでも仕方無いのでレインはユウの傍に行く。


「これまでごめん。必要なことだったとはいえ……騙していたことに違いはない。軽蔑するなら……僕だけを。君を騙してたのは僕だし、レイシェは付き合ってくれただけだからね」

「それは違うわ、私があなたに指示をしたのよ。あなたがその責任を負う必要は無いの」

「……えっと……レインさん、と……リウさん、でいいのか……? とにかく、軽蔑なんてしないから!」


 そんなことするわけない、とユウは慌てながらそう言った。

 何故かユウが軽蔑する前提になっているが、混乱はしても軽蔑なんてするわけがない。


「レイシェさんが、ちゃんと説明してくれたから……まだちょっと混乱はしてるけど、大体は理解でき……ました。俺が元の世界に帰るためには、こうしないといけなかったんですよね」

「あっ……ありがとう、レイシェ……その、混乱させてしまって申し訳ないわ。説明した上で実行できればそれが最善ではあったのだけれど、リスクは取れなかったものだから……少々強引に、条件を満たさせたの。これでもうあなたは、いつでも元の世界に帰れるわ」


 リウはそう言いながら、静かにユウの表情を観察する。

 事前にレインから聞いていた通り、確かにユウの表情は、喜んでいるとは言い難いものだった。

 だがユウはそんな表情をすぐに引っ込めて、笑顔を浮かべてみせる。


「ありがとうございます。見ず知らずの俺のために、ここまでしてくれるなんて……」

「それは、やって当然のことよ。私の国で、あんなことを許してしまったのだから……そのせいで、あなたは故郷を離れることになってしまった」

「……」

「さて――いいかしら、ユウ。ここからは、あなたが自分で考えて選択しないといけないわ。時間は掛けられるけれど、答えはきちんと出さなければならない」


 リウはそう前置きすると、真剣な表情でユウを見た。

 戸惑うようなその瞳は、それでも真剣なリウに応えようと、リウと同じ真剣な色を宿す。

 それを見てから、リウはふっと優しく微笑んで言った。


「元の世界に帰るか、この世界に留まるか。一年以内に、答えを出しなさい」

「留まっていいのか!?」


 想像よりもずっと早くそんな言葉が飛んできたので、リウはぱちぱちと目を瞬かせた。

 そして、苦笑いしながらリウが頷くと、ユウはレインとレイシェの方へと視線を向ける。


「二人が嫌じゃなければ……迷惑は掛けないから、一緒にいたい。……だ、ダメかな……?」

『もちろん、ダメだなんて言いませんわ。ですけれど……』

「ユウ。僕は大罪人であり、この国で罪を償わないといけない。君の教育係として適任だったから、僕も屋敷に住んでたけど……本来、僕はあんなところに住めるような人じゃないんだ。いつもは、洞窟で過ごしてる。僕はユウと過ごすのも嫌じゃないけど、流石にそんなところに君を連れて行くわけにはいかないよ」

「……そ、そんなに、酷いところにいたのか……? 何したんだよ、レインさん……?」


 レインの言い方に、ユウは戸惑うような表情でそう訊ねた。

 たぶんユウが今想像しているほど劣悪な環境ではないが、レインの罪はユウが想像しているよりも大きい。


「それにリウも、大切な異世界から来た客人を僕なんかと一緒に住ませるわけには……」

「別にいいわよ」

「えっ」


 思いもよらぬ言葉に、レインが目を丸くした。

 軽い雰囲気でなんでもないことのようにとんでもないことを言うので、レインは眉を顰め、だが何を言うべきか迷って口を閉ざす。


「元の世界に帰るというのならば、確かにユウは客人ね。でも、ここに留まるというなら……他の人と同じよ。愛すべき私という民というだけ……レイン、あなたは今更どうこうはしないでしょう。ならば、私は彼の意思を尊重する。……私の指示じゃないから、その分仕事は増やして、養ってもらうけれど」

「あっ……そっか、そうだよな……えっと……俺でも働けるところって、ありますか……?」

「ええ、そうね。レイシェが学園で働いているし、一緒の場所で雑用なんかをできるよう話を通しておくわ。生活費は別として、レインに渡すお金に関しては制限させてもらうけれど。……それで、レイン? どうするの?」


 こちらとしては問題無い、ということを伝えた上でリウが訊ねれば、レインはそっとユウを見た。

 緊張した面持ちで、ユウは静かに答えを待っている。


「……嫌になったらいつでも出ていっていいからね」


 レインがそんな答えを出せば、ユウはとびきり嬉しそうに笑って、頷いた。

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