レインの勇者育成スパルタ指導?⑬
ダイニングにレイシェとレインが戻ると、三人は和やかに食事をして、各々でくつろぎ始めた。
とはいえ、仲を深めるためにも、基本は同じ部屋にはいるのだが。
「あの……レインさん、ちょっと聞きたいことがあるんだけど」
「ん〜……? 何?」
「朝……っていうか、昨日の夜? どこ行ってたんだ? 夜はいなくて、朝に帰ってきたんだよな?」
「ああ、うん……ちょっと友達のとこに行ってきただけだよ」
レインは簡潔にユウの質問に答えると、すっと視線を元に――手元の本に戻した。
ユウはそれに目を丸くすると、少し不安そうな顔になる。
「……え、えっと……」
『お兄様、お兄様。これまでと比べて回答が簡潔過ぎて、ユウ君が困惑していますわよ。それでは、ユウ君が何か気に障ることでも言ってしまったかと、不安になってしまいますわ。……でしょう、ユウ君?』
「う、うん……そういうわけじゃないならいいんだけど、ちょっとびっくりした……読書の邪魔しちゃったかな、って」
「ん? ……あー……そういうつもりじゃなかった、ごめん。…………説明するつもりなかったんだけど、しなきゃ誤解を生みそうだね。えっと……ユウが悪いわけじゃないってことを前提として踏まえた上で聞いてほしいんだけど、簡単に言うと僕は友達に、ユウに対して気を遣いすぎって怒られたんだよね。全部僕の問題なんだけど、そのせいで僕が異常に気疲れしちゃった感じで……だから、改善しようとしてるところ。淡白に見えたと思うけど、これまでがおかしかっただけだから、あんまり気にしなくていいから」
レインが少し慌てながらユウにそう説明すると、ユウは少しだけ考え込んだ。
そして、少し不安そうにしながらも、確かめるように質問する。
「それってさ、えっと……いい方向に捉えていい……ん、だよな? えっと……俺と仲良くなろうとしてくれてる、みたいな」
『まぁ……ユウ君は、お兄様の言葉を噛み砕くのが本当にお上手ですわね。ええ、良く本質を捉えられていますわ。わたくし、てっきり通訳が必要なものかと……』
「……ねぇ、僕の話って分かりづらい……?」
『いいえ、ですが長ったらしくはありますわ。幼い子ども相手なのですから、短く本質だけを伝えれば良いのです。もっと仲良くなるために努力をしているのだと。……わたくしの通訳は、極端な例ではありますが……お兄様の説明は、ユウ君に対する気遣いの言葉が多すぎますわね』
レイシェにそんな風に指摘されて、レインは苦笑いした。
確かに、ユウが不安がらないように慎重に説明をしていたな、と。
説明のためであっても、念押しが少し多すぎたかもしれないとレインは反省する。
「……コホン……まぁ、とにかく、そんな感じで……頑張ってる最中で……嫌いになったとかじゃないから、そこは安心して」
「わかった。それならいいんだ、ちょっとびっくりしただけだから……もしまた……びっくりするようなことがあったら、伝えた方が良かったりするか?」
「ユウが嫌じゃなければ……あ、……えっと……うん、そうしてくれると嬉しい」
またユウを気遣う言葉がぽろっと零れて、レインが少し困った顔になりながら頷いた。
気遣いは必要だが、過剰である必要は無い。
これまで散々そんな言葉を繰り返してきたのだから、口に出さなくたってレインの気持ちはユウに伝わるだろう。
「レインさん、ちょっとした……指摘、みたいなのがあるんだけど……レインさんって、俺と話す時、レイシェさんと話す時よりも優しい声になるから……そういう、気遣いとか……口に出さなくてもわかるよ」
「……口調だけで十分だから、口に出したらその時点で過剰になるってこと……? ……というか僕、そんな優しい声してた?」
『わたくし、意識的にしているものと思っていましたわ』
「最初はしてたけど、今は……特に意識してないよ。もういいかなって思ってたはずなんだけど……おかしいな……」
レインはそう言いながら、じっとユウを見つめた。
ほぼ無意識に、レインはユウのことをとてもとても気に掛けているようだ。
それは過剰なくらいで、レインが疲れてしまうくらいのもので、原因を突き止めて解消しなければならない。
どうやら、意識的に気遣いを減らすだけでは足りないらしいので。
「………………ああ、似てるのか」
「えっ?」
ふと納得したような呟きを零したレインに、ユウは首を傾げた。
レインはふっと笑うと、ゆるゆると首を横に振る。
「原因、わかったよ。もう大丈夫」
『……お兄様?』
静かな声で言うレインに、レイシェは眉を顰めながら呼び掛ける。
そうすれば、レインはレイシェへと視線を移し、軽く目を眇めて笑った。
「ユウ、レイシェと少し話してくるね。たぶん……原因、気になってるだろうけど……ユウに話すかどうかは、もう少し考えてからにさせて。……おいで、レイシェ。向こうで話そう」
レインに少し強引に手を引かれ、レイシェはこくこくと頷いてそのまま手を引かれながら付いていった。




