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魔王様の隠し事  作者: 木に生る猫
番外編

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レインの勇者育成スパルタ指導?⑪

 翌朝。

 ディライトに怒られ、自棄酒をしていたレインがベッドの上で目覚めた。


「……んん……ん、……ここ……ディライトの部屋……? ……ああ、自棄酒して……そのまま、ソファーで……あれ?」


 ぼや、とレインは周囲を見回して、首を傾げた。

 ソファーで寝落ちたはずなのに、何故かベッドで眠っていたことに気付いたからだ。

 もしかして、とレインは急いで身体を起こし、ソファーを覗き込む。

 レインの代わりに、ディライトがソファーの上で眠っていた。


「……ああ……っ、ディライトってば、また変な気回して……! 疲れたからってあのまま自棄酒するんじゃなかった……せめて帰ってれば……」

「……ぅ〜ん……」

「あっ……」


 ディライトが唸り声を上げるのを聞いて、レインが慌てて口を閉ざした。

 焦りやら申し訳なさやらで声が大きくなっていたが、部屋の主をソファーで寝させた上にうるさくして起こすなんて、迷惑どころの話ではない、と。

 とりあえず、また眠りが深くなったら起こさないようにベッドに運ぼう、とレインがそわそわしながらディライトを観察していると、ぱちりとその目が開いた。

 ぼんやりしながらその目がレインを捉え、のろのろとディライトが身体を起こす。


「ふあ……っ、あ〜……ねむ〜……。……おはよ〜、レインくん……」

「あ、ご、ごめん、起こしちゃった……?」

「……ん〜? あ〜……今日、ボクが朝ご飯の担当なんだよね〜。当番の日は時間で起きてるだけだから、気にしないで〜……それより、レインくんはよく寝れた?」

「うん……ベッド、貸してくれてありがとう。なんか、肩の荷が軽くなった感じがするよ。……それはそうと、わざわざ運んでくれなくても……僕はソファーで十分だよ」

「休ませるのが目的なのに、ソファーで寝かせるわけないでしょ〜。ボクはレインくんよりずっと頑丈だし、寝る必要もあんまり無いしね〜」


 ディライトはそう言うと、申し訳なさそうな顔をしているレインの肩をぽんと叩いた。

 そして、軽く伸びをしながら首を傾げて訊ねる。


「今なら、朝ご飯も作る前だし……食べて行ってもいいけど、どうする〜?」

「ううん、遠慮しとく。家族の団欒に割り込むわけにはいかないし……ユウは気にしそうだから」

「……レインくん、昨日ボクが散々言ったこと、ちゃんと覚えてる〜……?」

「お、覚えてるから。僕もあの子に関して……過剰に遠慮はしないし、自分のこともある程度優先する。……ちゃんと自分に目を向けろ、でしょ?」


 わかっているならいい、とディライトは肩を竦めると、溜息を吐いてレインの背中に触れた。

 目を丸くするレインに向かって、ディライトは少し心配そうな声で言う。


「わかってるなら、このままあの屋敷に送っちゃうけど……いい? レインくんが今一番優先するべきことは、自分自身を正常に保つこと、だからね! 決して、勇者の面倒を見るとかじゃないから!」

「うん。ある意味、僕はユウよりも重要な人物……だよね。……悪い意味だけど……迷惑掛けたくないなら、自分自身にちゃんと目を向ける。ちゃんとわかってる。……お礼はまた今度するね。付き合ってくれてありがとう、ディライト」


 レインがそう言うと、ディライトは薄く笑ってレインを送り出した。



 ディライトによって転移させられた場所は、屋敷の玄関先だった。

 まだ朝早いので、レインは起こさないよう音を立てずに玄関を開けると、屋敷の中へと入って息を吐き出す。


「――えっ、あれっ、レインさん……!?」

「ん? ……ユウ? どうしたの、こんな朝早くに……寝られなかった?」

「あ、ああ……えっと、そんな感じ。それなりには寝れてるから、大丈夫」

「……そう? それならいいけど。もし寝不足な日があれば、言ってくれれば特訓の内容調整するから。あんまりにも寝れないなら、早めに相談してね」


 レインは表情を変えずにそう言うと、ぽんとユウの頭を撫でてそのまま横を通り過ぎた。

 普段があれだったので、少し冷たく見えたかもしれないと少し不安に思いつつ、レインは廊下を進む。

 とはいえ、無理をして、精神状態が不安定になればリウたちに迷惑が掛かってしまう。

 ユウには申し訳ないが、レインの優先順位ははっきりしていた。


 レインは台所へと向かうと、今この家にある食材をチェックする。

 洞窟にいた頃は、時々マリーツィアが作った料理も届いていたが、そういう日以外はレイシェが作ってくれていた。

 料理のできないレインはそれを手伝うことができないので、食材調達はレインが担当しているのである。

 レインはお金を稼げないので、ある程度の食材は城から配給されているが、それを屋敷まで運び出す時間は無かったのか、屋敷にはあまり貯蓄が無かった。

 それに、配給されているとはいえ、足りなくなることはそれなりにある。

 そういう時は、レインが買い物に出掛けるのである。


 とはいえ、今回はまだ洞窟に貯蓄があったはずだな、とレインは出掛ける準備を整え、洞窟へと向かった。

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